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1-07側室候補

「デクス様に溺愛されて私は幸せ、いつかきっとこのまま仲が良い夫婦になりたい」


 そう私は独り言を呟いた、デクス様には聞かれていなかったはずだ。そうして数か月が過ぎ去った、国王陛下はフロンティア学園に問題があることを正式に認めた。それに伴って教員の整理や教科書の採択、それに何より授業内容の見直しが行われた。こうして今までただ漫然と授業をしていた教師は解雇されることになった、教科書は多くを修正されて新しく作られることになった、そして現代には必要が無いとみなされた授業は無くなってしまった。


「シャイン、フロンティア学園の改革も終わった」

「ええ、デクス様。無事に改革できて、良かったです」


「そろそろ俺たちがこのフロンティア学園に通う必要は無いと思う、もう俺たち抜きで改革は始まっているからだ」

「そうですね、特に受けたい授業もありませんし、フロンティア学園を辞めましょう」


「ははっ、良かった。これでシャインと一緒にいられる時間が増えるぞ!!」

「はい、私もデクス様と一緒にいられる方が幸せです」


 こうして私たちはフロンティア学園を辞めた、私たちがフロンティア学園を辞めた後に、フルールという女性から猛抗議があったそうだがもう私たちには関係なかった。そうして私はまた勉学に励みながら王宮で昼間も暮らすようになった、デクス様は十三歳になっていて国の仕事を国王陛下から任されるようになった。私にも王太子妃がするべき執務が任された、私は慎重にでも正確に仕事をこなしていった。


「え!? これは何? デクス様の側室候補ですって!?」


 私に任された仕事の中にデクス様の、側室候補の女性の選択というものがあった。私とデクス様はまだ結婚もしていないのに、もう側室のことまで考えなくてはならなかった。私はこれは黙っていたらデクス様がお怒りになると思って、執務が終わった夜にデクス様に書類を持っていって相談した。そうしたら案の定、デクス様は大変お怒りになられた。


「まだ俺の王太子妃であるシャインとも結婚していないのに、どうして側室候補なんかが必要なんだ!?」

「私にもそれは分かりません、既に私とデクス様が結婚していて、私に子どもが産めないのなら分かります」


「シャインには絶対に俺の子どもを産んで貰う、それが男なら国王に女なら王配を貰えばすむような話だ」

「わっ、私がデクス様の子どもを産めれば良いのですが、こればっかりは試してみなければ分かりません」


「そうだ、まだ俺には側室候補など早過ぎる。この書類は父上と少し相談してみる、何か別のお考えがあるのかもしれん」

「そうですわね、国王陛下が何も考えずにこんな書類を、お渡しになるわけがありません」


 私はデクス様の側室候補を選ぶということをもう一度考え直してみた、側室候補を私の好きに選んでいいということは私にとって、側室という王宮内の味方を増やすのに使えという意味かもしれなかった。でも私は側室を選んでその女性の実家を味方につけるよりも、そうしない方が良いと政治的にも思っていた。そう考える私に翌日になってデクス様が、国王陛下の真意を説明してくれた。


「確かにこの側室候補の選定には意味があった、俺たちを襲った政敵である貴族をそれで炙り出そうという考えだ」

「ひょっとして五歳の時に狙われていたのは、デクス様ではなく私だったのですか?」


「ああ、父上があの事故をずっと調べていたが、俺を王太子から排除しようとする者はまだ見つかっていない。だから、あの事故の標的はお前だった可能性がある」

「それで側室候補の選定なのですか、今度こそ私を蹴落としてデクス様の愛情を勝ち取る娘を王宮に入れたい、そういう危険な貴族を選べという意味なのですね」


「俺としては側室など持つ気はない、父上もあくまでも側室候補だと言った」

「それでは私の実家である公爵家と対立している家、それを中心に考えて選んでみましょうか」


 こうして後宮に側室候補と呼ばれる女性たちが集まることになった、三人の選ばれた女性たちには客室が与えられしばらく王宮で暮らすことになった。あくまでも彼女たちは側室候補であるため、国王陛下は後宮の中には立ち入らせなかった。私はいつものように勉強と王太子妃の仕事をこなしていた、だが側室候補がそろったと聞いて、王宮の中で王家主催のお茶会が開かれることになった。


