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第69話:アイス枢機卿の憂鬱02


 そんなわけで次の日からアインとリリィは運営委員に加わった。


 幾つか理由があったが割愛。


 一番の原因はアインが研究室にもサークルにも入っていないと言うことだが。


 そのアインはと云えば、


「ああ、美味い」


 まったりと茶を飲んでいた。


 場所はエルザ教授の研究室。


「教授」


 とリリィ。


「こちらの書類ですが……」


 リリィは、


「アインを働かせたくない」


 の一心で二人分働いていた。


 おかげでアインはまったり出来る。


 元が無精だ。


 エルザ教授を警戒していなければ断っていた案件でもある。


「何か不審な点は?」


「ないの」


 思念で会話するアインと鬼一。


 それからアインが茶を飲んで、リリィとエルザ教授が書類の整理をしているところで、


「生徒アイン」


 とエルザ教授がアインを呼んだ。


「仕事はしないぞ」


 ぬけぬけと言ってのける。


「はい」


 とリリィ。


「仕事ならば不肖私にお任せください」


「リリィはアインの従者なのですか?」


 まさか、


「ファーストワンです」


 とも言えず、


「婚約者ですよ」


 アインは呼吸するように嘘をついた。


「魔術は貴族にしか使えない」


 これが大前提である以上、


「リリィがイコールで貴族」


 という等式が成り立つはずなのだ。


 であればアインの言い訳も中々のもの。


「あう……」


 紅潮するリリィ。


「ともあれアイン」


 閑話休題。


「あなたは何故剣を極めているのですか?」


「極めてないぞ?」


「ですが修めてはいるのでしょう?」


「少しはな」


「魔術を使えるのならば剣術なぞ不合理と思うのですが……」


「かか……!」


 鬼一が笑った。


「魔術が使えないから」


 とは言えない。


 アインの持つ禁術は魔術と丁度正反対だ。


 その性質上、


「禁忌の術」


 略して禁術と呼ばれているのだから。


 どちらにせよ容易に使えない。


 である以上護身術は必須だ。


「あまり魔術は得意じゃないからなぁ」


 茶を飲んで出鱈目を口にする。


 あながち間違っているわけでもないのだが。


「エアエッジの威力は大したものだと思うのですが」


 魔術の実践講義で見せている魔術ではある。


 ことコンセントレーションにおいてアインに敵う人間はそうはいない。


 その一点において、アインは魔術師より一歩先を行っている。


「そのための剣術だな」


 精神のコントロールも剣術の修行の一環だ。


 であるため、


「魔術のイメージの確固」


 はアインにしてみれば欠伸混じりの技術でしかない。


「つまり剣術が魔術の精度を支えていると?」


「そう捉えて貰っても構わんよ」


 ズズと茶を飲む。


「ふむ……」


 とエルザ教授は思案した。


「私にも出来ますかね?」


「知らん」


 本音だ。


 誤魔化しようもない。


「それに近距離なら魔術より剣術の方が手っ取り早いしな」


「それはそうでしょうけど……」


 エルザ教授は本気で悩んでいた。


「どう思う?」


「さての」


 鬼一でも判断は付かないらしい。


「私にも剣術を覚えることは出来ますか?」


「身体能力に恵まれてない女性には辛い技術だ」


「ですか」


 エルザ教授は案外あっさり引いた。


「教授」


 とリリィ。


「こちらの書類の不備が……」


「では統括委員に押し付けてきてください」


「了解しました」


 そしてリリィは研究室を去って行く。


「いい子ですね」


「ああ」


 アインも頷く。


「自慢のリリィだ」


 そこに嘘はなかった。


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