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第61話:学院祭のしがらみ05


 夕餉を終えて夜。


 月の出る時間だ。


「じゃあ行ってくる」


「行ってらっしゃいませ」


 リリィはアインに一礼した。


「茶と風呂を用意してお待ちしております」


「どうも」


 そしてアインは寮を出ると学院街へと向かった。


 春頃開拓したランニングコースを今日も走る。


 体力をつけるのはアインの最優先事項だ。


 たまにチンピラに絡まれたりするが死なない程度に痛めつけているので問題は無かった。


 本来は問題だが、


「まぁいいか」


 が結論だ。


 そもそもにして脅して金を巻き上げようとする方が悪い。


 正当防衛の過剰防衛だ。


 更に言えばアインに敵対することは教会を敵に回すことと同義だ。


 であれば審問官によって粛正をくらう羽目になる。


 ともあれチンピラ程度では(というか如何な強者であろうと)アインに傷を付けることは不可能なのだからアインはそれほど問題視していない。


 こういうあたり一つとっても禁術使いの無茶苦茶さが手に取れる。


 夜目も利くし心眼も怠っていない。


 仮に不意を突かれてもレジデントコーピングがある。


 アインは気楽に走っていた。


 が、今夜は違った。


 アインの心眼が夜特有の冷気とは別の鋭さを感じ取った。


 明らかに囲まれている。


 殺気……などというものは感じ取れないが、呼吸音と足音は明確にアインへと情報を提供する。


 アインは思念で鬼一に声をかける。


「師匠」


「何じゃ?」


「こっちに転移してきて」


「チンピラ程度なら問題なかろう」


「多分……違う」


 衣擦れの音がしないのだ。


 そう言うと、


「ふむ」


 と思案した後、鬼一はアインの手元に収まった。


 空間跳躍。


 学生寮から一足飛びで学院街のアインの位置までワープしたのである。


 アインは鬼一を握ると、


「…………」


 スラリと鞘から刀を取り出した。


 一応これあるを見通してランニング用の服に帯刀するためのベルトも着けていた。


 鞘を腰に差して和刀を構える。


「なるほどのう」


 と鬼一。


「安易に禁術を使わなかったのは正解じゃ」


「相手は?」


「魔族じゃな」


「だろうとは思ったが……」


 そんなやりとりをしているとランニングコースの前後を防ぐように怪物が現れた。


「――――!」


 人語で発音できない声をあげながら計十体の魔族がアインの前後を挟む。


 前に五匹。


 後ろに五匹。


 その全てが下級魔族である。


 猛獣を人型に変えたような印象のソレ。


 獣人との違いは理性が有るか無いかだろう。


 下級魔族は突発的かつ散発的に発生するため脅威となっているが、


「やれやれ」


 アインにしてみれば徒労の種でしか無い。


「禁術は使わんことじゃ」


 鬼一のそんな忠告。


 そのつもりではアインもあったが、


「何故?」


 と問わずにはいられない。


「こっちの状況を観察している人間が二人おる」


「さすが師匠」


 この辺りの感知能力においてアインは鬼一の右に出る者を知らない。


「黒幕か?」


「さぁてのう」


 安易に結論を急かない鬼一。


「まぁ何かしらの意図はあるんじゃろうが……」


「だな」


「きさんなら下級魔族程度なら問題なかろ?」


「さもありなん」


 和刀を正眼に構える。


「師匠は監視している二人の認識を頼む」


「了解した」


 そしてアインは、


「来い」


 と魔族を挑発する。


 同時に魔族たちはアインに殺到した。


 殺すに到る。


 故に殺到だ。


 アインは前面に出た。


 速度は神速。


 下級魔族とは時間の流れがまるで違う。


「疾っ!」


 一閃。


 魔族の首を断った。


 抵抗もなく通り抜け。


 次の一閃で二匹目は逆袈裟に胴体を断たれる。


 断末魔の悲鳴を上げて魔族が死に到る。


 アインの疾駆はまだ続く。


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