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第74話:アイス枢機卿の憂鬱07


 ランニングから帰ってくると、


「アイン様……!」


 リリィが抱きついてきた。


 金髪を振り乱し、碧眼に心配を乗せる。


「また何かあったのですか!」


「まぁ色々と」


「魔族に襲われました」


 そうは言えないアインだった。


「これ」


 と鬼一。


「心配のしすぎじゃ」


 鬼一はリリィをたしなめる。


「アインに心配なぞ要らん」


「それもどうよ師匠?」


 アインはジト目で鬼一を見た。


「事実じゃろ?」


「そうだがな」


 その辺りは共有している二人である。


「ご無事……なのですね?」


「まぁな」


「良かったです」


 ギュッとリリィはアインを抱きしめた。


「リリィは可愛いな」


 忌憚のないアインの言に、


「ふえ」


 紅潮するリリィ。


 全く以てその通りであるから鬼一も否定しない。


「アイン様」


「何?」


「お風呂の準備が出来ております……」


「じゃ、お願いしようかな」


「はいな!」


 リリィは嬉しそうに笑った。


「一応誤魔化すことには成功したの」


「分かってても云わないのが大人の対応だが?」


「小生には無理じゃ」


「知ってる」


 そんな思念でのやりとり。


 そしてアインとリリィは浴室に向かった。


 既に性欲は処理しているためアインは反応しない。


 リリィの体は魅惑的だが、さすがに処理した直後にたつほどアインは絶倫では無いのだ。


 洗髪。


 洗体。


 後にアインは湯船に浸かる。


 後に体を清めたリリィも浸かってきた。


「何故アイン様ばかりが狙われるのです?」


「さてな」


 すっとぼけるアイン。


 エルザ教授。


 ソルト部長。


「二人が何を思って自身を監視していたのか?」


 それはアインにも分からない。


 しかして火の粉を払うだけにもいかないのがアインの業だ。


「どうしたもんかね?」


 はふ。


 そう吐息をついてアインは言う。


「アイン様に害為す輩が居るのでしょうか?」


「さてな」


 その辺に対しては限定しないアインだった。


 リリィの予測は的を射ているが、


「気にするな」


 としか言えない。


 そうには違いないのだが。


「けれど襲われているのですよね?」


 リリィはアインを失う不安でいっぱいだ。


「俺は無敵だ」


 アインはぬけぬけとほざいた。


「信用くらいはしてくれ」


「アイン様がそう仰るなら……」


 リリィは伏し目がちに納得した。


「可愛いリリィ」


 アインは腕を回してリリィの頭部を抱き寄せた。


「ふえ……」


 リリィは恥じ入るばかりだ。


「そんなお前だからこそ愛おしい」


「では私と……」


「私と?」


「子作りを……」


「却下」


 そこは譲れなかった。


「私では駄目ですか?」


「リリィだけじゃないよ」


 アインは言う。


「誰に対しても俺はそう言うさ」


「アイン様は無欲ですね」


「さほどでもないがな」


 アインはホケッと云った。


 事実ではあるのだ。


 アインに惚れているリリィ。


 その扱いに困っているのは事実である。


 そうである以上、


「すっとぼけるしかない」


 これも事実だ。


「ごめんな」


 アインはギュッとリリィの頭部を抱きしめた。


「アイン様?」


「何だ?」


「好きです」


「そりゃ重畳」


 まったくブレないアインであった。


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