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第48話:祭のアレコレ03


「うまうま」


 アインは夕食を食べていた。


 リリィの手作りである。


 別段外食してもいいのだがリリィの料理はプロ顔負けであるため、遠慮もなく食べている。


 今日のメニューはシソと梅のパスタとコンソメスープ。


 本当に美味しいと彼は心底から言える。


「魔術師にならなくともよくね?」


 そんなことをアインは言った。


「料理で食っていける」


 そういう意味だ。


「いえ、まぁ……」


 あはは。


 そんな誤魔化し笑いをするリリィだった。


「クイン家の再興に従事せねばなりませんし」


「父親は俺から話を通すぞ?」


「そうすると家族が神都から追い出されます故……」


「人質……か」


「いえ、十分な見返りです」


「お前がそれで良いなら良いがな」


「嬢ちゃんはもっと我が儘になっても良いんじゃぞ?」


 これは珍しく声として発した鬼一の言葉。


「恐縮です。鬼一様」


「堅物じゃの」


「でしょうか?」


「うむ」


 鬼一は肯定した。


「が、まぁ研磨しがたいのは石ではなく玉の証拠。それもいいじゃろ」


「恐縮です」


 再度そう言うリリィだった。


「というわけでアイン様……」


「何だ?」


「私と交合しましょう」


「ありえん」


 ザックリと切り捨てる。


「私では駄目でしょうか?」


「ん~……まぁ……何だ……」


 言葉を探すアインだった。


「そういうのは好きな人とやれ」


「私にとっての想い人がアイン様なのですけど……」


「義務と本音を取り違えてるな」


「そんなこと……」


「無いか? 本当に?」


「むぅ……」


 唸るリリィ。


 アインは嘆息。


「なんなら父親を殺して俺が当主に座そうか?」


「それは……!」


「当然お前もお前の家族も保護してやるよ」


「でもそれではあまりにも……」


「言わんとすることは分かるがな」


 元より、


「殺人禁止」


 を旨としているため先の言は一種のはったりではあるのだが。


 そんなことには思いも及ばないだろう。


 少なくともリリィには。


「俺に関わっても得はないぞ」


 それがアインの結論だった。


「アイン様は意地悪です……」


「そうか?」


 当人は本気でコレを言う。


「私に興奮してくれません」


「してないわけじゃないがな」


「しかし……」


「クイン家に魔術の素養を取り戻す……か?」


「はい」


 アインは無言。


 思念で鬼一に話しかける。


「どう思う師匠?」


「視界がまだ広くないのじゃろう」


 さもあらん。


「もう少し年を経ると柔軟な考えが出来るじゃろうな。その時が楽しみじゃ」


「子作り……ねぇ?」


「きさんは淡泊すぎじゃ」


「俺みたいな人間が生まれても不幸を体験するだけだろ」


「倉庫で泣いていたきさんのようにかの?」


「然りだ」


 突然変異ではあるもののアインの才能は魔術師と対称的な別ベクトルだ。


 そを子が受け継ぐかは決まっていないが、


「それでも」


 と憂慮するのは如何ともしがたい。


 結局アインは嘆息した。


「ま、その気になったらな」


 パスタをあぐり。


 もむもむ。


 そんなわけでこの話題はお終いである。


「ていうかそもそも俺が宮廷魔術師と云うのが無理な相談なんだが」


 アインは魔術を使えない


 そうでなくとも教皇が許すはずがない。


「色々としがらみが面倒じゃの」


「師匠がそれを言うのか?」


 それが嘘偽り無いアインの感想だった。


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