表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/59

42本目・絶望

咆哮とともに、瘴気竜が再び喉を震わせた。

喉奥の魔力の流れが見える。

赤黒い光、瘴気と混じった灼熱の奔流――。


「くるぞ! また炎のブレスだ!」

瞬は黒焔・クワを地に突き立て、土壁を展開した。

今度は流れを読み切っている。

炎の進路を逸らすよう、壁を斜めに築き、爆風を受け流した。


 轟音と熱風が吹き荒れ、土壁は焼け爛れながらも炎を押し返す。


「……やったか……!?」

きいが息を荒げながら顔を上げる。


 だが――。


「いや、違う……」

優衣の声が震えた。


 瘴気竜は地を蹴り、巨大な身体を宙へと舞い上げていた。

翼を大きく広げ、その羽根に炎と雷と氷の魔力が宿っていく。

赤、蒼、紫――三色の光が同時に弧を描き、空そのものが悲鳴を上げる。


「まさか……翼そのものに属性を……!」

瞬が顔を青ざめさせる。


 次の瞬間、竜が翼を大きく振るった。


 轟音が空を裂き、炎・雷・氷が混ざり合った暴風が渦を巻く。

三属性の竜巻――灼熱が肌を焼き、氷結が骨まで凍らせ、雷撃が心臓を撃ち抜く。

すべてを同時に呑み込む、絶対の嵐。


「な、なんだこれぇぇぇっ!?」

きいが悲鳴を上げる。

尻尾が逆立ち、体毛が焦げ、氷片が血をにじませる。


「――聖剣焔舞・流星二十華ッ!」

優衣は必死に黒焔を振るい、舞う炎刃で竜巻を斬ろうとする。

だが三属性が絡み合った嵐は、炎の剣閃を呑み込み、逆に押し返してきた。


「ぐっ……斬り裂けない……っ!」

優衣が押し潰されそうになる。


「優衣ッ!」

瞬は地面に黒焔・クワを叩きつける。


 大地が唸り、無数の岩盤が立ち上がり、三人を包み込むように巨大な盾となった。

雷が岩を砕き、炎が焼き、氷が崩す。

それでも瞬は叫びながら次の壁を、さらに次の壁を築き続けた。


「折れるなら……立て直す! 砕けるなら……積み上げるッ!

 俺が……絶対に……守るッ!!」


 竜巻が大地を削り、遺跡の石柱を次々にへし折り、空間そのものを崩壊させる勢いで吹き荒れる。

その中心で、瞬の全身は血まみれ、腕は裂け、呼吸は限界に近づいていた。


「瞬っ……もう無理だよ! これ以上じゃ……っ!」

優衣が悲鳴を上げる。


「にゃ、にゃぁ……あたしも……力が……っ」

きいの炎爪は霧散し、ただ必死に地面へ爪を立てて耐えていた。


 それでも――瞬は叫ぶ。


「まだだ……まだ、諦めねぇ!

 こいつの力……必ずどこかに隙がある……! 俺が見つけるまで――倒れるわけにはいかねぇッ!!」


 炎、雷、氷、瘴気が混ざり合う竜巻の中心で、瞬の瞳だけがぎらぎらと燃え盛っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