第49話:祭のアレコレ04
次の日。
「資材まだ!?」
「予定は算出できた!?」
「委員会に頭下げてきて!」
そんなこんなで、学院祭を盛り上げようと学院生が東奔西走し、怒号と悲鳴と活気とが轟いていた。
西に東に。
で、アインはと云えば、
「国破れて山河あり……か」
原っぱに寝転んで安穏とした刻を過ごしていた。
「風が気持ちいいですね」
リリィもリラックスしている。
水筒に紅茶を保存し、コップで飲んでいた。
「きさんはほんに無粋じゃの」
鬼一が呆れて話しかけてくる。
当然思念で、だ。
「別段踊る馬鹿にも成れんしな」
それがアインの回答。
「せっかくの祭りじゃと云うに……」
「そう言わない。自覚してるから」
とアイン。
「サークルに入ってはどうじゃ?」
「あんまり人間関係は広げたくないからなぁ」
駄目人間の典型だった。
と、そこに、
「君たち!」
とアインとリリィに声がかけられた。
思念ではない第三者の声だ。
「何でしょう?」
「可愛いね!」
ナンパの類か?
そう訝しがるアインではあるが、
「ああ、そんな意味じゃない」
学院生だろう法被を着た青年は否定した。
「君たち」
「何でしょう?」
答えたのはリリィ。
「可愛い服着たくない?」
「…………」
この沈黙はアインのもの。
「かか!」
大笑する鬼一。
「師匠。笑いすぎ」
アインはうんざりする。
「その質問の意図は?」
「手芸部でファッションショーをやるんだ」
学院祭の催し物だろう。
その程度は察せられる。
「で?」
「君たちをスカウトしたい」
青年はそう言った。
「はあ」
とリリィ。
「却下」
とアイン。
「そこを何とか!」
青年は食らいついてくる。
「と言われてもな」
「ですね」
見世物になるのは御免。
それがアインとリリィの共通項だった。
「二人とも可愛いからステージ映えすると思うんだよね」
「他の人間を見繕え」
アインは容赦が無かった。
今更だが。
「君たちなら男の子の心を鷲づかみに出来るよ?」
「興味ない」
「同じく」
「ていうか」
アインは聞き捨てならなかった。
「なんで俺が男子に?」
結論が分かっていても問わざるを得ない。
「え?」
と青年。
「だって可愛いじゃん」
と青年。
そこには嫌味も含みも無かった。
ただ、
「何を言っているのか?」
そんな疑問が残るだけ。
「俺は男なんだがな」
アインは漸う言葉を絞り出した。
「え?」
と青年。
「女の子じゃないの?」
全く以て不本意な問いではあった。
しかし、
「かか!」
鬼一が笑うようにアインの顔は甘い。
黒髪黒眼の美少女で十分通用する。
当人には不平の種だが。
「そんなわけで諦めろ」
アインは早々にケリを付けたのだが、
「いいや。君たちを説得してみせる」
青年は断固として云った。
「アイン様」
リリィが案じるようにアインを見る。
「大丈夫だ」
アインは言う。
「揺れることはない」
と。
「そうですよね」
リリィもこの時点ではそう言った。




