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第91話:学院祭ときどきイビルパニック08


 学院祭二日目。


「あう……」


 ぼんやりとホテルの朝食を取るアイス。


 ノース神国の料理だが、質は一級。


 眠気さえ邪魔してなければ舌鼓を打っていただろう。


 生憎とコーヒーで胃まで流し込まれるという悲惨な末路を辿ったが。


 とはいえアイスを枢機卿。


 ホテルマン程度が具申することも出来ない立場ではある。


「とりあえず今日の予定は?」


 レイヴが問うてくる。


「特になし」


「武闘大会くらいかな?」


「そんなのもあったな」


「じゃ、それまではデートだね」


「構わんがな」


 アイスはそう言った。


 そう云うわけでそう云うことになった。


 活気に満ちあふれる学院街を歩き回って買い食いしたり催し物を楽しんだり。


 特に目を惹いたのは街角サーカスだった。


 芸達者な道化も学院祭には現れる。


 おひねりを投げた後、


「面白かったね」


 とレイヴは云った。


 場所は喫茶店。


 アイスはコーヒーを。


 レイヴは紅茶を。


 それぞれ頼んで味わっている。


「なら教皇の賞をくれてやれば?」


「それねぇ……」


 レイヴとしても困惑はするらしい。


 珍しいことではある。


「一応候補は絞ってるんだけど……」


「何か問題が?」


「色々と」


 はぐらかして逃げを打つ。


 アイスは、


「ふぅん?」


 と皮肉るのみで追求はしなかった。


 レイヴはケーキを注文して食べる。


 ガチガチのウェイトレスがひたすら恐縮しながらケーキを差し出す様はアイスの苦笑を呼んだ。


「別段尊敬できる類の人間じゃないんだがな」


 思念でそう言う。


「ま、馬鹿馬鹿しいのは同意じゃな」


 鬼一もアイスに同意した。


「これでも教皇ですから」


「というか恐慌だな」


「なにおう!」


「何か不満が?」


「不満だらけだよ」


 ケーキをサクリ。


「私は教皇だよ?」


「有り難がる人間こそ良い面の皮だ」


「アインは辛辣だね」


「いやぁ」


「褒めてない」


「知ってるが」


「むぅ」


 これもいつものやりとり。


 スッとコーヒーを飲む。


「それじゃ俺はこの辺で」


「武闘大会?」


「ああ」


「応援してるよ」


「別に必要は無いがな」


「またそゆこと言う……」


「応援されて勝てるなら戦争に応援団は必須だろ?」


「戦争に介入したことないからなぁ……」


「まぁお前はそうだろうな」


「アイスは?」


「代行師だろ?」


「むぅ」


 つまり汚れ役だとレイヴ教皇に事実を突きつけたのだ。


「アイスの意地悪」


「捻くれてるのは否定しないがお前に言えたことか」


「私はこんなにもアイスが好きなのに」


「ご愁傷様」


「一緒にお風呂入ったじゃん」


「リリィとも入ってるし」


「そなの!?」


 天変地異かと驚くレイヴだが、


「今更だな」


 アイスは平然としていた。


 コーヒーを飲む。


「さて」


 とアイス。


「そろそろ行きますかね」


「教会?」


「まぁ一番無難ではあるな」


 というより、


「アイス枢機卿に代わって審問官の護衛が必要になる」


 という事情が背景にあるのだが。


「たまには一人で気楽に行きたいなぁ」


「スタートゲイザーが何を今更」


「そーだけどー」


 ムスッとしてレイヴは紅茶を飲んだ。


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