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怪獣は北へ向かう  作者: 口羽龍
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 あと4日になった。ジームが起きると、そこには藍子がいる。藍子は外を見つめている。こうしてこの心で見られるのもあと4日だ。だけど、私はそうならないために行かねば。


「あと4日なのね」


 藍子は振り向いた。そこにはジームがいる。ジームは藍子の手を握った。怪獣の手なのに、とても暖かい。どうしてだろう。


「ぐずぐず言ってたらいけないわよ。あと4日でダークドラゴンを倒すってのが目標だから」

「そうね」


 いつの間にか、ジームも外を見ている。外にはいつもの空が広がっている。だが、あとどれぐらい、それを見る事ができるんだろう。このままではダークドラゴンの闇に包まれてしまう。一刻も早く倒さないと。


「頑張りましょ」

「うん」


 その頃、鉱山の事務所の前を、仕事がオフの労働者が歩いている。彼らもアンディに対して反感を持っている。男の呼びかけで目が覚めて、アンディを倒そうと考えてたという。


「決行するぞ!」

「ああ」


 労働者は武器を構えている。もう恐れるものはない。アンディを倒して、それぞれの自由を取り戻すんだ。


 その頃、アンディは家でくつろいでいた。炭鉱の重労働者とは真逆の時間だ。労働している人が見たら、うらやましいと思うだろう。アンディはそれが普通だと思っているようだ。彼らの事など、全く考えていないようだ。


 アンディは外を見た。いつもの朝だ。今日もこうして朝を迎える事ができる。それだけでとても嬉しい。彼らは今、どうしているんだろう。仕事を頑張っているんだろうか?


 アンディはリビングのソファーに向かい、テレビをつけた。テレビではいつものようにニュースが流れている。こうして朝にニュースを見る。これもいつもの光景だ。


 その頃、アンディの家の周りには労働者が来ていた。集団で立ち向かえば勝てるかもしれない。ダメだとしても、それで死ぬのなら惜しみない。


 ハンカチを落とす合図で、労働者は一気にアンディの家に侵入した。その事を知らないアンディは家でくつろいでいる。


「アンディを倒せ!」


 その声で、アンディは驚いた。一体、どうなっているんだろう。今までこんな事がなかったのに。今日もいつもの朝が始まると思っていたのに。


「な、何だ?」


 アンディは戸惑っている。まさか、襲い掛かってくるとは。早く武器を持って立ち向かわないと。


 だが、間もなくして、労働者たちが家に入ってきた。労働者は一直線にリビングに向かっている。アンディがそこにいるのを知っているかのように。


 労働者はリビングでアンディを見つけると、一目散にアンディの元にやって来た。アンディは驚いている。自分は何をしたんだろう。


「やめろ! おいやめろ!」


 その時、目の前に黒いドラゴンの影が現れた。ダークドラゴンだ。アンディはダークドラゴンに操られ、重労働をさせていた。本当はこんなにしたくないのに。


「お前ら何をやっている! 働け! 働け! そして死んで我にその命を捧げるのだ!」


 それを見て、労働者は腰を抜かした。どうして目の前にドラゴンの影があるんだろう。あまりにも恐ろしい。勝てそうにない。逃げなければ。


「何だこのドラゴンは」

「逃げろ! 逃げろ!」


 と、その先頭にいる男は拳を握り締め、ダークドラゴンを見ている。その男は、ダークドラゴンの事を知っているようだ。


「こ、こいつがダークドラゴンだ!」

「こいつが、ダークドラゴンなのか?」


 と、そこに藍子がやって来た。藍子は労働者を励ましているようだ。


「逃げないで! あれは幻! アンディを倒して!」


 その時、アンディが泣きながら何かを言おうとしている。労働者は驚いた。あれだけ恐ろしかったアンディとは別人のようだ。まさか、ダークドラゴンに操られていたんだろうか?


「も・・・、もうやめてくれ・・・」


 それを見て、労働者は近づいた。本当にアンディだろうか? 少し疑わしい。だけど、聞いてみよう。


「アンディさん?」

「元の心を取り戻したのか?」


 これがアンディの本当の心なのか? 労働者の中には首をかしげている人もいる。


「ああ。俺は強くなりたくて、もっと高い権力が欲しくて、ダークドラゴンに操られてしまった。そして、彼らに過度な重労働をさせてしまった。本当にごめん・・・」


 と、ダークドラゴンがアンディに指示を出している。アンディは逃げようとしている。だが、ダークドラゴンは追いかけてくる。自分との契約だ! 守れ!


「何を言っている? さぁ、奴をもっと働かせろ! そして、魂を捧げよ」

「や、やめろ!」


 その時、労働者が前に出て、アンディをかばっている。今まで苦しめてきたのに、どうして守ろうとするんだろう。本当の心に気付いているんだろうか?


