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幸運な女と不幸な男

「カナリア、森を空から見下ろすことはできるかい?」


「きゅい」


カナリアはすぐに飛んで行ったが、少ししたら戻ってきた。


「どうだった?」


「きゅいー・・・」


無理だったみたいだ。まあ、木がところせましと生えているのだから当然と言えば当然か。


「気にしないで、それじゃあ行こうか」


肩にのせて薄暗い森の中に足を踏み入れた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ふう、これで100匹位かな」


森に入って2時間、ゴブリンの群れをひとつ見つけて全滅させた。群れのあった場所でまっていると、狩りに行っていたと思われる団体が帰ってきたのでそれも全滅させた。その結果、100匹の討伐になった。中にはゴブリンリーダーが何匹かいたけど余裕を持って殲滅させてもらった。


「カナリアもレベル上げしないとな」


「きゅー」


カナリアは肯定したような声で鳴き、俺の頬に頬擦りしてきた。癒されるなぁ・・・。


「そろそろ暗くなってきたから帰ろうか」


「きゅー」


赤みがかってきた空をみながら薄暗い森を歩いていた。


「キャーー」


「!? カナリア、行くよ!」


「きゅー!」


声のした方に向かって全速力で走っていくと、地面におびただしい量の血を流した人間の男が1人と、3メートルぐらいありそうな、顔を二つもった黒い虎のような魔物に食われそうになっていた狐獣人の女がいた。


「ヤベェ! 『解除』!」


すぐに封印を解き、虎の顔面を蹴る。虎の頭は尋常じゃないほどの衝撃によって爆散してしまった。

これに火の爆発魔法を纏わせれば更に強力な蹴りになるんじゃないだろうか。名前を着けるなら『爆裂脚』とかかな。


「大丈夫か?」


俺はすぐにまた力を封印して、女性に話しかける。

あっ、股の間が濡れてる・・・。

俺の視線に気付いたのか股に手を当てて隠し、顔を赤らめながら、


「あ、ありがとう・・・。もしかして高ランクの冒険者のかたですか?」


「いや、僕はGランクだよ」


口をあんぐりと開けて、俺の顔を見てくる。

まあ、あれだけの力を持ったGランクなんて信じられないよな


「立てますか?ここにいると血の臭いにつられて他の魔物が来る可能性もあります。なるべく急いでここを離れたい」


「わ、わかったわ。でも少し待ってくれない?」


男を埋葬でもするのかな?そのすきに魔物を回収しておくか。

頭が無いから価格は下がるだろうな。

俺が魔物を袋に入れていると、なんか視線を感じるな。

視線を辿ってみると女性がこちらを見ていた。もしかして魔法の袋って物凄く珍しかったりするのかな?


「そろそろいいですか?」


「え、ええ。その前に1つ聞きたいんだけど」


「なんですか?」


「その鳥と袋は何?」


「僕は少し前から記憶が無いんですが、僕が意識を取り戻した時からこのカナリアが近くにいたんです。この袋もその時から腰に着いていたんです」


「そうなんだ」


「ええ、それじゃあ行きましょうか」


俺は女性の前を歩いて森の出口へと向かっていった。


「あなたの名前は何て言うの?」


いきなりなんだろう?まあ、恩人の名前が知りたいのかな?


