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怪獣は北へ向かう  作者: 口羽龍
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 次の日、人間の心を保てるまであと2日。いよいよ運命の日が近づいてきた。だが、そんな事を考えてはならない。ダークドラゴンを倒すのが目的だ。必ず倒して、平和を取り戻すんだ。


「あと2日だね」


 2人は海を見ている。その向こうには死の海が広がっている。そしてその先には、ダークキャッスルに行けるソエの地がある。ダークドラゴンのいる場所まで近づいてきた。それを実感する瞬間だ。


 2人はある決意をした。あのおじさんの目を盗んで、何が何でもソエの地に向かうんだ。止めても全く聞き入れない。


「早く行きましょ」

「うん」


 2人は海に近づいた。その先にある死の海は見た目は普通の海だ。どこが死の海なんだろう。


「もう決めた!強行突破する!」

「それしかないわね」


 藍子は辺りを見渡した。辺りには誰もいない。これなら人の目を盗んでソエの地に行ける。


「誰もいないわね」

「行こう!」


 藍子は港に停泊していた漁船を使い、ソエの地に向かう事にした。この辺りに所有者らしき人はいない。こっそり盗んで、ソエの地に向かおう。


「うん!」


 だがその時、あの老人がやって来た。まるで2人が来るのを知っていたかのようだ。あの老人は厳しい表情だ。いかにも2人を邪魔しようとしているようだ。


「ダメじゃ! 行ってはならぬ!」


 だが、2人は立ち止まろうとしない。これは自分に課せられた使命なんだ。ソエの地に行かなければならないんだ。


「でも行かねば!」

「いかん!」


 それでも老人は行くのを認めようとしない。きっと彼もダークドラゴンが操っているんだろう。わからなくても、そんな気がする。遺文が行くのを邪魔する奴は、ダークドラゴンが操っている場合が多い。


「どうしてダメなんだ! 言え!」


 藍子は強い口調だ。今までの優しい表情から一変、怪獣らしい厳しい顔になった。ジームはそんな藍子の様子をじっと見ている。


 その時、ジームは思った。京子もこのように怒られたんだろうか? きっと地獄だっただろうな。


「そ、それは・・・」


 老人はもごもごしている。何か隠し事をしているようだ。ひょっとして、ダークドラゴンからの願いだろうか?


「ダークドラゴンだろう!」

「違う! 絶対に違う!」


 だが、老人は違うと言う。老人は真冬の天気だというのに、汗をかいている。明らかに嘘のような雰囲気だ。


「わかってるんだ! それまで私たちを邪魔してきたのはみんなダークドラゴンに操られた人々だ!」

「違う! 絶対に違う!」


 老人は首を振った。だが、ますます汗をかき始めた。まるで滝のような汗だ。きっと噓をついているんだ。見るにわかる。


「信じられない! 誰も信じられない!」


 突然、黒い影が現れた。ダークドラゴンだ。やはり老人はダークドラゴンに操られていたのか。


「・・・、行かせるな・・・、絶対に・・・、行かせるな・・・」

「やはりこいつか!」


 2人は離そうとする。だが、老人は強くて、なかなか海に行けない。だが、行かなければこの世界の未来はない。


「離せ! 離せ!」

「この野郎!」


 だが突然、老人に向かってサメが高くジャンプしてきた。老人をかみ砕こうというんだろうか?


「うわっ・・・」


 右足を食われた老人はその場にうずくまった。あまりにも痛かったんだろう。


「さ、サメ?」

「それは本当だったんだ・・・」


 だが、藍子は不思議な事に気が付いた。そのサメは藍子を優しい目で見ている。そして、海からは何尾ものサメが顔を出している。彼らはとても優しそうな眼をしていて襲おうとしないようだ。


「あれっ、だけど、このサメ、全く人を襲わない」

「本当だ。どうしてだろう」


 その時、1尾のサメが話しかけてきた。サメは可愛い声だ。とても凶暴なサメとは思えない。


「お前が、藍子なのか?」

「そ、そうですけど」


 藍子は戸惑っている。食われる事はないんだろうか? だが、老人には噛みついたものの、そのサメは2人を襲おうとしないようだ。


「話は聞いている。早く行け!」


 サメは強い口調だ。何か、急いでいるかのようだ。藍子が北に行かなければならないのを知っているようだ。


「でもどうやって行けば・・・」

「俺が乗せてってやる!」


 藍子はびっくりした。まさか、サメの背中に乗って海を横断するとは。考えた事がないけど、これは貴重な体験だろう。


「ほ、本当ですか?」

「ああ。礼はいらん。あんた、この世界を救おうとしてるんだろ?」


 藍子は笑みを浮かべた。このサメは私が世界を救おうとしているのを知っているようだ。まさか、サメにも知られているとは。


「うん」


 その時、足をかまれた老人がやって来た。老人は足がよぼよぼだ。そして、痛そうな表情をしている。


「頑張れよ」


 2人はサメの背中に乗った。老人はじっとその様子を見ている。さっきの行動から見て、ダークドラゴンの洗脳から解けたんだろう。


「わかった。必ず世界を救ってみせるわ!」

「まかしたぞ!」


 老人は少し笑みを浮かべた。この老人のためにも、必ず世界を救わなければ。きっとどこかで見守っているはずだ。


「あ、ありがとうございます!」


 2人はサメの背中に乗って、ツムの地を後にした。目の前には海が広がる。目的地のソエの地はまだ見えない。だが、着々と近づいているはずだ。


 サメはゆっくりと海を進んでいる。ここからソエの地までは半日はかかる。これほど広い海なのだ。


 次第にツムの地が見えなくなった。2人はサメの背中に乗って、ゆっくりと進んでいた。この海はどこまで続くんだろう。死の海はとても静かだ。船が全く見えない。


 進んでいくうちに、夜になった。夜の空はとても美しい。だけど明日は、どんな夜を迎えるんだろう。そしてあさっては、どんな朝を迎えるんだろう。それは全くわからない。それは自分で作るもの。私は運命を背負っているのだから。




 翌日、いよいよ運命の日だ。目を覚ますと、目の前に巨大な大陸が広がっている。ソエの地だ。ここから向かうダークキャッスルにダークドラゴンがいるんだ。


「あれがソエの地。ここからダークドラゴンの所に行けるんだね」

「いよいよここに来たんだね」


 ジームはダークドラゴンの事を思い出した。あんなの、父親じゃない。ただの悪魔だ。早く死んでほしい。


「行こう!」

「うん!」


 藍子は空を見上げた。そこには、天空に浮かぶ黒い城がある。それがダークキャッスルだろうか?


「あれがダークドラゴンの城・・・」


 それを見て、ジームはうなずいた。確かにあれはダークキャッスルだ。そこに父、ダークドラゴンがいる。


「絶対に世界を救ってやる!」

「うん!」


 2人は決意を新たに、ソエの地に降り立とうとしている。必ずこの世界を救って、元の姿に戻るんだ。


 だが、藍子は疑問に思っていた。この世界を救ったら、この世界はどうなるんだろう。ここは明らかに今の世界とはまた違う所。この世界はなくなり、あるべき姿に戻るんだろうか?

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