1.道筋を辿って
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1.道筋を辿って
夢を見ていた。懐かしい夢を。
家の庭で父に貰った木刀を不器用に振り回し、それに合わせて父はそれを軽く当て受け流す。
しばらく父とのたたかいを楽しんだ後、遊び疲れた僕は木陰に座り、今度は剣術の訓練として素振りをする父を眺める。
その大きな背中に大粒の汗を流すちちは眩しく、かっこいい。
そんな、幼い日の儚い夢だ。
その頃から、憧れの父の背中を追い続けている。それだけは、今も変わらずに心にあり続けている。
寝ぼけ眼を擦りながら水浴びをして身だしなみを整えた後、この家で食べる最後の食事を口にした。
それは手作りの不細工な形をした硬いパンと山菜を煮出しただけのスープだ。
「ごちそうさま。」
1人だけの家で僕の声だけがこだました。
食事を済ませてを合わせ家の中を見渡す。
今までと変わらないこの家に、何処と無く物寂しさを感じる。
それは新たな門出を意味しているのだ。
家の玄関を開け外に出る。
ここはユーク村。
年齢層は幅広く、発展はしていないが賑やかな村だ。
しかし、土地は貧しく野菜はあまりよく育たない。そのせいか、野鳥や猪などもあまり多くなく、冬場の蓄えはほとんど無い。さらには、この村に訪れる商人は一人で年に一度。我々が買えるものも多くはなく多少味をマシにできる塩を少し買うことがこの村に住む者にとっては贅沢品である程だ。
そのせいで不作の年になると、餓死する人が出ても珍しくない。
そんなとても貧しい村でもある。
しかし、貧しい中この村で生きる人々は皆優しく、助け合うことが出来る、あたたかい村なのだ。
そのような村で育った若者はこの村を良くしようと街へ出稼ぎに出る。
出稼ぎと言えば聞こえはいいが、実際は口減しも兼ねている。
しかし、それを嫌がるものは少ないとういことも、また事実なのである。
その感情が諦観にせよ、奉仕の心にせよだ。
僕は出立のまえにこの村の村長の家に顔を出した。
「はーい。」
ノックをすると奥から老婦の声が聞こえる。
しばらくすると扉が開き、老夫婦が僕を出迎えた。
僕は二人に軽く挨拶を交わす。
「こんにちは。イルおばさん。オルおじさん。」
「あら、ルーカスじゃない。どうかしたの?」
「婆さん忘れたか?今日はルー坊が村を出る日じゃろうて。それをワシらに伝えに来たんじゃろ。」
「はい。今日村を立つので。最後に挨拶をと思って。今までお世話になりました。」
「あらあら、もうそんな日に…。嫌ね、歳をとると。日が経つのが早くなるわ。」
「……せっかく顔を出したんだ。どうだルー坊。飯でも食ってくか?」
食事の誘いをもらったが、残念なことに朝食は済ませてしまっていた。心残りにはなるが、帰省の時の楽しみとして取っておくこととしよう。
「せっかくのお誘い、ありがたいのですがもう、朝食は済ませてしまっているので今日はこれで…。」
「そうか…残念じゃの。…ちょっと待ってくれんか。婆さん、ルー坊に弁当持たせてやろう。」
「ええ、いいですね、そうしましょうか。どうぞ上がって?ルーカスちょっと待っててね。」
イルおばさんは台所でサンドウィッチを作っていて、オルおじさんは、棚から箱を取り出している。
「…本当に何から何まで…ありがとうございます。」
「いいのよルーカス。20歳になったと言っても私たちからしたら貴方はまだまだ子供なの。甘えていいのよ。」
「…うん。ありがとう。イルおばさん。」
イルおばさんと話しているとおるお爺さんは箱から水筒と小さなポーチを手に取り僕の方に振り向いて、それらを僕に手渡した。
「ルー坊。。わしらからの餞別じゃ。」
「…これは?」
それらは魔導具でどちらも核となる魔結晶がとても大きい。僕がみても相当高価なものであることが明らかだ。
