第42話:その者、禁忌の代行師08
「何を……?」
困惑するアインを抱きしめて、
「――セルフフレア――」
アンネは狂気の沙汰ともとられかねない……あまりに馬鹿げた威力の魔術をためらうことなく行使して見せた。
火の属性……そにおける自爆の魔術だ。
膨大な熱量の具現。
酸素が焼き果て具象は燃え尽きる。
アインとの心中。
それがアンネの望みだった。
そしてその通りに魔術は行使されるはずだった。
問題は、
「俺に通用しないことだよな」
アインは爆風の中で憂いながら呟いていた。
セルフフレア。
自身をエネルギーと変えて自爆する大魔術。
その有用性故に火属性魔術師の最終手段と云える。
が、アインにはレジデントコーピングがある。
禁術。
ありとあらゆる物理的干渉を無効化する術だ。
結論だけを言えば、
「アンネが自爆」
し、
「アインが無病息災」
と云った様子だ。
「馬鹿な真似を」
とはいうものの、
「ま、しょうがないか」
嘆息するアイン。
決着はついていない。
アインとて、
「アンネが気安く自爆の魔術を使う」
とは思っていない。
であれば、
「別の因果がある」
そういうことになる。
そうには違いないのだ。
「師匠は大丈夫か?」
「誰に言っている?」
「だよなぁ」
アインは嘆息する。
こと物理においてアインと同等かそれ以上に鬼一は不滅だ。
「問題はそやつじゃな」
鬼一が言う。
アンネの自爆はもう頭には無い。
それはアインも同じだが。
「さて……」
塵となったアンネを見やりながらアインは言う。
「どうしたものか」
「とりあえずは教会じゃの」
「それしかないか」
アインも否定はしない。
ともあれ爆発が起こったため野次馬が訪れるのは必然だ。
そうなる前に場を脱するのは賢明である。
そしてアインは学院街の教会を訪れていた。
「猊下から用があるとは」
赤髪赤眼の美少女が言う。
「何時ものこったろ」
アインは吐き捨てた。
「叩いて埃は出たか?」
「ええ。一応は」
「速い仕事で助かるな」
ちなみに鬼一による思念会話でやりとりをしている。
アインと教会の関係性は秘中の秘だ。
そを見た犯人に、
「余計な思案を与えない」
その点においてはアインとライトは答えを共にしている。
「では其奴が……」
「ええ。ケイオス派ですね」
「となると……」
ふむ……。
アインは思案する。
「何か問題が?」
「有るには有るがこっちの問題だ」
「では神罰執行をしても」
「いい加減ケイオス派の尻尾も掴みたいしな」
そうには違いないのだ。
「状況は?」
「こっちが作る」
「猊下ならばそうでしょうね」
「その猊下ってのは止めないか?」
アイン自身は肩がこる。
「しかし猊下は猊下ですし」
ライトは困惑した。
「別段監視してどうなるもんでも無い気はするがな……」
アインがその気になれば世界が滅ぶ。
であるため、
「何が楽しくて俺を監視してるんだか」
そんな結論に至る。
「とりあえずライト」
「何でしょう?」
「お前にも協力して貰うぞ」
「猊下が仰るなら」
「やれやれ」
アインは許せない。
それはアンネの自爆もそうだ。
そを促した犯人もそうだ。
殺人は禁忌である。
それでも、
「殺してしまいたい」
そんな感情に否定のしようがない。
「クズが……!」
アインは呟く。
それは宣戦布告だった。




