[6]19:00
お肉も焼けたし、さあ! 食べよう!!
そうね、初めて焚火で炊いてみたご飯、気になるわよね!!
日はすっかり落ちて、辺りを闇が包み込む。
2人は焚火とランタンの明かりを頼りに、箸を進める。
「ちゃんと焼けてんのかなぁ?」
「良い肉だから、多少赤くても大丈夫だよ」
街の肉屋は人気店で、食事/買い物共に四つ星評価となっている。
青年実業家と名乗る成史はおそらく食通で、その事を知っているからこそ、高品質の肉を沢山買ってきたのだろう。
柔らかく、良質な脂の乗った肉に舌鼓を打つ…と言うよりは、ガッついたって誰も文句を言わない。
そう、2人だけのBBQの夜だ。
「ご飯食べていい?」
焚火で炊いたご飯。その炊き上がりが気になる由莉奈は、少し不安気に飯盒へと目をやった。
「もう出来てるだろう。開けてみようか」
成史が飯盒の蓋を開けて、炊き上がったご飯をかき回す。
底の方から、程よいお焦げが姿を現した。
「おっ! 良い炊き上がりだ!」
「でも、ちょっと焦げちゃったよ」
「な〜に、これがいいんだ。これが美味しいんだよ」
自宅では炊飯器で炊く。
米を研ぎ、適量の水を入れて炊飯器のボタンを押すだけ。
炊飯器が自動で炊いてくれるのだから、お焦げなんて出来やしない。
だから炊き上がりから焦げてるご飯なんて知らない。
「焼きおにぎりって食べた事あんだろ?」
「焼きおにぎり…あ! そうかぁ!」
お焦げが美味しい事に納得した由莉奈は、ふと何か閃いた様子だ。
「焼肉のタレってまだあります?」
「あるよ。まだ焼く? 肉もまだまだあるからね、ほら」
「お肉じゃなくて、えへへ…」
少し含み笑いをして、由莉奈は手にラップを広げると、ご飯を乗せた。
少し熱い。でも、絶対美味しいはず。
「はい! これ」
成史の手に渡されたものは、少し歪だが三角に握られたご飯。
「これにタレを塗るの。そしたら網に乗せて…」
「おっ! そうか。いいね! そのまま食べてもいいけど、焼きおにぎりなんて洒落てるね」
ご飯ってこんなに美味しいものだと思わなかった。
香ばしい匂いを放ち、表面に軽く焦げ色が着いたおにぎり。
「ほぉら、出来たよ。ゆっぴが先に食べなよ」
そう言って成史がアルミの皿に乗せたおにぎりを手渡す。
それを器ごと受け取る由莉奈のその指が、成史の指に触れ、微かに体温を感じた。
成史に気づかれないまま、由莉奈の頬は赤く染まった。
―温かい手。
そりゃあそうだ。燃え盛る焚き火を前に、体は火照る。そんな事は分かっているのに、由莉奈の心の中では、その温かさは勝手に成史の優しさに置き換えられていた。
温かさ。
今のこのシチュエーションの中で、成史は何を思うのだろう。
由莉奈に対して、1秒たりともブレを見せない彼の笑顔。心底想いを寄せてくれているのなら、もう一歩だけ踏み込んでみて欲しい。
―ねぇ、お願い。もう一歩だけ。
読んでいただき、ありがとうございます♪
成史の優しさが出ちゃいましたね。
手が触れた瞬間に、由莉奈の心はキュン♡
心は突っ走ってるけど、次回どうなるのかしら?