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第9話:国家共有魔術学院02


 入学して最初に決めるべきは寮部屋だ。


 魔術師が希少とは云え、入学してくる生徒は基本的に貴族のお子さん。


 そのため寮も豪華絢爛だった。


 学院側が用意したアインとリリィの部屋も最上級のホテルに引けをとらない雅さである。


 元々貴族が魔術師と相成るため、数の少なさも相まって寮部屋は豪華にしても問題ない。


 使用人も連れてこれるがアインにとってはリリィがそうであった。


 一年過ごしてアインが分かったのはリリィが家事万能であることだ。


 気の利く奥様と云った印象。


 それを口にすると、


「私はアイン様の愛人ですので」


 とリリィは苦笑した。


「アイン様の子を産むのは必定としても、アイン様自身は私に囚われず自由な恋愛をなさって結構です」


 健気な言葉だ。


「お前はそれで良いのか?」


 とアインが問うと、


「ええ」


 曇りの無い碧眼でアインを見つめて微笑するリリィだった。


 ともあれ寮部屋である。


「夕餉はどうしましょう?」


 外で食べるか家で食べるかを問うているのだろう。


「んじゃリリィに任せる」


 サクリと答えるアイン。


「ではパスタなどは……」


「好物」


「ではその通りに」


 そしてリリィはアインに紅茶を差し出して市場へと材料調達に向かった。


「熱心だなぁ」


 苦笑するアイン。


「いい子じゃないか」


 鬼一が皮肉る。


「感性が残念だがな」


「きさんなら女子なぞ向こうからやってこよう」


「まぁな」


 一応自身の容姿については理解しているらしかった。


「服装のセンスは残念じゃがな」


「いいんだよ。これはこれで」


 そんなアインの服装は黒衣だ。


 異世界では学ランと呼ばれている服装である。


 こちらの世界では黒衣礼服と呼ばれている。


 黒髪黒眼に黒衣を纏う。


 どこまでも黒い男だった。


「見た目が重たいぞ?」


「ま、別に容姿に不満は無いしな」


「嫌な奴じゃ」


「師匠がソレを言うか?」


「かかっ。然りじゃ」


 ケラケラと面白そうに笑う。


 それがアインには面白くない。


「一応師匠にも期待はしているんだが」


「面倒くさい」


「だろうな」


 フランクな関係の二人であった。


「別段決闘でも受けなければ魔術を使う機会は少ないじゃろ」


「そーだがなー」


 面倒が嫌いなアインには喜ばしい話題でも無い。


「明日から講義じゃろう?」


「んだな」


 それは間違いない。


「であれば予習くらいすれば良い」


「師匠がソレを言うか?」


「なはは」


 呵々大笑と鬼一は笑った。


「てい」


 椅子に座ってリリィの淹れてくれた紅茶を飲みながら、椅子に立てかけていた鬼一を突いて倒す。


「暴力反対」


「じゃかあしい」


 ふんぞり返って紅茶を飲む。


「とりあえずじゃ」


 倒されたままの和刀……鬼一は云う。


「目立たず騒がずを基準にすれば良い」


「しかし目立たんと宮廷魔術師にはなれんぞ?」


「その辺の塩梅はアインの裁量次第じゃろう?」


「面白くない話だ」


「何。功績を挙げれば一瞬じゃ」


「魔術を使えない不肖この身でか?」


「分かっていて惚けるのはきさんの悪い癖じゃな」


「…………」


 ムスッとして紅茶を飲む。


 そうには違いないのだ。


 アインと鬼一がしばし議論を重ねて時間を潰すと、


「ただいま帰りました」


 リリィが帰ってきた。


 手には材料。


「何のパスタ?」


「ペペロンチーノで良いですか?」


「大好物」


「あは」


 朗らかに笑うリリィだった。


 こういうところは愛らしい。


 少なくともアインにとっては。


「咎人め」


 鬼一が茶々を入れる。


「黙らっしゃい」


 アインがすました顔で紅茶を飲んだ。


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