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第75話:アイス枢機卿の憂鬱08


 学院祭の準備期間も佳境に入っている今日この頃。


「それでデザイン案の件なのですが」


「俺はこれ」


「私はこれが良いです」


 アインとリリィはそれぞれ服装を決定して、そうやって今現在なんとかイベントは進行していく。


 アインは和服。


 リリィはゴスロリ。


 そうやって決まった後、


「ではその通りに」


 手芸部のファッションショー用の衣装が決まった。


 採寸は終えている。


 後は縫うだけ。


「で、結局俺は女装か……」


「仕方ないですよ」


 リリィはクスッと笑う。


「アイン様はお綺麗ですから」


「それは聞き飽きたな」


「でも事実です故」


「さもあらん」


 アイン必殺の嘆息。


 何時ものことである。


 そんなわけで急ピッチでファッションの作製が続いた。


 仕事の合間合間に手芸部を訪ねてファッションの準備。


 裁断から縫製まで軽やかに手芸部はやってのけた。


 時に試着して布を体にフィットさせていく。


 アインは黒いロングのウィッグを被って姿見を見る。


 そこには大和撫子的美少女が映っていた。


 元より可愛い顔をしているのだ。


 ウィッグを付ければ、


「ご覧の通り」


 と云った有様だ。


「…………」


 それがアインには面白くない。


 元より面白さを求めるものでも無いのだが。


「アインは貧乳ですから和服が似合いますね」


「貧乳……」


 無常を覚えるアインだった。


 元が男なのに、


「何故胸の有る無しをいわれにゃならんのだ?」


 である。


 鬼一はカラカラと笑う。


「さすがにアインじゃ」


「嬉しくねえよ」


 皮肉るアイン。


「小生も和服に似合うじゃろうな」


 鬼一は和刀だ。


 インテリジェンスソード。


 当然和服と合わされば雅を演出できる。


 知ったこっちゃない。


 それがアインの本音ではあるが。


「しっかし本格的だな」


 アインはウィッグを取ってガシガシと頭を掻く。


「それはもう」


 ソルトが云う。


「この企画は成功させて見せます」


 ですから、と。


「ご協力願います」


 そう言った。


「せめて格好良い服装だったらもうちょっと前向きになれるんだが……」


 思念で語るアイン。


「無茶を言うものじゃないぞい」


 鬼一にしてみれば他人事だ。


 対岸の火事である。


 それについてどう皮肉ろうか考えていると、


「アイン様」


 とリリィが呼んだ。


 仮縫いのゴスロリ衣装を身につけたリリィが居た。


 漆黒のドレスに金色の髪。


 エメラルドの瞳にあどけない可愛さ。


 奇蹟が演出されていた。


「どうでしょう?」


「可愛いな」


 心からの言葉だった。


「……っ!」


 リリィの顔が花開く。


「光栄です」


「地が良いからな」


「あう……」


 プシュー。


 そんな感じ。


「アイン様にも和服が似合いますよ?」


 褒めたつもりなのだろう。


 鬼一が大爆笑していた。


「…………どうも」


 揚々とそれだけ返す。


「さて」


 と手芸部の部員。


「仮縫いは終わりましたし後は衣装を完成させるだけですね」


「楽しみにしてる」


 アインは皮肉を言うほか無かった。


「楽しみです」


 リリィのソレは純粋なものだろう。


 アインと違って捻くれていないのだ。


 どちらが人間として正しいかは一目瞭然ではあるが、


「何で女装……」


 その疑念は終には振り払うことが出来なかった。


 無念。


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