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第40話:その者、禁忌の代行師06


 次の日。


 決闘当日。


 広い敷地を持つ魔術学院は魔術師同士の決闘をするコロシアムを持っている。


 客は満杯だ。


 新入生であるアインを一目見ようと。


 あるいは魔術師の練度を確かめようと。


 賭け事に興じようと。


 百人百様の理由でアインと青年の決闘を見届ける腹づもりだった。


 特に集まったのが神王皇帝四ヶ国の宮廷魔術師だ。


 異世界における甲子園を見に来たスカウトのように、此度の決闘で魔術師の質を見極めるための作業を宮廷魔術師は行なう腹づもりだ。


 ここで強力な魔術を見せれば宮廷魔術師にスカウトされることも有り得る。


 そういう意味ではノース神国の宮廷魔術師を目指す……ことを強制されているアインにとってもマイナスではない。


 が、唯一神教の教皇猊下が居座る聖地……ノース神国にアインは不要だ。


 そこまでの意識は持っているが、


「ではどうしろと?」


 と問うて答える者もいない。


 結局は、


「自分でどうにかするしかないか」


 独り言を呟いて嘆息。


 アインはこれから決闘をする青年と握手を交わし、


「良い試合をしよう」


 と爽やかに笑う青年に、


「努力はしてみるがな」


 うんざりと言ってのけた。


 そして二人は握手と声とを交わして挨拶を終えるとコロシアムの端まで歩く。


 ことが魔術師同士の決闘であるため最初は距離を離して開始せねば常識的に有利不利を招くのだ。


 互いに目前で決闘を開始すれば剣術に秀でるアインが神速の抜刀術で決着させてしまう……とそういうこと。


「致死魔術の行使は不正とする。その上で真摯な決着を望む」


 審判がそう魔術で声を大にして言った。


 声を拡散させる魔術を起動させているのだろう。


 特に戦略における魔術の使い方だ。


 アインは鬼一を鞘に収めたまま握ると、


「大丈夫か師匠?」


 思念で語りかけた。


「誰にものを言うておる?」


 鬼一も不遜の塊だ。


「では」


 と朗々と響く声。


「試合開始!」


 開始の声が聞こえる。


 同時に審判は安全圏に避難する。


 試合。


 試し合い。


 その通りに青年は強弱を付けた魔術を行使する。


「――エアブレイド――」


 風の刃を具現する。


「――エアバリア――」


 アインは気圧による斥力でそれを防ぐ。


「ほう……」


 と青年。


「さすがにこの程度ではどうにもならんか」


「まぁな」


 アインも怯まない。


「では少し強い魔術を行使するぞ?」


「かかってこい」


「――エアブレイド――」


「強めじゃの」


 鬼一が判断する。


「師匠?」


「あいあい」


「アンチウィンド」


「然りじゃ」


 そしてアインは刀を振るって風の刃を霧散させた。


「な……!」


 青年が驚く。


 アインは風属性の魔術師。


 そんな観念を打ち砕く魔術行使だったからだ。


「――エアブレイド――」


 都合七つの風の斬撃が生まれる。


 その全てをアインは切って落とした。


「終わりか?」


 アインは口角をつり上げて言う。


 一歩一歩とゆっくり青年に向けて歩いて行く。


「――ウィンドウォール――」


 直訳して風の壁。


 暴風によって進行を阻む防御魔術を青年は展開した。


 が、アンチウィンドによってソレは無力化される。


「ぐ……ぅ……!」


 アインの戦力を今更ながらに噛みしめる青年。


 正確にはアインのものではないのだが。


 立て続けに魔術を放つ青年。


 目に見えない風の攻撃。


 だがアインには見えていた。


 アンチウィンドで無力化する。


 一足一足。


 青年に近づくアイン。


「来るなぁ! 来るなぁ!」


 青年は理解不能のアインの能力に狂乱した。


 アインにしてみれば、


「なんだかな」


 と云った具合だが。


 ありとあらゆる風魔術を無効化してアインは青年の喉仏に和刀……鬼一を突きつける。


「何か言うことは?」


「参った」


 そんな風に決着はついた。


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