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23本目・番外編 きいの一日


にゃあ……。


あたしの名前は「きい」。

前はただの家猫だったのに、気がついたらママ(優衣)とパパ(瞬)と一緒に、変な世界に来ちゃった。

けどまあ、ママがそばにいてくれるなら、どこにいたって安心なのにゃ。


今日の朝も、ママの布団の上で丸くなって起きた。

ママは「おはよ、きいちゃん」って撫でてくれる。

パパは……机でまたニコチ草って葉っぱを眺めてた。

いつ見ても葉っぱばっかり見てるにゃ。

「お前は葉っぱ観察おじさんか!」って心の中で突っ込んでおいた。



昼頃、パパが畑に作ってくれたカカシを見に行った。

ただのカカシかと思ったら、これがなかなか手応えあるにゃ。

藁がぎっしり詰まってるし、蹴るとぐらっと動くから、つい本気で挑んじゃう。


「にゃっ! にゃにゃにゃにゃ!」

前足で連撃、後ろ足でけりけり。

仕上げは噛みつきだ!


すると――通りがかったおじさん冒険者が、目をまんまるにして言った。

「な、なんだあの猫!? 戦ってやがるぞ!」

「ただの猫じゃねぇ! 武闘派だ!」


気がついたら人だかりができていて、拍手までされちゃった。

ちょっと恥ずかしいけど、誇らしい気持ちもあるにゃ。



午後はママのお手伝い。

洗濯物を干しているママの横で、ごろごろ転がって日向ぼっこするのが幸せ。

ママは「きいちゃんは手伝いになってないよ~」って笑ってたけど、

ママを癒やすのも大事な仕事だと思うにゃ。


一方のパパは畑の土をいじりながら「もっとふかふかに……もっとふかふかに……」ってつぶやいてた。

正直、ちょっと怖かった。



夕方。

またカカシ相手に稽古してたら、街の子供たちまで見に来て、

「きいちゃんかっこいい!」って大はしゃぎ。

……かっこいい?

猫なのに?

ま、悪くないにゃ。


その様子を見ていたギルドの人たちが「“武闘派猫”きい」という変なあだ名をつけて笑ってた。

うーん……なんか響きが雑にゃあ。



夜。

ママとパパと一緒にご飯を食べて、ママの膝の上で丸まった。

「きいちゃん、今日もいっぱい動いたね」ってママが優しく撫でてくれる。

やっぱり、あたしの場所はここなのにゃ。


外では「鍬神の瞬」だの「ワイバーン討伐の女傑」だの言われてるけど、

あたしはあたしでいい。

ママとパパと一緒に暮らせるなら、それが一番幸せなんだ。


にゃふ……おやすみにゃ。

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