「デクス・イデア・ストラストだ、今回は俺の側室候補としてよく来てくれた」

「シャイン・コンセプト・ディアノイアでございます、本日は遠方からもよく来られました、それではお茶をお楽しみください」


 私とデクス様が挨拶をした後、側室候補の方々も順番に挨拶をしていった。私の公爵家と敵対するだけはあって、どの側室候補も美しく聡明そうな女性を送り込んできた。私は三人の名前や特徴を忘れないように頭の中に叩きこんでいった、側室候補の女性たちの目は一見すると穏やかだったが、デクス様に向けるその目は飢えた獣のように鋭かった。


「サヴァン・カレーネ・ティスニアと言います、得意なことは詩歌でございます。デクス殿下に心からお仕え致します」


 サヴァン様は茶色い髪に同じ色の瞳をした侯爵令嬢で、背が小さく見た目は可愛らしかった。そして自己紹介したとおりに詩歌が上手く、その場で即興でデクス様への愛を詩歌にして見せた。どうやら黄色い物を好んでいるようでドレスや宝石など全て黄色のもので統一していた、私にも愛くるしい挨拶をしてくれたが幼い外見を裏切ってその目は大人の女性の目だった。


「ペルシア・ドロール・スペリオールと申します、得意なことは楽器の演奏でございます。デクス陛下に心からお仕え致します」


 ペルシア様は蒼い髪に水色の瞳を持つ侯爵令嬢で、背が高くすらりとした綺麗な体形をしていた。そして自己紹介したとおりに楽器の演奏が上手く、ピアノを音楽家のように弾きこなしてみせた。どうやら青い物を好まれるらしく、ドレスや宝石は青い物が多かった。そして私にも冷静に上品な挨拶をしてくれたが、その目は私への燃えるような嫉妬の炎でいっぱいのようだった。


「レッシェ・ファス・スパイラルです、得意なことはダンスです。デクス殿下に心からお仕え致します」


 レッシェ様は燃えるような赤い髪と瞳をした侯爵令嬢で、背は標準的だったが胸が大変豊かな魅力的な女性だった。そして自己紹介したとおりにダンスが得意でデクス殿下が部下と躍らせてみたが、とても綺麗に床を滑るように滑らかなダンスを見せた。そしてご自分の髪のように赤い物が好きらしく、ドレスや宝石もそのような物が多かった。そして私にも元気良く挨拶してくださった、でもその目は私を見下すように見えた。


「それでは今日のお茶会はこれで終わりにしましょう、また次回ご参加ください」


 最初のお茶会も終わり、こうして三人の側室候補が王宮の客室でしばらく暮らすことになった。私は王太子の部屋にデクス様と二人で戻ってからホッと一息ついた、デクス様も香水の混じり合った酷い匂いがすると私に言っていた。私にはどの女性も怪しく見えてしまったが、どのような印象をデクス様が受けたのか気になったので聞いてみた。


「私にはどの方も怪しく思えましたが、デクス様はどう思いました?」

「どの女も飢えた狼のような目をしていた、俺はあんな女は見ているのも嫌だ。そして確かに三人とも怪しいな、君のことを隙あれば殺しかねないような女たちだ」


「それではデクス様はしばらく大変です、あの三人の方から後宮を出る度に声をかけられるでしょう」

「俺としてはどの家も王家にも、君の公爵家にもよくない貴族だ。適当な理由をつけて不敬罪で処分してしまいたい、もちろんその実家ごとな」


「ふふっ、処分するには十分な理由が必要です。さすがに彼女たちがあまりにも酷いことをしない限り、不敬罪で処分なさるのは難しいかと思われます」

「全く聡明な父上らしいことだ、これを良い機会にと一気に王家に逆らう貴族たちを、全て取り潰してしまうおつもりだ」


 私はデクス様が簡単に貴族を取り潰すと言うので心配になった、窮鼠猫を噛むという言葉もあるくらいだ。それが弱者であっても絶体絶命の窮地に追い込まれると、必死になって反撃をしてくるものだからデクス様のことが私は心配だった。私が不安そうにしているとデクス様はそんな私のことを抱きしめてくださった、温かいデクス様の体温を感じて私は心が落ち着くのが分かった。


