11話 謎
ナトは絶を引きつけと一対一の勝負に持ち込むために曲がりくねった今にも迷いそうな洞窟内を駆け回っていた。
しかし実際ナトはもう道順など気にも止めずに何処か闘える様な場所を求め、ただひたすら走っていた。
ナトは走っている間ずっと背後に一定の距離を保ち引き離しつつ、ついてこさせている絶の殺気を感じていた。
その殺気に少し恐怖を覚えるもナトは足を止めることは無かった…。
その頃、霊夢と迅雷は少し探索をしていた。特に何も見つからないと思いながらも、レミリアを攫った張本人の謎の召喚士「カラン」の居場所が細部までわかるような物が出てくるかもしれないという期待に打ち勝てずしばらく探索していると迅雷がナト達が入って行った洞窟の入口前にて何かを見つけた。
「なんだ…これ?上から垂れてきたのか?」
霊夢が迅雷の元に駆け寄り迅雷の手についた液と地面に落ち溜まった液を調べ始めた。
「何か…毒々しいわね。血にしては濃い色してるわ。 」
「そうだよな。…ん?なんだこの臭いは。」
迅雷が臭いに顔を歪めた時だった。
その液体から煙、いや瘴気といった方が正しいだろう物が発されていた。
そしてその臭いも同時に発されている事に霊夢は気付き、迅雷の手を引きその場から離れ迅雷に口を抑える様に合図した。
「あの液体から瘴気が出てるわ。それも凄い濃度の瘴気が。」
「よく気付いたな、お蔭で吸わずに済んだぜ。ありがとな霊夢。」
「…今かなり厳しい状況かも。」
霊夢が深刻そうな顔で呟いたが迅雷にはその意味が分からなかった。
「どういう事だ?」
「周りを見て。あの液体…そこらじゅうに付いている。さっきまではこんな液体は無かった。まず、あったとしても私がもっと早めに気付いてるはずよ。」
迅雷は何か徒ならぬ胸騒ぎを感じてナト達が入って行った洞窟に避難しようと考えた。
「霊夢。とりあえずあの洞窟に入ろう。」
「そうね。ここはもう危険みたいだし。」
迅雷と霊夢が入口に入るところに差し掛かった時だった。
「うおっ!?」
迅雷が突如、何かに足を掴まれ瘴気の漂う神殿内に引き戻された。
「迅雷!大丈夫? 」
霊夢は迅雷の元に駆け寄った。
次の瞬間、全ての出口が何者かの策か、はたまた神殿内の岩の軋みか。どちらにせよ岩で塞がれ逃げ場が無くなってしまった。
「まずいな…岩を壊すには時間がかかる。まずそんな事してる間に瘴気を吸って二人共お陀仏だ。どうする?霊夢。」
「どうするったって…」
そんな2人に追い討ちをかけるかのように
黒い瘴気を放つ液体5つがすべてひとりでに動き出し段々とその液体は物体の様に硬化していき隆々として引き締まった筋肉の形を作り上げていった。
最終的には霊夢より二つ周りくらい大きい
身長をしているが少し前かがみな体制をした生物が出来ていた。
顔には裂けた口に鋭い二枚歯持っていて目は無かった。
なんとこの体を作るために要した時間はわずか5秒という驚異的な速さだった。
霊夢はその姿に恐怖を覚えて体が動かず、迅雷はあまり動じることも無く霊夢に声を呼びかけていた。
「おい!霊夢、しっかりしろ!」
「あ…あ…。ば、ばけ…もの。」
迅雷は舌打ちして霊夢達に迫る5体の黒い化物に向きなおった。
迅雷の手には電気がまとっていてかなり高温度の電気だった。
「瘴気がこの神殿内に充満するまで残り15分くらいか。岩を壊すには5分、3分で充分か」
迅雷はそう呟き目の前の黒い化物の首を掴み電気を流しながら地面に打ち付けた。
「なるほどな。お前らは電気が苦手か。」
なんと黒い化物の掴まれていた部分が電気によって液体へと戻されていた。
しかもその液体は正に無害と言っていいほどに瘴気や毒が浄化されていた。
迅雷は好戦的な笑みを見せて闘いに身を投じたのだった。
一方、何処かの新しく発見した大きな神殿内にてここなら大丈夫かと判断したナトは振り返りざまに背後に向かって勢い良く殴打し、その攻撃は絶の腹部にクリーンヒットした。
絶の腹部から何かが逆流して口から逆流した黄色い胃液が吐かれた。
絶は何も言わずにうずくまった。
ナトは見下すかの様に絶を見下ろした。
「こ…のクソ野郎が。」
瞬時に悪態を付ける程に回復した絶は後方に下がって行き、剣を構えた。
「手加減はしないが、それでもやるか?」
ナトの問いかけに対してもはや気配を消すのは無意味だとかんがえたのだろう絶は雄叫びを上げながらナトに斬りかかって行った。
まず絶は右手の剣でナトの腹部目掛け突く。
「…お前の速さ、そんな速さだったか?もう少し零狐と戦ってる時、斬撃の速さが凄かったとおもうんだが?」
絶は無視して左手でナトの肩を斬ろうとするも、それも受け流されてしまった。
しかし絶の狙いは受け流されたあと自由になった右手の剣で振り向きざまにナトの目を斬った。それに追い討ちとして両手でナトの胴体を「×」の様に斬り、怯んだ隙に蹴った。
「ぐっ…!くそっ、この野郎目を!」
ナトは胴体に肉体保護の召喚術をかけていたようで斬撃のダメージは入ってなかった。
絶はその反応を見て少し油断してしまった。
ナトはその油断を決して見逃さなかった。
次の瞬間、ナトの蹴りが絶の頭部に直撃して絶は軽い脳震盪を引き起こした。
ナトは続けて腹部にかなりの勢いがかかった重い殴打が入り、絶は吐血した。
「ゴポッ…グッ…この。」
ナトは容赦なく首を掴み地面にめり込むほどに打ち付けた。何度も、何度も。
絶は激しく咳き込むと共に血を口から大量に流し苦しんでいた。
「ガハッ!ゲホッゲホッ…。」
もう抵抗の意志が無いようにも思えた。
その様子を見て哀れにも思ったナトは右手のを絶の頭の上に乗せ左手で顎に力を入れた。
少しの間が空き「ゴキッ」という鈍い音が響き、絶は崩れ落ちた。
「…こういう死ぬ所ってのは夢に出てきそうだな。零狐達の所に戻らなきゃな。」
「まぁ待て。零狐が来るまで俺と少し遊ばないか?命を使った遊びを。」
ナトの言葉に対して何者かが、背後から話しかけてきた。
「誰だ!」
ナトが振り向きみた、その人物は驚くべき人物だった。
「お前は…カラン。なるほどな。ここは零狐が目指す最終地点だったってわけだ。」
「さぁ、零狐が来るまで楽しもうぜ?」
カランは首を鳴らし嫌な笑みを見せた。
ナトはカランを睨みつけ、カランに対して攻撃を開始した。
続く