「アンディさん!」

「お、俺を殺してくれ・・・。そうすれば、もう操られない」


 アンディは死にたいと思っているようだ。もう操られたくない。これ以上、労働者を苦しめるのは御免だ。


「ほ、本当にいいんですか?」

「もういいんだ。私を殺してくれ」


 だが、ダークドラゴンは聞き耳を持たないかのように命令しようとしている。だが、労働者は全く恐れようとしない。


「何をしている? 早く働かせろ!」


 それを見て、アンディは労働者の持っていたナイフを取り、自分の腹に突き刺した。ナイフを持っていた労働者は驚いた。まさか、自ら腹を刺すとは。助かるには、これしかないんだろうか?


「うっ・・・」

「ごめん・・・、アンディさん・・・」


 それを見て、藍子は崩れ落ちた。どうして人が犠牲にならなければならないんだろうか? もっと平和的な解決があるんじゃないかと考えた。だが、難しくて答えが見つからない。


「どうしてこんな事をしなければならないんだろう」


 と、ダークドラゴンが藍子に気付いた。横にいたジームも反応した。


「お前が藍子だな。俺はダークドラゴン。この世界の悪をつかさどる神だ。お前の事はよく知っている。だが、俺を倒すと世界は崩壊する。それでもいいのだな?」

「崩壊する?」


 藍子は驚いた。世界が救われるんじゃなくて、崩壊するって? あれは嘘だったの? 崩壊しないためには、私はこのまま心まで怪獣になった方がいいのでは?


「そんな事ない! あるべき姿に戻るの!」


 藍子は横を向いた。ジームが叫んでいる。世界があるべき姿になるのなら、いいじゃないか? どうしてそれがダメなんだ。おかしいじゃないか。


「そんな・・・」

「信じちゃダメ! 悪い奴なんだから!」


 と、労働者がダークドラゴンに飛び掛かった。アンディを操っていた奴だ。自分の手で倒そうとしているようだ。


「この野郎!」


 だが、殴ろうとしたその時、ダークドラゴンは煙のように消えた。どうやら幻のようだ。


「き、消えた!」

「幻なんだ・・・」


 ジームは冷静な表情だ。今までそんな事はよく見ている。これもダークドラゴンが見せる幻なんだ。


 その時、アンディが苦しまみれにやって来た。アンディは腹から血を流している。とても苦しそうだ。


「も、申し訳なかった。俺はダークドラゴンに利用されて、心を失ってしまった。まさか、ダークドラゴンが両親を殺したなんて。これを持っていってくれ。そして、この世界を元に戻してくれ・・・」


 アンディは黄色に光る石、心のかけらをもらった。これもダークドラゴンの元に行くための石だろう。


 だが、程なくしてアンディが倒れた。それを見た労働者の多くは涙した。今まで暴力を振るってきたのに。


「あ、ありがとうございます!」


 すると、アンディはかすかに笑みを浮かべた。だが、すぐに体が冷たくなり始めた。


「藍子さん、頑張ってください!」


 労働者は励ましている。これからこの人が世界を平和に導いてくれるんだ。そして、新しい世界に導いてくれるんだ。


「みんな、ありがとうございます!」


 藍子は労働者に笑顔で答えた。みんな、嬉しそうな表情だ。これからは無理な労働はせずに、しっかりと仕事をしよう。


「じゃあ、行ってくるね!」


 藍子は手を振って、彼らに別れを告げた。まだまだ北に行かないと。期限は着々と迫っている。早く行かねば。


「行ってらっしゃい。必ず世界を救うって信じてるよ!」

「ありがとう! 頑張って来るね!」


 藍子とジームはリゼの地を後にした。その先には何が待っているんだろう。何が待っていても、北に向かわねば。そして、ダークドラゴンに会い、倒さねば。


 しばらく歩いていると、再び峠道に差し掛かった。上り坂になり、徐々に街並みが遠ざかっていく。リゼは元の平和な場所に戻るだろう。だけど、心残りなのはアンディが死んでしまった事だ。本当にいい事なんだろうか? 死んでよかったんだろうか?


「アンディさん、本当は優しい人だったんだね」


 藍子は感心した。本当はここまで労働させたくなかったんだろうな。だけど、ダークドラゴンに力を貸して、こうなってしまったんだ。ダークドラゴンに力を貸さなければ、こんな事にならなかったのに。


「そうだったみたいだね。どうしてこんな事になるんだろう」

「ダークドラゴンが悪いんだ」


 ジームは拳を握り締めた。娘とはいえ、とても許せない。死んでしまえばいいのに。


「許せない!」


 藍子も拳を握り締めた。自分の手で倒して、平和な世界に戻さなければ。


「どうしてアンディさんが死んでしまわなければならないんだろう」

「そうね。アンディさんは全く悪くないのに」


 だが、アンディはもう帰ってこない。だけど、心の中では生き続ける。きっと天国から見守っているはずだ。アンディのためにも頑張らねば。

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