1日目(2)
《00:01:13》
探索ギルドを出てからまず向かうのはファンタジー世界でお馴染みの武器屋である。
勿論ここで武器を買うのだが、店員から勧められる通り片手剣など買ってはいけない。
今回のチャートでは大剣を用いるので、武器は大剣一択。
序盤は重くてあまり振り回すことは出来ないが、問題は無い。
武器屋に入ると如何にも武器屋を営んでいるような厳ついドワーフがいるが、
間違ってはいけない。この人は店員であり、店長はその向こうで鉄を打っている優しそうなおじさんの方だ。
とりあえず店内を見渡し、今回使えそうな大剣を物色する。
所持金は8銀貨、日本円にすると大体8万円ってところだ。
ちなみにこの世界には金貨、銀貨、銅貨の三種類しか無く、金貨が銀貨100枚分、銀貨が銅貨10枚分だ。
そんなこと考えるとお目当ての物を見つけた。
――『初心者用大剣(6銀貨)』
値段も手頃だし、大剣らしく刃が厚い。これなら使えそうだ。
早速店員を呼び、これを買う旨を伝える。
すると、
「本当にそれでいいのか?見たところ兄ちゃん初心者だろ?悪い事言わないからこの片手剣にしておけ」
このように初心者には必ず片手剣を勧めるが、これには理由がある。
それはまだ初心者は魔物達の動きに慣れていないからだ。
魔物の行動には一定のパターンというものがある。
しかし、中には予想もできない動きをするものもおり、
片手剣ならその対応もしやすく地下街での生存率を上げるのだ。
「いえ、魔物とは何度か戦ったことあるのでこの大剣でも大丈夫ですよ。
それに小遣い稼ぎなのでそこまで深くまで潜る必要は無いですし」
嘘である。地下街クリアどころかRTAまで行うのだ。
「そうなのか、なら大丈夫か。じゃ頑張れよー」
6銀貨を渡し、大剣を受け取る。
ずっしりと重さが腕から伝わってくるが、これだけ重かったら大丈夫だろう。
買った大剣を背中に括り付け、目的の場所レガリア地下街に向かう。
所持金:2銀貨
《00:10:56》
* *
《00:27:07》
レガリア地下街は探索ギルドより離れた周りを木々に覆われた場所にある。
地下街なので、地表には入口部分の門しか露出していないが、
遠目からでもわかる荘厳な時代を感じさせるような造りである。
しかし、この門というのは魔物達が占拠した後に作られた物らしく、元々は門などなくただ地下へと続く階段があっただけという話だ。
それはさておき、門の付近まで近づくと重そうな鎧を着込んだ門番の人達に声をかけられる。
「これから先に行くにはギルドカードの確認をさせてもらう」
彼らの仕事はこのようにギルドからの登録を受けてない者たちが地下街に入らないように門番の役目を果たすのと、
もう一つは有事の際に命がけで門から出てくる魔物達の足止めというものがある。
早速、先ほど作ったばかりのギルドカードを見せる。
何度か目線を交互にギルドカードと僕を見た後、もう一人の門番に目配せをする。
どうやら入ってもいいということみたいだ。
「受付でも説明を受けてる筈だが、この地下街では地上の法律や倫理観は一切通用しない。地下街で人間を見たら、それはお前と同じく冒険者であるが仲間ではない、
それを肝に命じていて欲しい。それでは
――ようこそ、レガリア地下街へ」
開け放たれる門、
それはまるで巨大な獣が大きく口を開けて餌が来るのを待っているようだった。
「(何度経験してもこの感覚は慣れないな…… )」
門の先に広がる闇に言い知れぬ恐怖を覚える。
しかし、この光景は今まで『何千回』も見た光景だ、恐れる事はない。
――さあ、行こう