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1話10分で読める 短編小説   作者: じょいなす
1/1

Happy wedding


「とても綺麗だね。」

「ありがとう!ねぇ亮もあっち行って写真撮ろうよ!」




そう言いながら彼の腕を強引に掴み、強引に輪の中心へと連れて戻そうとする。

上機嫌になっているのか、普段よりもかなり強めの力で腕を引っ張っている。

花嫁に負けず劣らずの煌びやかなドレスに身を包んだそんな彼女の名前は瑠璃。




バイト先で知り合った亮と瑠璃が交際を始めたのは丁度一年半前。




今日は共通の友人でである隆の結婚式に参加していた。

披露宴終わりの二次会では飲めや歌えやの大騒ぎだったので、少しお酒に弱い亮は酔い覚ましも兼ねて店の外で一服していたところ、正反対に大の酒豪である彼女に運悪く見つかってしまったのだった。




亮 「抜け出してくるなんて珍しいね。いつもは一人でもガバガバ飲んでるのに。」

瑠璃「え?あ~!なんか今日はちょっとね!二人の綺麗な姿見てたら、飲んでるよりも亮と喋りたくなって出てきちゃった!」

亮 「ふふっ。」

瑠璃「あ~!なんでそこで笑うの!?」


亮 「ごめんごめん。いつもツンツンしてる瑠璃からそんな言葉が出てくるなんてね。」

瑠璃「たまにはいいよね?」

亮 「まぁね。」




亮 「それにしても。隆、結婚かぁ。結婚ねぇ。」




とボソッとつぶやいたその瞬間




瑠璃「おっ!?なになに?結婚?その先をこの私めが聞いて進ぜよう~!!!」

亮 「はいはいわかったわかった。ありがたき幸せです~~。」




すかさず反応する彼女に対し、適当にあしらう亮

こんなやり取りが出来るこの瞬間がとても幸せだと感じていた。




亮 「ほら、集合写真撮ったし俺らも帰ろ?」

瑠璃「あっほんとだ~。じゃあちょっと挨拶して来るね。」




二人は久しぶりに再会した友人に先に帰る旨を伝えに行った際、今日の主役の隆には"次は亮の番だ"と揶揄われた。




いつかは自分も、そう思いながら帰路に就いた。










瑠璃「ただいまー!あ~・・・・式は楽しかったけど、家に着いた瞬間一気に疲れが押し寄せてきた。」

亮 「確かに、一気に来るね。瑠璃、先に風呂入っておいでよ。俺が色々片付けしとくから。」

瑠璃「ホント?ごめんねありがとう!じゃあちょっとお先に失礼しまーす!」




そう言って足早に向かっていった瑠璃を後目に、披露宴・二次会で使った衣装や、その他友人から弄りを含めて渡されたブーケ等を、文字通り押し入れに押し入れようとしていた。




しかし、




 ガンッ!




亮 「あっやべっ」




 ガシャーン!!




一度に大量の荷物を運んでいたせいで足元の段ボールに気づかず、思いっきり脛をぶつけた上、押し入れに倒れこんでしまった。




亮 「いってぇ。あ~もう。横着するんじゃなかったわ。これはだるいなぁ。」




辺りに飛散した衣服を拾い集めようとした自分だったが、もう一度振り返りその押し入れの壁を見た。

















亮 「それにしても・・・なんだ?この壁・・・しかも・・・やけに響くな。」


















何時からか荷物で隠れている部分なので気が付かなかったが、明らかに押し入れの間取りがおかしい。

押し入れ内部の壁が明らかに左右対称ではない。


不審に思った自分は、その壁を数回小突いてみた。


















コンッ!コンッ




















亮 「これ・・・壁じゃない!ベニヤ板だ・・・。」










それは元々あった壁ではなく、押し入れの内壁にピッタリ合うように切られ、壁と同色に塗装されたベニヤ板だった。










亮 「なんだ・・・?これ・・・。」


すぐに外そうとするも、そこで伸ばした腕が止まる













なぜか嫌な予感がした。






何かこれだという確信がある訳ではないが、とても嫌な予感がした。






だが亮には、このベニヤ板を外さない選択肢は無かった。




















ガコンッ

















恐る恐るベニヤ板を外す。



そしてその明らかに人為的に作られた不自然な空間にあったのは・・・、



























 

 

 



亮 「嗚呼・・・。瑠璃・・・。」





















そこにはぐったりと壁にもたれ掛かり、もはや動くことの無くなった瑠璃がいた。

目の前に広がるあまりの衝撃に、後ろから近付く人物に気付く余裕はなかった。





















グサッ!!!!!ザクッ!!!!ザクッ!!!!!


亮 「アアアアッ!!!ガッ・・・!アッ・・・」


















瑠璃「ふ~。あ~あ。見つかっちゃった。せっかく隠してたのになぁ。」

亮 「瑠璃・・・?いや・・・・もしかして・・・桜ちゃん・・・?」





桜 「そう。覚えてるかな?一卵性双生児だからわからなかったかな?せっかくお姉ちゃんに代わって亮君と一緒になれると思ってたのに。」




そういって包丁を放り捨てた彼女は、瑠璃の双子の妹桜だった。

以前瑠璃から双子の妹がいる事は聞いていた。


瑠璃は妹の事が大好きだと言っていた。なのに












亮 「どうして・・・こんな事を・・・」









桜 「お姉ちゃん。昔から私の好きなものを全部奪っていくの。初恋の人、中学の先輩、高校の同級生。」



桜 「そして貴方。覚えていないかもだけど、1年前駅前で変な男に絡まれていた私を救ってくれた。」


亮 「あ・・・あの・・・時の・・・。」



















それは彼女の一目惚れだった。

しかし、ある日姉と亮がデートをしているところを目撃してしまったようだ。



そして、彼女は姉を恨んでいた。

そして、彼女は狂ってしまった。














桜 「私の人生において、邪魔だったの。そしてバレる前にどこかへ棄てる予定だった。」


桜 「バレちゃったらしょうがないね。ごめんね亮君。でもこれで、ずっと一緒に居られるね。」














亮 「そうか・・・」





















あの時、いつもより力が強かったのは


あの時、いつもより酒を飲まなかったのは


あの時、いつもよりベタベタで甘々だったのは























亮 「桜ちゃん・・・だったからか・・・」























薄れゆく意識の中で、後悔や怒り、悲しみが錯綜する。


亮 「ああ・・・瑠璃・・・いつから・・・ごめん・・・俺・・・が・・・」



















 ドサッ



















桜 「あはははははははははははははははははははは」




















残された彼女の笑い声がこだまする。











それもそのはず。














彼女が待ち望んだ"姉のいない世界"がここから始まる。






























~ Later ~







桜 「今日は誕生日だね!なにしてあげようか?」



桜 「そうだ!今日結婚式用のタキシード買ってきたんだよ!着せてあげるね!」



桜 「おー!すごい似合ってる!」






そうして彼女は骸になった彼を抱きしめた。














桜 「()()()()()()()。」











桜 「私、初めて言われて、嬉しかったよ。」



fin

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