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第80話:アイス枢機卿の憂鬱13


 馬車が出立して二日。


 隣街についた。


 アイスとライトはホテルにチェックインしている教皇に会うことを前提に動いた。


 とはいえ、


「…………」


 教皇がチェックアウトするまでロビーでコーヒーを飲みながら駄弁るだけなのだが。


 アイスとライト揃ってホテルのロビーに屯していると、


「…………」


「…………」


「…………」


 さすがに注目を集める。


 片や宗教礼服を身に纏った枢機卿。


 片やカソックを身に纏った審問官。


 これで注目を集めるなと言う方が無茶だ。


 アイスは気にしていないが。


「もし」


 と一人の信仰者が声をかけてくる。


「剣聖の枢機卿猊下……で宜しいでしょうか?」


「まぁ」


 アイスは端的に頷いた。


「是非とも祝福を」


「まぁやれと言われるならやりますがね」


 アイスは指で十字を切って、


「汝に主の祝福ありますよう」


 そしてそっと信仰者の頬を撫でる。


 アインはともあれアイスは白髪白眼の美少女だ。


 そに祝福を受けて信仰者は紅潮し、感謝して立ち去った。


「慣れたもんじゃの」


「慣れているからな」


 アイスと鬼一は皮肉の応酬だ。


 無論のこと思念会話で。


 そして、


「アイス!」


 アイスは名を呼ばれた。


 そちらを見やれば愛らしい美少女。


 銀色の髪に銀色の瞳の美少女。


 年齢としてはアイスやライトよりやや下と言った辺り。


 貫禄は全く無いが、アインでも敵わぬ逸れ者だ。


 名をレイヴと言う。


 ノース神国および大陸に蔓延している一神教の教皇その人である。


「ども。猊下」


 アイスは気さくに挨拶した。


「アイス!」


「何?」


「結婚して!」


「氏ね」


 とかく教皇はアイスを気に入っているのだった。


「アインは?」


「知らん」


 今はアイスである。


「で?」


 とアイス。


「何故学院祭に?」


「だってアイスが出るんでしょ?」


「何も企画してないぞ」


 それは誓って本当だ。


「ま、別に良いんだけど」


 その通りらしかった。


「ところで私のお婿さんになる決心は付いた?」


「無理」


 サクリとアイス。


「それより俺をノース神国の宮廷魔術師に推挙してくれよ。一年で良いから」


「無理」


 サクリと教皇。


「なして?」


「アイスはフットワークが軽いから」


「良いように使い倒される……と?」


「誤解を恐れなければね」


 くっくと教皇は笑った。


 元が皮肉屋だ。


 銀色の瞳は、


「面白おかしい」


 と言っている。


「で、なんで俺を指名した?」


 アイスは当然の疑問を口にする。


 審問官より更に上。


 枢機卿にして代行師。


 それはアイスだけの特権では無い。


 アイスには及ばないにしても枢機卿ともなれば化け物だらけの魔窟である。


 あえてアイスをこき使う理由には乏しい。


 そう言うと、


「アイスが好きだから!」


 いつもの返答だった。


 こと嫌味が通じないのは教皇の一点だ。


 良いか悪いかの議論は後として。


「付き合わされるこっちの身にもなれよ」


 アイスは、


「やれやれ」


 と首を振る。


「いいじゃん。聞いたよ? 魔族に狙われてるって?」


「俺じゃなくてアインがな」


「アインも枢機卿でしょ?」


「お前さんは本当に図太いな」


 ことアインが枢機卿なのは秘中の秘である。


 それ故にアイスが居るのだから。


 もっとも、


「杞憂だな」


 教皇を護衛するという時点で以て無意味には違いないのだ。


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