24本目・ギルド同録のすゝめ
にゃあ……最近あたしの周りが騒がしい。
どうやら「武闘派猫」ってあだ名が、街じゅうに広まっちゃったらしい。
きのうなんて、露店で魚を買ってたら、見知らぬ人に指差されて、
「あっ、あの猫だ!」
「この前、畑のカカシ相手に剣技を披露してたやつだ!」
……って、まるで芸人みたいに扱われたにゃ。
◇
その日の午後。
ママと一緒にギルドへ行ったら、受付嬢のお姉さんがにっこり笑って言った。
「きいちゃん、正式に冒険者として登録してみない? 今のままだと優衣さんの同行者扱いだけど、きいちゃん自身にギルドカードがあれば、単独で依頼も受けられるし、報酬ももらえるのよ」
にゃにゃっ!?
あたし、猫なのに……人間の仲間入りってこと?
「でも、きいちゃんが人の言葉を話して、魔法も使えるなら前例にしてもいいかもしれないわ。ギルドとしても記録に残る偉業よ」
お姉さんは真剣にそう言ってた。
横でママが「いいんじゃない? きいちゃんの力、正式に認めてもらえるんだし」って嬉しそうに頷く。
……でも、あたしはちょっと考えちゃったにゃ。
ギルドに登録したら、いろんな冒険に駆り出されるかもしれない。
ママと一緒に行けるならまだいいけど、パパの畑番もあるし……。
「にゃー……あたしは、ママのそばにいたいだけなんだにゃ。
でも、登録してもママの隣にいられるなら……考えてもいいかもにゃ」
そう言ったら、ママはにっこり笑ってあたしを抱き上げた。
「大丈夫。どこに行っても一緒だから」
◇
そのやり取りを聞いていた周りの冒険者たちが口々に囁く。
「おい、猫がギルド登録するってよ」
「新しい伝説の始まりだな」
「“鍬神の瞬”と“ワイバーン女傑優衣”に続いて、今度は“猫”かよ!」
あたしは耳をぴくぴく動かして、思わずため息。
「にゃあ……。だからその呼び方、もうちょっと工夫してほしいにゃ……」
◇
その夜。
ママの膝の上で眠りながら、あたしは思った。
――冒険者登録なんて肩書きより、やっぱり“ママの猫”でいられるのが一番幸せにゃ。
でも……まあ、カードくらいなら作ってもいいかもね。
だって、そのほうがもっとママの役に立てるんだから。




