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第87話:学院祭ときどきイビルパニック04


「格好良かったね!」


 レイヴがケラケラ笑った。


「あんまり嬉しくは無いがな」


 アイスが渋い顔でレイヴと肩を並べて歩いていた。


 こと事情が無い限りにおいて、アイスはレイヴの護衛に回される。


「いらんだろ」


 とはアイスの言だが、大人の事情である。


「でもむやみに禁術は使っちゃ駄目だよ?」


「この際そうも云ってられなかっただろうが」


「そうだけど……」


 アインの二回戦の時間はもう少し先だ。


 そのためアイスはレイヴと一緒に学院街を回っていた。


「たまには羽を伸ばすのもいい感じだね」


「年中フリーダムのお前が言うな」


「なによう」


 ジト目になるレイヴ。


「なんなら教皇になってみる?」


「めんどい」


「つまりそういうことだよ」


「むぅ」


 レイヴが一本取った形だ。


「あ、そこの漬け物ください」


 レイヴは祭で盛り上がっている学院街の門前市……そのとある店の漬け物に惹かれたらしい。


「教皇猊下!」


「まぁそりゃ驚くよな」


 アイスは思念でそう語った。


「まぁのう」


 鬼一も心情は同じらしい。


 金銭を支払おうとするレイヴに、


「猊下から金銭など受け取れません!」


 恐縮しきる店員。


「まぁまぁそう言わず」


 金銭を払って塩漬けの白菜をシャキシャキと食べる。


「うん。いい感じ」


 続いて根菜の漬け物をコリコリと。


「よく出来ている」


「恐縮です……」


 店員はひたすら萎縮しまくっていた。


「ほれ行くぞ」


 アイスはまた歩き出す。


「待った待った」


 レイヴもそれに付きそう。


「漬け物美味しかったよ。ありがとね」


 ニコニコ笑って店員にそう言って去る。


「レイヴ教皇猊下……」


「アイス枢機卿猊下……」


 とかく名声というのは度しがたい。


 おかげで営業スマイルが得意になるアイスであった。


「枢機卿猊下」


「何でしょう?」


 微笑んで話しかけてきた女性を見やると、腕に赤ん坊を抱いていた。


「この子の頭を撫でてやってくださりませんか。神の祝福を……」


「ええ」


 優しく赤子の頭を撫でて、


「優しい子に育ててあげてください。この子がきっと誰かの幸福になれるように」


「はい! ありがとうございます!」


 そう言って女性は頭を下げた。


「立派にやってるじゃん」


「不本意だがな」


 無論言葉での会話では無い。


 鬼一を通した思念での会話だ。


「冷静に考えてだな」


「考えて?」


「俺たちほど生産性のない富豪は居ないんじゃないか?」


「あはは」


 レイヴはケラケラ笑う。


「そうかも」


 スタートゲイザーにとってもそれは事実と認識できる。


 盲目的な神の信奉が何を生み出すのか?


 それを知っているが故に教皇やら枢機卿が出来るのも事実の一端ではあるのだが。


「それよりそろそろアインが二回戦じゃない?」


「じゃあ教会に戻るか」


 そういうことになった。


 教会ではライトが他のシスターと同じく炊き出しをしていた。


「教皇猊下……枢機卿猊下……」


 こちらを視認するライト。


 思念での会話。


「そろそろ二回戦が始まるからアインに戻るぞ。レイヴの護衛を任せる」


「承りました猊下」


「まぁ正味な話、労働力の無駄遣いだが」


「失敬な」


 とこれはレイヴ。


「自分立場を顧みろ」


「むぅ」


 今度はアイスが一本取った形だ。


「しっかし」


 懺悔室にこもってアイスからアインに成り代わる。


 和刀鬼一法眼を腰に差した黒衣礼服。


 黒髪黒眼の漆黒人間。


 アインはいつもの嘆息をした。


「面倒なことこの上ないな」


「まぁ死にゃしないんじゃから大丈夫じゃろう」


「師匠が居れば金棒なんだが」


「鬼であればそれで人より勝れる」


「それなんだよなぁ」


 目下アインの悩み事。


 力によるしがらみだった。


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