「水筒の方は魔力を水に変換してくれる魔導水筒。そんで、このベルトポーチは拡張のルーンが施された魔導収納じゃな。どちらも、魔力を通すだけで簡単に使えるいい代物じゃ。これから#塔__・__#に向かうなら必需品と言えるじゃろう。持っていけ。」
僕は早速性能を試すべく、装備品をポーチに移してみる。すると今持ち合わせていた物は全て入ってしまったため急遽、魔導関連の本などを自宅にとりに行きポーチに詰める。あらかた必要なものを入れた後、10冊ほど詰めてもまだまだはいりそうだったのでどうやら、少なくともバック5つ分以上の収納力はあるようだ。
水筒の方も少量の魔力から水を生成することができる。
やはり、どちらもとても有用で高価な魔導具であった。
母が他界して僕が独り身になってから、二人は僕を孫のように可愛がってくれていた。この二人のことだからおそらくこの日が来ることを見越して貯金を切り崩して買ってくれていたのだろう。本当にこの二人には頭が上がらない。
「こんなに高価なもの…本当にありがとうございます。どうお礼をしたらいいのか…。大切に使わさせてもらいます。」
「気にすることはねぇ。わしらがしたくてしてるんじゃ。婆さんが言った通りじゃ、お前はワシらにとって孫のようなもんなのじゃ。このくらい甘やかさせてくれ。それとこれも。渡す時が来たようじゃな。」
そういって同じ箱の中から今度はネックレスを取り出す。それは全身が黒い金属で作られていて古代ルーン文字が彫られたプレートがペンダントトップとしてあしらわれている。
古代ルーンとは魔導具で使われているルーン文字の古い文字形態の事であり、一部解読は進んでいるものの、ほとんどは読むこともできず、魔導が発動することもほとんどないのだ。
自身の能力にもルーン文字は関係あるため、ある程度の知識は持っているつもりだが、この古代ルーン文字は大まかな分類すらもわからない、未知の構成としかいえないものだ。
「このプレート。なんて書いてあるんでしょうね?」
「さぁな、わしにはわからん。なんせこれはお前の父親の形見でな。お前が塔に向かう時に渡せとしか言われておらんのじゃ。」
「父さんの…形見…。」
生前、父は出かける前に鎧を外した姿でかがみ込み、僕に目線を合わせ、
『言ってくる。』
そう言い、頭を撫でハグをしてくれていた。このネックレスはその時によくみていたものそのものだった。
「…全く、血は争えないとは正にこの事じゃな。お前の親父…。ルークもルー坊くれぇの歳に塔を目指して旅に出ていったもんじゃ。たまにはオーキスとルークに花を手向けるついでに顔を出せ。いつでも待っておる。」
続けてオルおじさんはこう言う。
「村の警備も気にするでない。確かにルー坊が抜けた穴はでかいのは確かじゃわい。…じゃがな、ルー坊。別にそれくらいで壊滅するほどこの村はやわじゃねぇから安心せぇ、お前の帰る場所はそう簡単に奪わせん。じゃからルー坊。お前がやりたいをやってこい。それこそが、ワシらの幸せなんじゃよ。」
「そうよ。ルーカス。私たちの心配ばかりしないでね。それでも、疲れたり、悲しいことがあったりした時はいつでも私たちを頼るのよ?はい。これお弁当。頑張って行ってくるのよ。」
そう言ってイルおばあさんは風呂敷に包んだお弁当と鉄製のボトルを持たせてくれた。
「…はい!行ってきます!イルおばさん、オルおじさん!お元気で!」
僕は村長宅を後にし、出迎えてくれた二人に二人に手を振る。そして僕は、父さんと同じ道を歩み出す。天塔探査騎士としての道を。
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作者の一言
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