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第85話:学院祭ときどきイビルパニック02


 武闘大会は学院祭の目玉となる一大イベントである。


 舞台となるコロシアムには大勢の見物客が集まっていた。


 魔術も武器も禁止だが、それでも決闘という物は人心を惑わす力がある。


 自ら血を流さずに得られるカタルシス。


 そうであるからこそ学院ではちょくちょく魔術決闘がイベントとして流布され大々的に催されるのだが。


 なお此度の武闘大会には一神教のトップ……レイヴ教皇猊下まで見に来ると云うことでいつも以上の盛り上がりを見せていた。


「ここで実力を示せば立身出世も」


 そんな打算も出場者の幾人かにはあった。


 当然アインは、


「面倒くさい」


 の一言だが。


 リリィに格好良いところを見せる以外の目的を持っていない。


 最も大会の心意気から外れているアインではあるが、


「アインなら大丈夫」


 とレイヴから信頼の言葉を賜っている。


 別段応える気も無いが、


「レジデントコーピングがバレるのもな」


 ということで優勝にあたって無傷でなければならいという不条理も甘受するほか無かった。


 そうやって舞台に立つと、


「よく来たね」


 対戦相手がそう言った。


「ここで屈辱を晴らせて貰うよ」


「はあ」


 恨みを買うのは慣れているアインだが、それ故に恨みの一つ一つを一々憶えてはいない。


「私は君に復讐をしたいがために参加したのさ!」


「何かご縁でも?」


「忘れているのか!」


「憶えてはいないな」


「アルトだ!」


「アルトさんでっか」


 アインは肩をすくめる。


「何かしたか?」


「この私に恥をかかせたろう!」


「あー……」


 心当たりがありすぎてアインは首を捻るしか無かった。


「君のような粗野な人間にリリィさんの主たる資格無し!」


「さいか」


「故に約束しろ!」


「何を?」


「私が勝ったらリリィさんの主従権を譲り渡すと!」


「構いやせんがな」


「二言はないな?」


「別段惜しいわけでもないしな」


 アインは飄々とそう言った。


「貴様……っ!」


 と怒気を放つアルト。


「リリィさんを軽んじるか!」


「そっちが重んじすぎるだけだ」


 ことこの定義においては完全に平行線であった。


 アインとしても特に意義ある問答と思っていない。


 というか敵とさえ思ってはいなかった。


 アルトの肉体を鑑みるに強敵とはとても思えないのだから。


 武闘大会は自らの身体能力のみで勝ち進めねばならない。


 仮にここでアインが負けてもアルトに優勝の目は無いように思える。


 それがアインの結論だ。


「それでは予選第一回最終組!」


 司会の人間が声を(魔術で)大にして高らかと叫ぶ。


「始め!」


 コロシアムは広い。


 アインは自らを特に意義があると思っていないため待ちに徹した。


「おおおっ!」


 アルトが咆吼しながら襲いかかってくる。


 その姿勢。


 その体勢。


 その趨勢。


 全てが成ってはいなかった。


「やれやれ」


 後頭部を掻く。


「とりあえず一回戦は突破したな」


 そんな確信。


 元々色々な事情が絡みついているため負けるつもりもないのだが、


「素人相手にどうやって勝つか?」


 を研鑽する程度には余裕があった。


 殴りかかる動作一つとってもアインとアルトでは雲泥の差がある。


 結果、


「ぐえ!」


 カウンター気味に拳を顔面に受けてアルトは鼻血を吹き出す。


「て、てめぇ!」


 屈辱なのだろう。


 その程度はアインにも分かる。


 が、だからといって相手の都合を斟酌するほどアインはお人好しでは無い。


 アインが一発も被弾しないままボコボコにすると、ついにアルトの堪忍が千切れた。


「――マグマインパクト――」


 灼熱の溶岩が虚空から現れると、それは土石流となってアインを襲った。


 アインは風の魔術……エアバリアを張って熱をシャットアウトすると、縮地で安全地点まで避難する。


 別段レジデントコーピングを使えばマグマ程度何するものぞではあるが、衆人環視の中で禁術を使うのも躊躇われたのだ。


 結果として勝敗は決した。


 当然、拳の強さを競う武闘大会。


 魔術を使った時点でアルトの負けである。


 が、問題はそこで終わらなかった。


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