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1-04驚愕の連続

「シャイン公爵令嬢、お荷物が少ないように見受けられます」

「そんなに長い間、私はこのお部屋に住むのかしら?」


「はい、国王陛下からはシャイン公爵令嬢は生涯ずっとこのお部屋で、ごゆるりとお過ごしになるように命じられております」

「それならお父さまにお願いして、残りの荷物を持って来てもらうようにします」


「かしこまりました、それではシャイン公爵令嬢にお仕えする侍女を紹介致します。右から順にマリー、スージー、ティア、ポエット、アマンダ、リスン、デルラ、プリゼ、ヘレン、ティエールとなります」

「それでは皆、これからよろしくお願いします」


 こうして私の王宮への慌ただしい引っ越しは終った、私は公爵家から侍女をつれてくることは許されなかった。だから新しい侍女たちの顔と名前をしっかりと覚えた、早めに私の確かな味方になってくれる侍女を見つけたかったが、そう簡単に人間性とは分からないものだ。だから私は公爵令嬢らしくとりあえずは大人しい淑女を演じていた、侍女たちは笑顔で私を出迎えてくれたが、私にはその心の中までは分からなかった。


「俺の可愛いシャイン、引っ越しは終ったかい?」

「デクス様、はい。私の荷物は運び終えました、足りない分はまた運ばせます」


「それじゃ、シャイン。俺の部屋においで、君には見せておこう」

「はっ、はい。分かりました、デクス様」


「この扉を開けばそこが王太子の部屋だ、今夜からシャインはここで俺と一緒に寝るんだ」

「はい、今夜からここで……、ここで!?」


 私は今夜から王太子の部屋で一緒に寝ると聞いて驚いた、まさか五歳児だから貞操の心配はしていなかった。でもこの豪華で上品な王太子の部屋といえば、王や王妃に次いで身分の高い方の部屋だった。そんな私はデクス様からまた手にキスをされた、私はそれには驚かなかったが続いて右の頬にキスをされた、その優しいキスには私はまた飛び上がって驚いた。デクス様はそんな私を楽しそうに見ていた、その笑顔を見ていると私は体の力が抜けてしまった。


「シャイン、君は好きな食べ物はあるかい?」

「好き嫌いはしないようにしていますが、しいて言うのなら新鮮なフルーツが好きです」


「そうか、それなら毎日それを用意することにしよう」

「デクス様、そんなに国庫に負担をかけてはいけません。私は今のままで平気ですから、お気になさらないでください」


「いやもうシャインのために、仮の王太子妃として予算が組んである。俺にとって君はもう王太子妃だ、だから少しくらい我儘を言うくらいは許される。後でシャインのための予算、それを見せてあげよう」

「はっ、はい。分かりました、デクス様」


 私とデクス様は二人きりで王家の食堂で夕食を楽しんでいた、私はマナーを守って食べることに気をつかっていた。だからデクス様が言っている私のための予算、それを王太子の部屋で見せられた時にはまた驚いた。それはただの公爵令嬢が一人で使うには大金だった、デクス様はそれでも母である王妃が生きていたら、もっとシャインに予算が貰えたのにと不満気だった。


「デクス様、こんなにたくさんの予算。私では使いきれません、孤児院などに寄付してもよろしいでしょうか?」

「駄目だ、孤児院などへの予算は別にしっかりと割り当てている。これは俺の可愛いシャインのための予算だ、この予算を使っていいのは俺の可愛いシャインだけだ」


「ああ、でも必要ない分は使わないでいざという時の為に、国庫に貯めておけばよろしいですね」

「いいや、使って貰わないと出入りの商人たちが困る。それに王太子妃として威厳が保てない、シャインはもっと綺麗に着飾っていい」


「いえ、デクス様。私たちはまだ結婚しておりません、ですから私はまだ王太子妃ではありません」

「そうそれが俺には残念だ、シャインを早く王太子妃にしたい。そうして甘やかしてやりたい、俺がいないと生きていけないくらいに君を可愛がりたい」


 私は最初に会った時のデクス様はどこに行ったのかと思った、デクス様は王太子の部屋でお話をされる時も、ご自分は椅子に座ってそしてそのお膝の上に私を乗せていた。そしてあんまり甘い言葉ばかり言うものだから、私はデクス様の正気を疑いかけていた。私とはたった数日前に会ったばかりだ、その間に政敵に襲撃されたりして、私がデクス様の命の恩人になってからデクス様はおかしくなった。


