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002/ 睡眠労働社会という、あまりにも静かな革命
ここから先は、フィクションと現実の境界が少し曖昧になる。でも、技術的・経済的な方向性としては、そう突飛な話でもない。
たとえば、こんな社会を想像してみてほしい。
眠ると脳波や血流や体温の変化、神経活動のパターンが、すべて高精度のセンサーに拾われる。
そのデータはAIによって解析され、夢のイメージや感情の推移、思考の断片として構造化される。そして、それがそのまま「生成AIの学習素材」として取引される。
昼間に私たちは普通に働いてもいいし、働かなくてもいい。でも、夜になって眠るだけで、一定の収入が入る。
夢の質や独自性がシステムに高く評価されれば、より多くの報酬が支払われる。いわば、「眠りは労働となり、夢は通貨となる」という世界だ。
こんな制度がもし公式に「福祉」として導入されたら、人類の大半は歓迎するだろう。
ベーシックインカムに擬態したその制度は安心感を伴っていて、しかも痛みも苦しみも少ない。
人間側は「ただ眠っているだけで、社会に貢献できる」のだから。
けれど、それは同時に人間の睡眠が完全に市場に取り込まれる瞬間でもある。




