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第78話:アイス枢機卿の憂鬱11


「というわけで」


 リリィお手製のボンゴレを食べながらアインは言った。


「俺と師匠はしばらく姿を隠す」


「ふえ?」


 とリリィ。


 話題の提議が唐突だったためついていけていないのだ。


 ポカンとしていた。


 しばしアインの言葉を吟味して、


「何ゆえでしょう?」


「しがらみ」


 説明するのも億劫だった。


 そも話せるものでも無いのだが。


「学院祭の開催には戻ってくるから心配はしなくて良いぞ」


「遠出なさるおつもりで?」


「さほどでもないな」


「?」


 まったく理解不可能とリリィは言う。


 アインとしては根幹の説明をせずにリリィを納得させねばならないため面倒事であった。


 アインの嫌う物の一つだ。


「ま、教授に使い倒されてろ」


 アインはボンゴレをもむもむ。


「デートの件は……」


「大丈夫だ」


 アインとて忘れているわけではない。


「学院祭が始まる頃には帰ってくるから」


 というか教皇が魔術学院の学院祭を訪問するため、嫌が応にも学院には向かうのだ。


 後は時間の調整程度だろう。


「危ないことはないのですね?」


「全く無いと言い切れる」


 そもそも、


「害せるものならやってみろ」


 がアインのスタンスだ。


 レジデントコーピングがある限り……物理的にアインに危害を加えることは不可能に限りなく近似する。


 状況によっては例外も存在するが、


「ほとんど無視できるレベル」


 であるのも間違いない。


 ありとあらゆる有象無象がアインの前では無価値に等しい。


 無論デメリットもある。


 世界を縮小させるのがその最たる例だろう。


 それほどまでに禁術は恐ろしいのだ。


 教皇が、


「ミスサンドペーパー」


 と呼ぶ所以だ。


「ともあれ」


 閑話休題。


「俺が居ない間に羽を伸ばしておけ」


「アイン様にお世話したいのですけど……」


「気持ちは嬉しいが却下で」


「はい」


 聞き分けの良いリリィであった。


「愛い奴愛い奴」


 アインはリリィの頭を撫でる。


 碧眼に喜悦の光が宿った。


「せめて何をなされるかだけ教えては貰えないでしょうか?」


「自分探しの旅だ」


 呼吸をするように嘘をつくのはアインの悪癖である。


「ま、気にするねぃ」


 鬼一が割って入った。


 音声だ。


「アインには小生もついている。鬼に金棒じゃ」


「そうではありますけど……」


 瞳を湿らせるリリィだった。


「ありがとな」


 アインは苦笑。


「何がでしょう?」


「そこまで心配されれば嬉しいって事だ」


「アイン様にはいつも無事でいて欲しいですし」


「夜中のランニングで俺が傷を付けて帰ってきたことがあるか?」


「ありません」


「そういうことだ」


 ほとんど力業で納得させるアインだった。


「本当は此処に居たいんだがな」


 思念でアインは本音を漏らす。


「しょうがなかろう」


 鬼一が言う。


「嬢ちゃんはアイスをいたく気に入っているようじゃしな」


「まぁ……な……」


 アイン。


 そしてアイス。


 この両者の関係は教会でも秘中の秘だ。


 知っているのは自身と教皇……それからアイン直属の審問官であるライトくらいのものだろう。


 ことアインが、


「全力を出す」


 にあたって必要とする仮面である。


 アインの趣味ではないが、


「仕方ねぇ」


 と諦めてもいる。


 元より教皇の勅命だ。


 逆らってどうなるものでも無い。


 アインの無敵もさることながら教皇の無敵は更にその上をいく。


 であるため傀儡に甘んじるのも処世術ではあるのだ。


「何で関わったかね」


 当時のことを思い出してパスタを食べるアインであった。


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