「出入りの仕立て屋にシャインに、もっと似合うドレスを沢山作らせよう」

「私はちゃんと公爵家から、ドレスを持ってきております」


「ドレスだけじゃ足りない、靴もドレスに合わせて新しい物に変えないといけない」

「デクス様、私は靴だって必要な分はきちんと持ってきております」


「いや今のシャインは清楚で可愛いが、もっと君だけに似合うドレスや靴それに宝石も作らせよう」

「そんなに沢山の物を用意したらお金がかかって!? あっ、私のための予算があるんだった」


 それから数日から数か月で私の部屋のクローゼットは充実していった、王家にふさわしく派手過ぎずでも豪華なドレスや靴、それに私の為だけに新しくデザインされた宝石などが増えていった。これでまだ一年分の予算も使いきっていないのだ、それだけ王太子妃とは相手から侮られないように着飾っておく必要があるのだった。私が今日公爵家から持ってきた衣装だけでは、とても王太子妃としては十分だとは言えなかった。


「それじゃ、シャイン。王太子妃の部屋でお風呂に入っておいで、俺も一緒に入れないのは残念だ」

「すぐに王太子妃の部屋でお風呂に入って参ります、それでは私は少しの間だけ失礼致します」


「シャイン、何か嫌なことが遭ったらすぐに俺に言うんだ。俺の可愛いシャインに嫌がらせをする、そんな奴は絶対に俺は許さない」

「私に付けられた侍女たちは皆よく働いてくれます、私は今のところ誰にも嫌がらせなどされていません」


「今はそうでもこれからは分からない、だから何か遭ったらまず俺に相談するんだ」

「はい、かしこまりました。デクス様、それでは浴室を使いますので、しばし失礼いたします」


 そうして私は王太子妃の部屋でお風呂に入ることにした、今日一日だけでもいろんなことがあり過ぎて、私は心の中だけでかなり驚いてそして混乱していた。そんな私に温かいお風呂は気持ち良かった、まだよく知らない侍女に体を洗われるのには少し抵抗があったが、五歳児の子どもの裸なんて侍女なら気にもしていないはずだった。私は宝石のように丁寧に洗われて、しっかりと体の汚れを落とされた。


「ふぅ、とても気持ちが良いお風呂でした」

「それは良かった、シャイン」


「デクス様!? いきなり私の部屋に入らないでくださいませ。私も突然この部屋に来られては、いくらなんでも驚いてしまいます」

「それではシャインが驚いたりしないように、俺に慣れて貰うように毎日ここに来ることにする」


「ええ!? それはちょっとおかしな話ではありませんか、いくら婚約者でもお風呂上りを見られるのは恥ずかしいです」

「うん、シャインが恥ずかしくないように、俺に慣れるまで君は頑張ってくれ。本当はお風呂にも一緒に入りたいくらいだ、それを俺は我慢しているのだから構わないだろう」


 私はデクス様の言っていることにまた驚いた、デクス様はまだ結婚もしていない五歳児の私を、もう王太子妃として扱うつもりのようだった。デクス様は私に好意的になり過ぎだった、いずれ私は王太子妃になるだろうが、まだ五歳の私にはその役目は早かった。でも誰もデクス様を注意したりはしなかった、デクス様は私をとろけるような眼差しで見ながら、また穏やかで優しい笑顔をしていた。


「それではシャイン、俺も自分の部屋で風呂に入るから、君には俺のベッドで待っていて欲しい」

「かっ、かしこまりました。デクス様、それでは恐れ多いですが、デクス様のベッドでお待ちしております」


「本当は風呂も一緒に入れればいいのにな、さすがにそれは結婚するまでは禁止されてしまった」

「けっ、結婚したらお風呂も一緒なのですか!? それはさすがに恥ずかしいと私は思います!!」


「なぁに大丈夫だ、シャイン。結婚するまでには君も俺に慣れる、俺に裸くらい見られても平気になるさ」

「そっ、そうでしょうか。それにまだまだ先のお話ですものね、それではデクス様お風呂へどうぞ」


 私はデクス様の部屋に本を持ち込んで政治学の勉強をまたしていた、ベッドの上で夢中になって本を読んでいるうちにデクス様はお風呂から出てこられた。私は本をひとまず近くのテーブルに置いてから、まだ髪が濡れているデクス様の頭をタオルで拭きなおした、デクス様は私から世話を焼かれて嬉しそうにしていた。


「デクス様、髪はもう少ししっかりと拭かないと、風邪を引いてしまいます」

「ああ、今日から可愛いシャインと眠れると思うと、心が急いてしまって風呂から早く出てきてしまった」


「私はどこにも行きませんから、次からはしっかりと髪を拭かれてから出てきてください」

「それは嫌だ、シャインに髪をこれからは拭いて貰うことにする。だから、これから毎日頼んだ」


「かっ、かしこまりました。それではデクス様、一緒に眠ることに致しましょう」

「ああ、これから毎晩シャインを抱きしめて眠れるとは幸せだな。俺はこんな幸せな気持ちを、随分と昔に忘れてしまっていた」


 そうして私とデクス様は王太子の部屋で一緒に眠ることになった、デクス様は私の体を大切そうにでもしっかりと抱きしめてきた。そんなデクス様はとても可愛いかった、だから私はうっかりとデクス様の額にお休みのキスをしてしまった。私がそうするとデクス様はキョトンとされていたが、すぐににっこりと笑って今度は私の額にキスをしてくださった。こうして私たちは眠りについた、だがしばらくするとデクス様が魘されて私は起きてしまった。


