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15本目・硬貨の価値は・序

「な、なにぃ……!? 白金貨……百枚だと……!?」


冒険者ギルドの大広間。

受付嬢が提示した袋を見た瞬間、居合わせた冒険者たちの喉が一斉に鳴った。

中に詰まっているのは、滅多にお目にかかれぬ白金貨。

しかも――百枚。


場の空気が一瞬で凍り付く。

「ひ、百枚……ってことは……金貨十万枚分……!?」

「冗談だろ……国宝級じゃねぇか!」

「ギルドが破産するぞ……」


誰もが目を疑い、ざわめきが広がる。


一方で――

「……ん?」

「なんでみんなそんなに驚いてるのにゃ?」

首をかしげる優衣ときい。


「そんなにすごいの? お金なんて銅貨と銀貨くらいしか使ったことないからよく分からないんだけど」

優衣は無邪気に笑っている。


受付嬢が必死に説明を始めた。

「銅貨は……ええと、パンや果物が買える程度の価値ですね。

銀貨は100銅貨。食料をまとめて買ったり、装備や服を揃えるときに使います。

そして金貨が100銀貨。冒険者なら上級になってようやく手にできる額面です。

……で、そのさらに上が白金貨。国同士のやり取りに使われる、国家資源級の貨幣です。

普通は庶民が一生で一度も目にすることがないものを……百枚も」


「……つまり」

きいがしっぽをぴんと立てながら数を数える。

「1白金貨は1000金貨だから……百枚で、金貨十万枚にゃ?」


「そ、そういうことです……」

受付嬢は冷や汗をかきながら頷いた。


だが、優衣はまだ首を傾げたままだ。

「んー……でも、瞬のタバコの代わりになるニコチ草を買うくらいなら……そんなにいらないよね?」


「……お嬢さん……」

ギルド内にいた誰もがずっこけそうになる。


場を和ませたのは、岩のような体格のドワーフ――ガイエンの笑い声だった。

「ガッハッハ! 相変わらず桁外れな嬢ちゃんだな! さすが兄貴が惚れ込んだ男の嫁さんよ!」


「え?」

優衣が瞬きする。


「そういや言ってなかったな。俺はガイエン。兄貴のガイモンは鍛冶工房をやってるんだが……お前さんの旦那と妙に気が合っちまったらしい」


「え、瞬が……?」

優衣が思わず笑ってしまう。

「あの人、武器とか道具とか大好きだからね」


「そういうこった。ま、今回の件でお前さんにも借りができた。兄貴共々、力を貸してやるぜ」

ガイエンが大きく頷いた。


優衣は一瞬、きいと顔を見合わせ――

「ねえ、きいちゃん。瞬にこの白金貨百枚、どうやって渡そうか?」


「うーん……机に置いたら腰抜かすにゃ」


二人と一匹の無邪気なやり取りに、冒険者ギルドの空気は再びざわめきと笑いに包まれていくのだった。

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