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〜ひと時の夏を〜

キー

ガッシャーン


一瞬何が起こったのか分からなかった。

自分の体、いや彼の体が血だらけ。

トラックは横転。

どうして…どうして…

私はあの時の自分を恨んだ。

「先輩、先輩!!」

私の問いかけに答えることなく、体の体温がなくなっていった。

もう、彼と話すことは出来ないんだと私は確信した。



ミーンミーンミーン

セミが鳴く季節になった。

真由莉(まゆり)早く起きなさい。」

下から母の声がする。


ダッダッダッ

階段をおり、リビングに行った。

「おはよう、お母さん。」

「おはよう、真由莉。早く朝ごはん食べちゃいなさい。」

今日のご飯は、白米、味噌汁、焼き魚。

うちは毎朝和食だ。

「いただきます。」


チッチッチッ

時計の秒針が一定のリズムで動いている。


「早く食べちゃいなさい。もう8時よ。」

「えっ!!」


夏休み中でも部活がある。

部活と言ってもマネージャーをしているが。


「行ってきます」

そういって、家を出ていった。


私の名前は丸山真由莉(まるやままゆり)

今年の春から高校2年生になった。

部活と言う部活でもないが、男子バスケ部のマネージャーをしている。

今日は1年生の新人戦がある。

大会前に学校で練習してから本番に挑むつもりだ。


学校に着き、体育館の鍵を開けた。

「おはようございます」

用意をしている所に1人元気な挨拶をして入ってきた。

「おはよう、颯斗(はやと)くん。」

「おはようございます、真由莉先輩。」

彼は1年生の板花颯斗(いたはなはやと)くん。

「今日も早いね。」

「いえ、新人戦なのでちゃんと練習しておきたくて。」

彼はどんなことにも真剣に真面目に取り組んでいる。

誰よりも早く来て、練習をしていた。

「おはようございます」

「おはよう」

「おっはー」

次々に皆が集まってきた。

「おはよう、真由莉。」

「おはようございます、瀬那(せな)先輩。」

彼は3年生の吉田瀬那(よしだせな)先輩

そして、私の初恋の人だ。

初めて恋をした相手が先輩だとは思っていなかった。

今日は新人戦だが、3年生が応援に来てくれてるのだ。

「やっぱ、颯斗は練習熱心だな。」

「ですね。 私が鍵開けてすぐ来ましたよ。」

「じゃあ、もう15分も練習してるのか…凄いな…」


「先輩たちいちゃいちゃしないでくださいよー」

後輩の子達がからかっている。

「もう、ほら! 練習始めるよ」

私の合図でみんな集まった。

「初めての大会で緊張していると思うけど頑張っていこうね。」

「「「はい!」」」


練習は2時間行った。

瀬那先輩はステージ上から練習風景をずっと見ていた。


「これで練習おしまい。ありがとうございました」

「「「ありがとうございました」」」

「この後中央体育館で新人戦だから荷物まとめて13時集合ね。」

「「「はい!」」」


「真由莉凄いね。ちゃんとしたマネージャーしてる。」

「そんなことないですよ。瀬那先輩の代のマネージャーの方がしっかりしてたじゃないですか。」

「確かに真紀(まき)もしっかりしてたな。」

先輩の言う真紀というひとは、私の前の代でマネージャーをしてた人だ。

「あっ、やばい。そろそろ行かないと。」

「もうそんな時間か。俺も帰るわ。」

「分かりました。」

「頑張ってな、真由莉。」

「ありがとうございます。」

そういって、先輩は体育館を去っていった。

私は鍵を閉め、はや歩きで家に帰った。


家に着き、お昼を食べた。

ゆっくりとしていたら、時間がもう迫っていた。

「やばい、もう時間ないや。行ってきます!」

走って家を出ていった。


時間がなくて横を見ず横断歩道を歩いていた。

プップー

それで、真横から迫ってくるトラックに気づくことが出来なかった。

「真由莉!!!」

誰かが名前を呼んだ。

でも、もう手遅れだ。

キー

ガッシャーン

私はトラックに跳ねられた…と思っていたが、

何も痛みを感じない。

横を見たら瀬那先輩が血だらけで倒れていた。

「先輩、先輩!!」

私の問いかけに答えることは無かった。

ザワザワ

近くにいた大人達が騒いでいる。

「もしもし、もしもし!」

救急車を呼んでる人がいる。

が、もう手遅れだ。

瀬那先輩の体はもう冷めていた。


「もう…私なんかが…」

「ねぇ、お嬢さん?」

「もうダメなんだ。」

「真由莉ちゃん?」

誰かが私を呼んでいると思い、顔を上げた。

全身真っ白い服装をして、

まるで天使みたいだった。

「やっと気づいてくれた。こんにちは。」

「…グスン、なんですか。」

気づいたら涙が出ていた。

「あなたは大切な人を1人無くしたみたいですね。」

「…だから、なんだっていうんですか。」

声を震わせながら話している私を見て微笑んでいた。

「その、青年を生き返らせてあげましょうか。」

「えっ、ほんとに…!」

「タダでとは言ってませんよ。」

「それなりの代償は払います。なのでお願いします。」

「覚悟があるみたいね。

代償は彼と過ごした時間を全て消す。これでどうかしら。」

一瞬何を言われているのか理解できなかった。

「つまり…先輩との記憶が全部消えるってこと。」

「そう。まさにその通り。微かには残すつもりよ。」

覚悟はしていたが少し考えた。

いや、だいぶ考えた。

「どうする?」

「お願いします。先輩を生き返らせてください」

「よろしい。記憶は95%いただくよ」

そう言って私は謎の天使に記憶が取られた…

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