「俺のシャイン、俺だけのシャインが」

「はい、デクス様。私はデクス様のシャインです」


「シャイン、俺のシャイン……」

「大丈夫です、デクス様。私はここにおります」


「……ああ、……良かった」

「デクス様、どうか良い夢をご覧ください」


 デクスさまは最初は酷く魘されていたが、私が優しく話しかけてぎゅっと強くその体を抱きしめたら、穏やかなお顔になって深い眠りにつかれた。そして無意識なのかデクス様は私の体を強く抱きしめていた、私も特に眠るのに支障はなかったのでそのままで眠りについた。私は何だかふわふわの子犬を抱きしめる夢を見た、とても柔らかくて可愛い子犬だったので私は可愛いと思い、その子犬を離さないように抱きしめた。


「おはよう、シャイン。良い夢が見れたか、俺は君の夢を見たよ」

「おはようございます、デクス様。はい、私は可愛いらしい子犬の夢を見ました」


「俺の夢は見てくれていないのか、よしそれではシャインの夢に出れるように俺は頑張るとしよう」

「ふふっ、デクス様。私には見る夢を選ぶことはことはできません、でも夢の中でデクス様とお会いするのも楽しそうです」


「シャインは本当に笑顔が可愛いな、いつまでも眺めていたいがそろそろ起きるとしよう」

「はい、デクス様。柔らかいベッドが少し名残惜しいですが、もう起きてしまいましょう」


 そう言って私が起きるとデクス様に右頬にキスをされた、そしてデクス様はご自分の右頬を指さして何かを待っていた。私はそれが私からのキスを待たれているのだと気がついた、だから少し恥ずかしかったが、デクス様の右頬に触れるだけの優しいキスをした。デクス様は満足そうに幸せそうに笑って、そうして私たちの一日がまた始まった。


「俺の可愛いシャイン、一緒に勉強するとしよう」

「はい、分かりました。デクス様、まずは何の勉強から始めますか?」


「当然だが魔法学だ、俺は君の魔法が無ければ死んでいた。だから、今度は魔法学をしっかり学んでおきたい」

「はい、では私もご一緒させていただきます。『障壁(バリア)』以外の魔法も覚えておきたいです」


「俺と君の授業はほとんど同じだ、そのように手配しておいた。マナーなどは男女で一部が違うが、俺と一緒に学べばいいだろう」

「そうですね、デクス様と一緒に勉強できるとは光栄なことでございます。それでは勉強を致しましょう、魔法学が最初とはとても楽しみです」


 それから毎日私はデクス様と一緒に授業を受けることになった、デクス様は天才だと思うことが私はしばしばあった。一度読んだ本を全て暗記してしまったり、同じ問題なら決して間違ることがなかったりした。私はデクス様のような天才ではなかったので、凡人である私には何度も予習と復習が必要だった。そんな私にデクス様は根気よく付き合ってくれた、王宮の教師はさすがに水準が高く授業は難しかったが学びがいもあった。


「さすがは王宮で働く教師です、私の家庭教師よりも詳しくより実践的な勉強ができます」

「そうか、俺の可愛いシャイン。君は一度で全てを覚えられないが、努力してそれを補っているのだな」


「私は天才ではありませんから、努力でそれを補うしかないのです。でも、勉強することを楽しく思います」

「そうやって努力し続ける君は本当に美しい、俺の可愛いシャイン。俺はもっと勉強して、君に教えられるくらいになろう」


「ふふっ、デクス様が私の教師になられるのですか。それは楽しそうな授業になりそうです、あまり私を甘やかさないでくださいませ」

「俺が君を甘やかしたいんだ、もちろん授業は真面目にやる。でも俺だけが君に全てを教えたい、君が他の男を見ているのはそれが教師でも面白くない」


 そうしてデクス様は驚異的な速さで全ての授業を学んでいった、そして本当に言った通りに私にはデクス様が授業をするようになった。私はデクス様のその天才的な頭脳に驚いた、そして私はデクス様の婚約者として恥ずかしくないように必死で勉強した。そんな日々が七年続いたらデクス様はもう王として必要な授業を全て終わらせていた、一方で凡人の私はまだまだ学ぶことが多くて、デクス様がそれを優しく教えてくださった。


「デクス様、とうとうフロンティア学園に私たちも入学ですね」

お読みいただき、ありがとうございました!!


最近の作者の制作意欲は、読者である皆さまにかかっています!!


ブクマ、評価、いいねをよろしくお願いいたします!!


★★★★★にしてくださると作者は泣いて喜びます!!


どうか、どうか、よろしくお願いいたします!!

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