ある王女様のはなし
ある国のある王女様のお話です。
「コークはあのお方を信じられません。」
いかにも憤慨したというような少年がいました。
彼は頭が異常に発達していたため、お城で王女様専任の教師をしていました。
「どうしたのかね、コーク君。」
「また王女様が勉強を嫌がって逃げました。」
コークはそう答えました。
「そのおかげで昨日の昼からしていた頭痛はひどくなりましたし、守衛隊の隊長は倒れられました。」
「そうか。すまないないな。」
「いえ、王のせいではありませんから。」
きっぱりとした声はしっかりとしていた。
王女様を探すため、満開のバラの咲く庭を通り抜けたコークの肩には葉っぱが乗っていました。
バラたちは綺麗だったのですが、コークの目には入ってきませんでした。
「一体いずこにいかれたのか…」
「ここよ。」
コークはある一本の木を見上げました。
そこには、太い枝に腰かけたいたずらっこがいました。
「ここにおられましたか。」
「ねぇ、コークも上がってこない?」
「私はインドア派なのですが…」
少し困った顔をしましたが、コークは登り始めました。
でも、コークには登ることができませんでした。登ろうとする度に枝が片っ端から折れていくのです。
何故だろうと疑問に思いましたが、答えは分かりませんでした。
王女様はあきれてしまいましたが、コークはあまり気にしませんでした。
「このまま話をしましょ!」
「ありがとうございます。」
コークは苦笑しながら木の根のはっている上に座り込みました。
「コークはこの国を好き?」
「好きですよ。」
何をあたりまえなことを?とでも言いたげでした。
「じゃあ、私のことは?」
「好きですよ。お使えする身としましては、もう少しおしとやかにしていただきたいのですが。」
はぁ、っと息を吐きました。
「そう。」
王女様も少しつらそうに息を吐きました。彼女にも悩みがあるようです。
頭を上げて上を向くとすねたような顔をしていました。
「別の意味でも、好きです。」
風にかき消されかねない声でした。
彼女に思いは届きはしないのはわかっているが、手を伸ばしてしまう自分が好きじゃない。そうコークは思いました。
「好きです。」
それに答えようとはしない王女様。一体どうしたのでしょう。
「私、降りるわ。」
王女様は木をいきなり降り始めました。
一歩一歩すいすいと降りてきている、そう見えました。
ですが、それは間違いでした。
「危ない!」
「えっ?」
その瞬間、足元の枝が折れ王女様は真っ逆様に。
「コークに国外追放を命ず。」
王様の顔には何の表情もありませんでした。
コークにも何の表情もありませんでした。それはある程度わかっていたことでしたから。
「失礼いたします。」
コークは王女様には別れを告げませんでした。
「これでこのお話は終わりです。」
ある村のある教師が言いました。
「えぇ!?これで終わりなのぉ?」
その教師はその村の中で一番頭がいい大人でした。
「では、続きはみんなで創ってみましょう!」
ある女の子は言いました。
「きっと王女様はコークの後を追ってきたとおもうわ。」
ある男の子は言いました。
「けっ、メロドラマじゃあるまいし。もっと現実的に考えろよ!王女が教師なんか相手にするかよ!?」
それから、女の子の意見と男の子の意見で対立を始めました。
「コーク!」
遠くから良く見知った声が届きました。それは今では王妃となった人の声でした。
「お久しぶりです。」
逆光が目に痛かったけれど、彼は幸せそうな顔をしていました。
何が幸せだったのかなんて誰にもわかりません。
これでこの話は本当におしまい。次はいつ会えるかな?