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副業、兼業、大剣豪!  作者: Tametomo
第一章 剣客の副業編
1/10

剣客師弟の平和。

この小説は習作であり、拙い所、文章が山とあります。申し訳ありません。

そのため内容とは関係のない所で修正が入ることがあるかと思いますがご容赦ください。

またこの小説の登場人物は設定等、一部実在する人物をモデルとして作られています。

跡形もない気もしますが一言お知らせさせて頂きます。

玄仁元年、ユリウス暦1467年に発生した戦乱は瞬く間に全国に拡大した。

時の将軍家に乱を止める力は残されておらず、全国で実力者たちが独立を始めた。

それより五十年余りが過ぎた青正十七年、ユリウス暦1520年。

弱き者は淘汰され、広大な勢力範囲を持つ者が現れはじめた頃。


関東の雄、相原家の膝元である相模国小田原の町から物話は始まる。





賑やかな小田原の町の大通りから、少し外れると驚くほど静かな場所だ。

そんな場所に立派な門の屋敷がある。

天下随一の腕前を持った剣豪の開く道場とこの町でも有名な「藤堂流剣術道場」だ。

その門の前では二十歳ほどの女性が竹箒で掃き清めている。

その女性を誰かが見たらびっくりするだろう。

なぜならその女性はまるで物語や絵巻の登場人物であるかのように美しいのだから。

吉野の雪のように透き通った白い肌、優しげな瞳、桃色で瑞々しい唇、女性にしては高めの背、絹のように滑らかな黒い髪。どのような言葉を尽くしてもその姿を語りつくすことは出来ないと思わせる。

彼女の名前は藤堂恭子、この道場の主である。

そう、彼女こそが京都でその実力を天下に認められた名の大剣豪なのだ。


「ふわぁ…。」

恭子は小さく欠伸をして伸びをした。とても優秀な剣豪には見えない。

ただ竹箒の柄に付いた小さな凹みや傷―何かを叩いた痕―だけはその実力を密かに示していた。



恭子が掃除を終えて、道場の中に戻ると弟子の豊五郎(ぶんごろう)がお饅頭とお茶を用意して縁側で待っていた。

片手には饅頭を持ち、もう片方の手をひらひらと振っている。

茶色の短髪に大きめの目、良く笑う姿、背は決して低い訳ではないのだけどどこか少年のように見える。今年で二十四。二十四には中々見えない。

ちなみにこの道場は家事やら掃除やらは当番制となっている。

「日常の家事も鍛錬の一環。機会は平等に」という教えのもとで決められている。

今はこの道場に住んでいるのは恭子と豊五郎だけ。毎日何かしらの仕事を行っている。

決して師匠を働かせて自分が休んでいる訳ではない。

豊五郎の名誉のために念のため。


「お疲れ様です。」


そう言って豊五郎は饅頭の盛られている皿を差し出す。


「うん。ありがと。」


二人して満月饅頭をいただく。


歩いて直ぐの菓子のお店満月堂の看板商品は餡子の甘みが上品な一品である。

二人のお気に入りでお土産でもらったらはしゃぐほど嬉しい。

前回は豊五郎が笑顔のお手本のような顔で感謝していた。

もし藤堂流に賄賂を贈るならばは間違いなくこれを持っていくべきだろう。


暫くもきゅもきゅと饅頭を食べる音だけが聞こえる。


不意に皐月の風がざあっと流れた。


藤堂流道場は良く言えばのどか、悪く言えばヒマな道場だ。

門弟の指導はいつも正午前に終わるし、豊五郎は藤堂流印可持ちだから教える事は何もない。

つまりは特別やる事がない。


(これで良いのかな?)


恭子は自問してみた。道場主としてやる事がないのは悲しむべき事じゃないのか?

仕事もやりようによってはいくらでもあるじゃないか。


(良いじゃないか!)


所要時間一瞬。即答。まあ最近特に良く働いたからゆっくり休もう。

仕事と平和な時間を天秤にかけて、いやかける間もなく恭子は答えを出した。

この間も本業ではなく副業のほうの仕事だったのが残念だけどいまさら言っても仕方ない。

それよりも部屋には歴史書が二十頁読んだところで放置されているから一月ぶりに読めるじゃないか。

恭子の心が読みかけの本に飛んで行きそうになった時だった。


僅かに捉えたのは砂利を踏む音、二人と面識のない者が通りをこちらに向かってくる音だ。


時々かちゃりと金属の鳴る音も聞こえる。これは刀を差している者が歩いた時に鳴る音。


このあたりで刀を持つ者がやってきそうな場所といえば。


「うちにお客さんですね。」


豊五郎も来客の気配を察して門を開けておく。


「失礼致します。藤堂殿は御在宅でしょうか。」


少しして現れたのは背のひょろ長い三十歳程の男だった。

丁寧な物腰と穏やかな顔つきをしているが纏う気が常人のものとは違って凛としている。


只者じゃない。


「私が道場主の藤堂です。」


そう名乗るとびっくりしたような顔をしてそれから慌てて繕った。

藤堂流の藤堂は知られていても、藤堂が、恭子であることはあまり知られていない。

剣客という仕事柄、男と思っていたみたいだ。


「私は円月流の山内新九郎と申します。藤堂様のご高名は聞き及んでおります。」


「ご丁寧な挨拶ありがとうございます。…どうぞこちらへ。」


屋敷の中に案内する。豊五郎がお茶と残りの満月饅頭を用意している。


「それでご用件というのは。」


おおよそ見当が付いているが恭子は聞いてみる。


「不躾なお願いではございますが。」


新九郎は少し言葉を切った。


「私と手合わせして頂けませんか。」


やっぱり想像通りの用件だった。ある程度名の通った剣客には付き物の他流試合の申し込みだ。


名の通った剣客に挑み、勝利したなら流派の名が上がる。これほど美味い話はない。


逆に挑まれる方はさほどの利点はない。下手を打てば流派の名は地に落ちるし、元々名声があるならそんな有名でない流派との試合に勝っても旨味なんてない。


言ったは良いものの不安そうな目でこちらを見ているのが分かる。まるで心の声が隠しきれてない。


「わかりました。但し真剣ではなく竹刀でよろしければの話ですけれど。」


それを聞いた途端、山内殿は頭を下げた。


「ありがとうございます。」


少し驚いた様子だった。


「それでは日取りはいつに致しますか。」


「明後日はご都合宜しいか?」


「ええ。」


それから少し二人は話をして、山内殿を見送った。


恭子はお互い怪我をしない方法なら他流試合を受けている。

秘伝を見せないなんてケチな事はしない。

まあ見たところでそうそう真似できるものでもない。


「師匠。ようやく本業ですね。」

嬉しそうに豊五郎が言う。


「私の本業は剣客だからね。断じて陰陽術師じゃないんだよ。」


「僕も危なかったです。あと少し遅ければ術師が本業になってましたよ。」


日が傾いてきている。豊五郎は夕食の準備に取りかかるために家の中へと戻った。


恭子も後ろ姿で喜びながら家の中に戻って行った。

今回は副業シーンはありませんでした。次回より陰陽術師としてのお話が始まります。

導入部分で説明が多くて申し訳ないです。今後は少しずつ減るかと思います。

どうか次回もお付き合い頂ければと思います。


誤字脱字、感想、要望、この小説はファンタジーカテか歴史(時代)カテにすべきかなど、なんでも随時受け付けております。


宜しければご協力ください。修正、お返事させて頂きます。

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