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第58話:学院祭のしがらみ02


「アイン様」


 とリリィ。


「夕餉はどういたしましょう?」


 時間は放課後。


 夕暮れ時だ。


 それ故リリィの探りも不可思議なことではない。


「夏向きのあっさりした感じで頼む」


「冷や麦はどうでしょうか?」


「ああ、わかってるな」


「アイン様のためですから」


 えへへ。


 はにかむリリィだった。


「お前って奴は……」


「何でしょうに」


「ほんに可愛か」


「アイン様もお綺麗ですよ?」


「あー……」


「本心です」


「さいですか」


 アインは少し戸惑った後、言う


「じゃあ良かったな」


「はい!」


 向日葵のような笑顔を見せるリリィだった。


「ところで教会に寄りませんか?」


「構やせんがな」


 アインは面倒だがリリィの信仰心を否定するほどでもない。


 そのようなわけで学院街の教会に顔を出すアインたちだった。


 アインはさっさと隅の椅子に座って鬼一を傍らに立てかける。


 リリィは礼拝の列に並んだ。


 教会には赤髪赤眼の美少女……ライトが春に赴任してきて以来、下心と信仰心を両立させた男たちが欠かさず毎日礼拝する教会となってしまった。


 ライトは貞操を唯一神に捧げているため男を相手にせず、言い寄る男には、


「申し訳ありません」


 と丁重にお引き取り願う。


 とりあえずこの数ヶ月で、


「ライトが男に靡くことはない」


 という通念が出来上がっていたが、


「それでも」


 と諦めきれないのが美少女を見た男の至極真っ当な反応でもある。


 中には礼拝にライトへのプレゼントを抱えてやってくる男まで出るほどだ。


 金銭。


 宝石。


 芸術。


 服装。


「大人気だな」


 アインは思念でくっくと笑った。


「冗談ごとではありません」


 ライトは少し拗ねていた。


「下心で礼拝されても……」


「親を恨め」


「出来ませんよ」


 猊下じゃあるまいし。


 そんな皮肉。


「子を為したのは親の偉業です」


「気持ちはわかるがな」


 アインとて翁と媼には感謝している。


 愛しく愛しく……自身を育ててくれた恩。


 返そうにも返せない大恩だ。


「うちの馬鹿親父にも知らしめてやりたいよ」


「猊下はぶれませんね」


 ライトは苦笑した。


「仕事の方はどうだ?」


「さすがに国家共有魔術学院……と言ったところですね」


 そんなライトの言葉。


 アインは過不足無く受け取る。


「闇が濃いよな」


「ええ、まったく」


 代行師と審問官。


 二人揃って嘆息した。


 あくまで思念上で、だが。


「猊下の進捗はどうでしょう」


「特になし」


 本音だ。


 審問官がケイオス派二人を捕らえたことは既に教会の知るところである。


 というか教会がその通りに動いたのだが。


「とりあえず他の教授の動向も探ってはみるがな」


「こちらも警戒を強めます」


「そうでもしないとケイオス派は増長するしな」


「単一概念の同一勃発……ですか」


「そ」


 アインは足を組む。


「師匠の言を借りればな」


「鬼一様……」


「何じゃろ?」


「何故鬼一様はその様なことを知っていらっしゃるのですか?」


「小生は何でも知っている」


「仙人故な」


「せんにん?」


「いわゆる一つの世捨て人じゃ」


「捨ててないがな」


「そこ。余計なことを言うねぃ」


「師匠が言うか?」


「小生の判断が間違っているとでも?」


「そっちについては心配してないが」


「であろ?」


「その不貞不貞しさはどうにかならんのか?」


 アインはそう思わざるを得ない。


 アインも人のことは言えないはずなのだが。


 こういうところは師弟そっくりではあった。


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