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第67話:学院祭のしがらみ11


 アインはとある教授に呼び出しを受けた。


 学院祭の準備期間中は色々と生徒らも東奔西走するもので、その意味では教授も暇なのである。


 リリィは連れてきていない。


「面倒事だ」


 と把握したためだ。


 あまりそういうことにリリィを巻き込まないアインであった。


「どうも」


 アインは一礼。


「初めまして……でしょうか?」


 そう言うアインに、


「ええ、初めまして」


 教授はそう言った。


 が、腰に差した鬼一が警戒していた。


 曰く、


「先の魔族の一件を監視していた人間の一人が此奴じゃ」


 とのこと。


 アインと下級魔族の殺し合いを覗き見ていた人間は二人。


 内一人が教授だと鬼一は言ったのである。


 名をエルザ。


 錆色の髪と瞳の女性教授。


 一般的にエルザ教授と呼ばれている。


 鬼一とのやりとりはテレパシーだが。


「エルザ教授がケイオス派か?」


「そう決めてかかる物では無いが……」


 鬼一としても困惑らしい。


「それで何用でしょう?」


 アインは尋ねる。


「率直に言う」


 エルザ教授は切り出した。


「運営委員になってはくれまいか?」


「面倒」


 端的かつ究極だ。


 元が無精である。


 この程度は当然と言える。


「私の研究室に配属させると言えば?」


「特に興味は無いが」


 どこまで遠慮がない。


 図太いとも言う。


 そもそも研究室に所属する意思がない。


 アインが目指すのはノース神国の宮廷魔術師なのだから。


「では生徒リリィを推挙しようか」


「何故そこでリリィの名が出る?」


 アインはスッと目を細めた。


 夏の盛りに殺気による冷気が襲う。


「生徒リリィが手伝えば君もついてくるだろう?」


「金魚のフンか」


 全く以てその通りではあるのだが。


「生徒アインが運営にかめばリリィも付いてくるはずだが……」


「嫌な未来予想図だな」


 嘆息。


 他に対処を知らないアインである。


「どっちにしろ選択肢が無いと?」


「そう言った」


 エルザ教授はサッパリと言った。


「この女子は何を考えているのやら」


 鬼一が思念でポツリと呟く。


「さぁてなぁ」


 アインにもわからない。


「ケイオス派だと思うか?」


 問うアインに、


「さすがにそこまでは」


 鬼一の声も尖る。


 まさか当人に聞くわけにもいかず。


「エルザが先日の二人の内の一人で間違いないんだな」


「そこは信用してくれぃ」


「疑ってはいないがな」


「仮にそうだとしたらどうする」


「審問官の役割だろ」


「カカッ」


 大笑する鬼一。


「その通りじゃ」


 一応一定の理解はあるらしい。


「アインとリリィには運営委員に回って欲しいのですが宜しいでしょうか?」


「構わんぞ」


 結局のところエルザ教授は重点監視対象だ。


 そこに近づけるならあながち悪い位置取りでは無い。


「ただし」


 とアインは忠告する。


「こっちにも都合があるからこき使われる謂われは無いぞ」


「承知しています」


 エルザ教授は軽く頷いた。


「ファッションショーに武闘大会……アインにも調整があるでしょう」


「わかってるのな」


「その程度は」


 エルザ教授は謙遜して見せた。


「演技なら大した物じゃの」


 鬼一は辺に感心していた。


 あくまで他人事だ。


 迷惑を被るのはアインとリリィである。


 あくまでエルザ教授が黒ならば、ではあるが。


「さて何と言ったものかね」


 アインはリリィへの説得に頭を悩ませた。


 リリィが聞けば即肯定されると分かってはいても、


「ケイオス派かもしれない」


 というエルザ教授の嫌疑を説明するわけにもいかない。


 それがアインの憂慮である。


「毒をくらわば」


「皿まで」


 師弟でそんな確認。


 そうではあるのだ。


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