「マサムネです。あなたは?」


「私はネリスよ。よろしくね」


「よろしく」


俺はあまり話したくなかったんだがネリスさんのほうが執拗に話しかけてきた。


「すいませんが静かにしてもらえませんか?周囲の音が聞こえないので」


「あ、ああ。ごめんなさい・・・」


少しきつく言い過ぎたかな?まあ、周囲に気を警戒していないみたいだったからいい薬になったんじゃないかな。

そんなとき・・・


ガザッ


近くの茂みが揺れた。

ネリスさんがビクッ、としていたが俺は特に驚きもしなかった。だって足音聞こえてたし。

出てきたのは、いかにも盗賊ですと言うような格好をした男だった。


「待て、生きて帰りたければ金を置いていけ」


テンプレの台詞だな。低い声で唸るように言った男の台詞を俺は呆れながらに、


「それはこっちの台詞だよ、さっさといなくなれ」


「馬鹿にしやがって・・・、後悔させてやるっ!」


ネリスさんが慌てているけど気にしない、それよりも。


「カナリア、殺っちゃっていいよ」


「きゅー」


カナリアは俺の肩から飛び降りたと同時に男の腹に突進し、男の腹に嘴を突き刺した。


「ぐぁぁあああっ!!」


「カナリア、止め」


カナリアは俺の合図?で口から炎を吹いて消し炭にした。これは朱雀が持っていた聖なる炎と同じものだ。まあ、成長すれば上位のスキルに上がるみたいだけど、


「カナリア、お疲れ様」


「きゅい~」


嬉しそうに俺の頬に頬擦りしてくる。血のついた嘴も一緒に当たるから顔に血が付いたけどな。


「・・・・・・」


ネリスさんは言葉を失っているみたいだ。無理もないか、俺もカナリアの強さを知ったのはゴブリンの群れを全滅させてた時に知ったんだからな。


「行くよ」


呆然としているネリスさんに声をかけ、森の出口に向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

1時間後、暗くなっていたために足元に気をとられて遅くなってしまった。空はもう真っ暗だ。

それでも森の出口にはたどり着いて、今は王都へと続く街道を歩いていた。

王都へは20分ほど歩くと着いた。


「遅かったな、その女性は?」


門番は俺が街を出るときと同じ人だった。


「魔物に襲われていたので助けました」


「そうか。そこの女性、身分証を出してくれ」


「はい。彼は必要ないので?」


「こいつがギルドカード持ってるの知ってるしな」


「そう」


「よし、通っていいぞ」


「ありがとう」


俺たちはそのままギルドへと向かった。

向かうまでにいろんな所からの視線が痛かった。どうせカナリアを見ているんだろう。


ギルドに入ると、外まで聞こえていた喧騒が一気に静まり返った。カナリアを見てビックリして声も出ないのだろう。

そんな中、筋骨隆々の1人の酔っぱらいが絡んできた。


「おいおい、にーちゃん。そんな綺麗な鳥を連れてどうしたってんだ?」


「別に」


「おいおい、つれねーな。今なら俺がその鳥を買ってやるぜ?このBランク冒険者のクルドス様がな!」


「黙れ」


何て言ったこいつ?カナリアを売れって言ったのか?


「ああ?今なんて言った?」


「黙れって言ってるんだよ肉だるま」


外野があいつ終わったなとか言ってるけどどうでもいい。ぶん殴ってやる。


「ざけんなオラァアア!!」


封印解除。


ヒュッ!


ドゴンッ!


ズガッシャァァーン!!


殴ってきた拳を素早く避けてクルドスの腹を全力ではないが力を籠めて殴った。

クルドスは血を吐いて勢いよく吹っ飛び、ギルドの壁をぶち破って外へと吹っ飛んでいった。それを見ていた周りの冒険者は俺の顔を見て、その顔を青くしている。ネリスさんも青くしていた。

外から『こいつ死んでるぞ!』と言う叫び声を聞いて更に顔を青くする冒険者達。カナリアはその反応を見て「きゅいっ!きゅいっ!」と笑っている。

あんなやつは死んで当然だ、だってカナリアを売れなどとほざいたのだから。


「行くよ、ネリスさん」


ネリスさんの腕を引いて受付まで行く。俺が立った受付は昼間に俺の担当だった猫獣人だった。


「ゴブリンを討伐してきた。確認を頼む」


「は、はいっ」


彼女は恐ろしいものを見るような顔をしていたが、なんとか反応してギルドカードを確認していた。


「そんなに怯えることはないですよ、カナリアを侮辱したり、危害を加えたり、物みたいに扱ったりしない限り僕は無害だと思いますよ」


笑顔を作って話しかけてみた。それを聞いた受付嬢や他の冒険者はほっとしたような顔をしていた。一部まだ疑っているような奴もいるみたいだけど。


「確認しました。ゴブリン96体とゴブリンメイジ3体、ゴブリンリーダー1体ですね。報酬はゴブリン10体の討伐でしたので銅貨35枚と銀貨1枚です。その他は、森に住むゴブリンの群れの討伐のクエストがあったのでそちらの報酬で銀貨3枚です」


さっきの言葉を聞いて落ち着いたのか昼間と同じような対応をしてくれた。いい娘だなぁ。


「銀貨1枚は借金の返済に当ててください、それじゃあここで。じゃあね、ネリスさん。縁があればまたお会いしましょう」


そう言って俺はギルドの外に出た。外に出る直前でカナリアが「きゅい」と鳴いた。別れの挨拶だろう。


外に出ると人だかりが出来ていた。死んだ男に群がっているのだろう。この世界にも野次馬はいるんだな。

それよりも宿を探さないとな。



作者「そんなに簡単に封印を解いてもいいの?」

キ「カナリアが馬鹿にされたことで冷静さが失われていただけだ。これからはなるべく解かないよ」

カ「きゅい!(スリスリ)」

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