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3/19

[3]16:00

そういえば、まだお名前知らないわ…

何て呼べばいいのかしら?

自己紹介ははじめの一歩よ!

 少し日が長くなった。

 陽はまだ西の空の高い位置から大地を見下ろしている。

 とは言うもののまだ少し風が冷たくて、手持ちだった厚手のパーカーを羽織る。


「あの…」

「あの…」


 同時に発した声。

 少し笑いながら、2人は顔を見合わせる。

 ただ同時に声を発しただけだ。それなのに互いの親近感は高まる。


「ど、どうぞ」

「いや、君の方から」


 譲ろうと思って譲り返された。

 由莉奈は、「じゃあ…」と言って少し俯いた。


「お名前…まだ…」


 そう言うと、成史はハッとした。そういえば、まだお互い名前を知らない。そんな男女が2人きりで?

 こんな時、どんな態度を取ればいいのだろう?

 成史は、おもむろに薪と斧を手にすると、薪に向かって斧を振り下ろした。


 鈍い音がした。

 アニメで見るようにパッカリ割れる薪を想像したが、実際にはそんなに上手くいく訳もない。


「あ、やっぱり僕が先に名乗るべきだね、あはは…」


 成史は照れ笑いを浮かべる。

ここまで緊張するのだから、薪割りだって失敗もするだろう。

 慌てて誤魔化すように、彼はその名を名乗った。


「僕は成史。椎名成史っていうんだ」

「私は…林由莉奈。友達からは“ゆっぴ”って呼ばれてます」

「ゆっぴ…ちゃんかぁ。うんうん」

「ちゃんは無しで。ゆっぴって呼んでください」

「ゆっぴ…あはは、何だかてれちゃうなぁ。じゃあ僕は、ナリで」


 名前を、そして呼び名を聞くことが出来た。また少し近付けた気がする。

 そう思うと、ちょっぴり嬉しくなった。


「ナリ…さん…い、いえ、ナリ…あはっ…あの……」


 上手く言葉が出て来ない。男性をニックネームで呼ぶなど、今までにあっただろうか。


「き、黄色いシャツがお似合いですね」


 会った時から気になっていた、その鮮やかなシャツの事。

 言ってみた。意外と言えたが、ナリと呼んだことが照れ臭くて、由莉奈はまた俯いた。


 パカン―!!


 成史の気持ちも盛り上がったかもしれない。

 まるで同調するかのように、心地良い音を奏でて薪が割れた。


 黒っぽいアウトドアブルゾンに、黄色いTシャツ。


「ありがとう。はは…ちょっと派手だとか言われるけど、実は結構気に入ってんだ」

「分かります。だって、サマになってるもの」

「ゆっぴの…あは…ゆっぴの、そのパーカーもいいね」

「これ? そうかな? 無難っていうか、何でも合わせられるから楽なの」


 それは本音だ。服装のセンスなんて、大して自信もない。だからいつも、同じような色のものを選んで着ている。

 しかし、安心は笑顔をもたらす。自信のないものを見に纏ったとて、それは表情に表れるものだ。


 笑顔でいられるもの。それは決して無理をせず、身の丈に合わせたもの。そしてそれが、その人に一番似合う服装だ。

 成史に言われたこの言葉に少し気恥ずかしさを感じながらも、由莉奈は胸の内に心地良い刺激を受けた気がした。



 カチッという音が小さく鳴ると、薪が煙を放つ。そして程なく火が着いた。


「わっ! 焚火、いいですね!」

「たろ? 折角だから、差し支えなければ夜も一緒に過ごしてくれない? 焚火見ながらの夜って、凄く癒されるよ」


 意外だ。文明の最先端を突っ走る青年実業家は、どうやらアウトドアライフにも精通しているようだ。

 火が起こると、その瞬間に成史は積極的な言葉を放った。


「はい。お邪魔じゃなければ…」

読んでいただき、ありがとうございます♪

照れますよねー、自己紹介からの呼び名。

照れ隠しに薪割りなんて、もう、ナリったら…うふふっ♪

次回、どうなるのかしら?

お楽しみに!

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