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第62話:学院祭のしがらみ06


 遠慮無く魔族の頭をかち割る。


 人類に対するアンチテーゼ。


 人類の天敵。


 それが魔族のはずだった。


 しかしアインは更にその上をいっている。


 四匹目と五匹目を斬り殺すと後方の魔族に向き直る。


 理性も無く襲いかかってくる魔族。


「ま、下級ならこの程度か」


 アインは余裕ですらある。


「というか人間否定主義の魔族が俺だけを狙うってアリか?」


「ふむ……」


 と鬼一は思案する。


「まぁ今は良いか」


 アインは脱力した。


 無構え。


 陰流における奥義だ。


 後の先を取るある種の究極。


 なおそこにアインの剣術が加われば魔族といえども無事では済まない。


 雄叫びを上げながら魔族が襲ってくる。


「…………」


 それをスイスイと躱して、


「疾っ!」


 刀を振るう。


 魔族の首が断ちきられた。


 残りは四匹。


 東西南北を囲まれて同時に襲ってきたが、


「話にならんな」


 アインの言うとおりだった。


 魔族の襲撃よりアインの振る剣の方が速い。


「まったく」


 面倒事には慣れたつもりだが甘い算段だったらしい。


 それを強く思い知るアインだった。


 そもそも魔族を操れるということは学院に魔族が潜んでいることの逆説的証明だ。


 アインは成り行きで入学したのだが、


「こりゃ学院の闇は相当に深いな」


 そうも思わざるをえない。


 アインは審問官では無いが、それでも義理はある。


 魔族の殲滅は教会の悲願。


 アインは共鳴してないが、


「まぁ多生の縁だよな」


 程度の解釈は持ち合わせている。


 というか仮に一匹でも逃がしたら大惨事に発展するのだ。


 ここで全て斬り殺さねばならなかった。


 そんなアインの思惑も知らずに、


「…………っ!」


 キシャアと咆吼して襲いかかる魔族。


 時間の流れがこの際の致命傷だ。


 残る四匹も血の海に沈んだ。


「うむ。ようやった」


 鬼一が賞賛する。


「まだまだ未熟者ですが」


 アインとて現状で満足は出来ない。


 現状において中級魔術にギリギリ勝てるか勝てないか……と言ったところで、あまり楽観もしていられない。


 そもそもにして既に規格外の能力を獲得してはいるのだが、


「小生なら上級魔族も切り伏せられるぞ?」


 などと鬼一法眼はサックリ言ってのけるのだ。


 見栄でも何でもない。


 剣術にはその可能性が眠っているのだ。


 魔術すら凌駕する戦力が。


 だからこそアインは鬼一を、


「師匠」


 と仰いでいるのだから。


「で?」


 とアイン。


「監視者はどうした?」


「きさんが戦っている内に場を離れた」


「確認は?」


「取れたぞのう」


「さすが」


 惜しみない賞賛。


 鬼一の規格外は今に始まったことでも無い。


「で、誰だった?」


 問うアインに鬼一は二人の特徴を告げた。


 が、生憎とアインの記憶には存在しない特徴である。


「ふぅん?」


 とアイン。


 特に究明しようという気も無いらしい。


「協力か?」


「いや」


 鬼一は否定する。


「どうにも個別に動いていたのう」


「ふむ」


「まぁ真相究明は教会に任せれば良かろう」


「じゃあライトにわたりをつけてくれ」


「じゃの」


 そんなわけでテレパシーを通して審問官に連絡を取る。


「起きろ」


「何用でしょう?」


「魔族に襲われた」


「はあ」


 特に緊張感を覚えないライトだった。


 アインが魔族に後れを取るはずが無いという確信故だが、


「こいつは~……」


 アインとしては心安んずることでもない。


「退治なされたのでしょう?」


「これから言う二人の背景を洗ってくれ」


 アインはそう言った。


 特徴を告げる。


 おそらくだが学院の関係者だ。


「ええ、承りました」


 ライトはさっぱりそう言った。


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