スマッシュ! 〜私の神社へいらっしゃい!!スピンアウト〜
本当に意味不明な小説です。
元は私神のスピンアウト作品を書きたかったのですが、何がどうなったのか、こんな作品が出来上がりました。
あんまり期待はしないでください。
俺は彼女の事が好きなんだ、と気付いたのが今から1週間程前の話。
彼女の事を考えると胸の中がドキドキして、何かくすぐったくて。
いつもいつも、彼女の事ばかり考えていて。
彼女の笑う顔が、とても輝いて見えて。
人を好きになるって、こういう事なんだなって、まだ人生経験皆無の14歳の俺でも分かった気がしたんだ。
「……何か凄く気持ち悪い冒頭文だね、花谷」
「なっ……」
俺の名前は花谷大輝、14歳。
〇〇県は佐薙中学校に通う中学3年生だ。
部活は男子卓球部に所属している。
「あのさ花谷、小説の冒頭文ってのはインパクトが大事なんだよ。冒頭から面白さがないと、読者は飽きて戻るのボタンクリックしちゃうよ?」
俺は今、学校からの下校中。
空には夕陽が橙色に輝いていて、とても眩しかった。
「……聞いてるのか花谷?」
「え? あ、ああ……」
俺の隣で一緒に下校しているコイツは市沢和也。
学校のクラスメートで、家が近所だからたまに時間が合うと一緒に帰っているのだ。
「ってか花谷、キミ誰かに恋でもしてるのか? この小説の冒頭文からして」
「市沢、設定を壊すな」
……事実、俺は今、人生初の片想いをしていた。
相手は同じ学校の女子卓球部。
その子とは中学校で同じになって、そんなに話した事はないんだけど、何か初めて見た時から気になっちゃって……
「いいか花谷、恋とムフフは紙一重なんだ!」
市沢が何かを言い出した。
ちなみに市沢は根っからの変態として学校内では結構有名なヤツ。
あだ名はエロ魔神。
「男たるもの、いつでもホテルへ行けるよう、懐に余裕をだな……」
「…………」
市沢はやっぱりおかしなヤツだ。
翌日放課後、体育館
今日は男子卓球部の活動日だ。
「よし、まずは準備体操と反復横跳び百回。気合い入れろぉ!」
卓球部の部長(あだ名はネクタイピン)の指示で、卓球部員達はそれぞれ準備体操を始める。
ワックスの塗られたテッカテカのフローリング。
その上で準備体操をすると、シューズとの摩擦でキュッと館内に響く音が鳴る。
この音を聞くと、今から部活なんだって実感が湧く。
そして……
「柔軟しっかりね!」
『はいっ!』
隣で同じく準備体操を始める、女子卓球部。
俺は意識を準備体操、神経を女子卓球部の方へと向ける。
……俺は、どうしょうもない変態なのかもしれん。
「変態紳士は僕だからね!」
下校道
結局今日も女子卓球部に夢中で、集中して部活に勤しむ事が出来なかった。
もうすぐ大会があるのに、これじゃマズいよなぁ。
「……はぁ」
「どうした花谷? ため息なんかついて」
ちなみに今日も市沢と下校中。
「……いやさ、ちょっと考え事を」
「そういや花谷、お前誰が好きなの?」
「ぶほっ!」
ストレートな……
「確か前に片想い中とか言ってたでしょ? で、誰が好きなの?」
「そ、それはお前には関係ないっ!」
「誰だ? あれか、真田か? あ、アイツは女子卓球部じゃないか……」
「だから市沢には関係ないだろっ!」
全く……
俺はチキンだ。
チキン野郎だ。
「……花谷」
「……なんだよ?」
「真田はお前の事、多分眼中にないよ?」
「別に片想いの相手は真田さんじゃねぇよ!」
「アイツ、中学生には興味ないからさ」
「だから違うって!」
「アイツに好かれたかったら、とりあえず小学校へ戻る事だな」
「何それっ!?」
リアルで真田さんじゃねぇよ!?
……はぁ。
俺はやっぱりチキンだ。
市沢にストレートに好きな相手を言えれば、きっとコイツの性格上協力してくれるはず。
相手とあんまり話した事のない俺にとって、協力者はあった方がいい。
なんかセコいけど、そうでもしないと、話のきっかけすら……
「花谷さ」
「な、何?」
突然、市沢が真顔になった。
「……もしさ、その片想いってのを成就させたいのならば、神社で神頼みって手もあるぞ」
「……神頼み?」
「……ああ。今度暇なら神社にでも行ってみるといいよ」
神頼みって……
そんな……なんとまぁ古典的な……
「オススメは黒烏神社だな。神頼みなら黒烏神社。あ、間違っても白犬神社には行くなよ? あそこ行くと呪われるぞ?」
「……なんで?」
「いいからいいから!」
市沢からのお告げ。
それは神頼み。
古典的オブ古典的。
気の迷いだろうか。
俺は市沢を信じ、神社へと赴いていた。
……うん。
白犬神社に。
「……ここが」
俺の自宅のすぐ側にある山の麓の神社。
市沢は呪われるとか言ってたけど、神社に呪いも何もないだろう。
どうせこの神社のどこかにでも何か嫌らしい本とか隠しているとか。
「……久しぶりだな、白犬神社」
相変わらずの小さな神社。
俺は神社の境内を進み、賽銭箱の前へ。
そして財布から小銭を取りだし、投げ入れる。
手を合わせ、そっと祈る。
「どうか、岡田さんと仲良くなれますように……」
卓球部だけど、男子と女子の間には壁がある。
中学生だからこその、見えない壁。
俺は……
『だったら骨っこクッキー持って来なさい!』
……え?
何?
空耳?
『うるさいなぺちゃぱい、僕にだって財布の事情ってモノがあるんだよ!』
……明らかに神社の裏から聞こえる声。
何これ?
『ぺちゃぱい言うなっ! この変態っ!』
『だって事実だろ、このすっとんとん!』
『がるるるるっ!』
『お、何だ、威嚇か? ぺちゃぱいわんこの威嚇なんか怖くも……痛いっ! 噛むな、ちょ、噛むな痛いっ!』
……片方は女の子の声、もう片方は聞き覚えのあるような、男の声。
「……もしかして、お取り込み中だったかな?」
……うん。
俺はいそいそと神社を後にした。
けど、俺は思った。
あの神社の裏で何かやってた人達。
俺も、あのくらい堂々と何か言葉を話せれば……きっと……。
ってかぺちゃぱいわんこって何?
後日。
「俺、岡田さんの事が好きなんぢゃ(噛んだ)!!」
花谷大輝は告白していた。
体育館の裏、大好きなあの子に。
「……やっぱり、あいつに足りなかったもの、それは堂々とした態度か」
その告白を影ながらに見ていたのは、市沢和也。
「……また1つ、願いが叶ったな」
獣の呪い
それを取り巻く人間と神様のお話。
それは、今なお続く神社のお話。