「もちろん分かっていると思うが、何が遭っても俺が側室を作る気はない」

「まぁ、私にデクス様の子どもが産めなかったら、その時はお世継ぎはどうされますの?」


「その時は血が近い貴族から養子を貰えばいい、俺はシャイン以外の女を抱くつもりは全くない」

「ふふっ、デクス様は私を甘やかすのが上手いです。私はそれを聞いてホッと致しました、もし私が子どもが産めなかったらどうしようと心配でした」


「俺はシャインだけを見ている、だからシャインも俺だけを見てくれ。他の女も男も俺たちには必要ない、俺たち二人でこの国を治めていこう」

「ええ、デクス様。私も頑張って国を治めていきます、まずはあの三人の様子を見て敵が誰なのかを知らなくてはなりません」


 私はしばらくは三人の側室候補をよく観察することにした、デクス様は後宮を出る度にあの三人の誰かに捕まっていた。三人は後宮の外で私のことを見かけたら挨拶を交わして、私に大人しく道を譲ったがただその目だけが私のことを拒絶していた。その目は敵を見る目だった、もしくは煩わしい虫を見るような目をしていた。私は王太子の部屋のベッドの中で、デクス様に膝枕をしながら聞いてみた。


「三人とも自分の心に素直と言うか、感情を隠しきれないお方なのでしょうか?」

「俺に王太子妃が既に決まっているのに、それでも側室になりたいという女たちだからな」


「それだけご自身に自信があるのか、ご実家からの命令に従っていらっしゃるのですね」

「その両方だと俺は思う、さてシャインはあの女たちをどう処分したい?」


「まだ私に対して不敬なことは何もされていませんもの、それなのに処分などとてもできません」

「そろそろ何かしてくるぞ、次のお茶会が危ない。シャイン、だから……」


 そうして何回目かの王家主催のお茶会が開かれた、私はいつものように微笑んで三人の側室候補とお喋りをしていた。三人はそろっていつもより愛想良く私に笑いかけた、まるでもうデクス様を手に入れたような笑い方だった。そうして私のお茶が運ばれて来た時だった、三人に囲まれていたデクス様がその私のティーカップをとって飲もうとした。


「デクス様、駄目です!?」

「待って、お止めください!?」

「デクス様、飲まないで!?」


 そうして三人がそろってデクス様がお茶を飲もうとするのを止めた、私は事前にデクス様から今日のお茶会では何も口に入れるなと言われていた。だからお茶も飲まなかったし、お茶菓子も口に入れなかった。でもそれで正解だったようだ、ただちに三人は侍女たちごとその場で兵士たちに取り押さえられた。そして三人それぞれの侍女たちから、毒が入った小瓶らしき物が見つかった。


「私は無実です、そんな毒は知りません!!」

「いえ、私こそが無実です!! 他のお二人の仕業です!!」

「私は毒など知りません!! どうか信じてください!!」


 三人は必死になって無実を訴えたが、デクス様はそれを全く信じなかった。デクス様はお母さまを毒殺されているのだ、だから人一倍毒には詳しかった。その私のティーカップに注がれた紅茶を見ながら、そして三人の側室候補をデクス様は凍るような冷たい眼差しで見ていた。そして椅子に座られたデクス様は、一つずつ紅茶に入れられた毒を当てていった。


「カブトギクは可愛い花だが、実は毒性が強い花だ」


サヴァン様がそのデクス様の言葉に真っ青になった、そうして体を震わせながら黙っていた。


「ドクゼリも危険な植物だ、皮膚からも毒がまわるから気をつけた方がいい」


ペルシア様はその言葉に自分の手を見て必死に布でこすった、それから黙って震え始めた。


「ドクウツギは綺麗な果実に見える、一見すると美味しそうだが立派な毒物だ」


レッシェ様は自分の口を押えた、そうしてカチカチと震えて鳴る歯の音を押さえようとした。


「三人と侍女たちを連れていけ、どんな拷問にかけてでもいいから、誰が毒殺を指示したのか必ず吐かせろ!!」


 こうしてデクス様の側室候補は誰もいなくなった、彼女たちは拷問にかけられてそれぞれの家に頼まれたのだと言った。そうして三つの侯爵家が取り潰されることになった、更に犯行に加担していた他の貴族もいくつか潰された。私は側室候補がいなくなってホッとしていたが、家族に暗殺という道具にされた彼女たちを可哀そうだとも思った。


「シャイン、俺のことが怖いか?」

お読みいただき、ありがとうございました!!


最近の作者の制作意欲は、読者である皆さまにかかっています!!


ブクマ、評価、いいねをよろしくお願いいたします!!


★★★★★にしてくださると作者は泣いて喜びます!!


どうか、どうか、よろしくお願いいたします!!

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