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第38話:その者、禁忌の代行師04


 放課後。


 アインはリリィと二人で学院街に出向いた


 夕餉の食料調達である。


 別段外食でも良いのだがアインはリリィの作ってくれる料理を愛していた。


 しばし門前市で物色していると教会が見える。


「あう……」


 とリリィ。


 その信仰をアインはよく知っている。


「寄ってくか?」


「はい」


 嬉しそうにはにかんでリリィは頷いた。


 案の定教会のシスター……ライトは大人気だった。


「信心深いあなたに神のご加護を」


 祈りを捧げる一人一人に丁寧に応対する。


「アイン様はやはり祈らないので?」


「ガラじゃない」


 ノース神国の貴族にあるまじき言だ。


 しかして本心でもある。


「とりあえず礼拝を済ませてこい」


 アインはリリィを促した。


「では」


 とリリィは礼拝の行列に並ぶ。


「やれやれ」


 アインは教会の長椅子に座って鬼一を立てかける。


「師匠?」


「何じゃ?」


「ライトとの回線を取り持って」


「ふむ……」


 テレパシーが具現する。


「お久しぶりです猊下」


 礼拝客に祝福をしながら、なおかつ並行してアインと思念での会話をする器用なライト。


 赤い瞳がアインをチラリと見やる。


 アインは肩をすくめるのみだ。


「この前の暗殺者はどうだった?」


「特筆すべきことの無い案件でしたが」


「しかし暴漢にしては組織的に襲ってきたが……」


「それについては体に聞きましたので間違いないかと」


「お前が言うならそうなんだろうな」


 アインは一つの確信を得る。


 足を組んでステンドグラスを見上げる。


「なら結論は……」


「そう云うことになりますね」


 阿吽の呼吸だった。


「ついでに」


 とアインは一人の人間を指名する。


「こいつの背後を洗ってくれ」


「その人が何か?」


「多分叩いたら埃が出る」


「その根拠は?」


「今日学食で飯食ってるときに毒を盛られた」


「学食の店員が?」


「多分店員さんも被害者だ」


「あ、そうですね」


 ライトは物わかりが良い。


「問題はそいつがソレに驚愕したことだ」


「まぁ普通は死にますよね」


 ライトの言うことも尤もである。


 毒を食らって平然としているアインの方がどうかしているのだ。


「レジデントコーピング……」


「だな」


「生徒の目があったでしょう?」


「まぁ大丈夫だろ。毒の対処くらいで気づかれる隠密性じゃない」


「で、その人は?」


「有り得ないモノを見る目で俺を見ていたな」


 巫山戯た話だ。


 全く。


 アインはそう言う。


「ではケイオス派との関連性が……」


「多分……というか半分だがな」


「了承しました猊下。この後最優先で取り組みます」


「ん。お願いする」


 アインは嘆息した。


「しかし毒な」


 鬼一が言う。


「まぁ教会に縁が深ければこう云うこともあるだろう」


「業じゃな」


「誰のせいだと……」


「小生は知識と技術を授けただけじゃ」


「あー……」


「責任はきさんに帰結する」


「あーあー正論でございますよ」


 アインは呆れ果てた。


 事実ではあるのだ。


 納得できるかは別問題なのだが。


「とりあえず」


 とアインは言った。


「あやつに関してはライトに任せて俺は決闘に意識を割かんとな」


 目の前のことを対処する。


 生きる上での基本則だ。


 幸いにして教会の協力も取り付けた。


 であれば三日と立たず結論は出るだろう。


 ほとんど確信しているとは言え、大義名分は必要になるだろうから。


「叩いて埃が出たら猊下の番ですよ?」


 ライトはしっかり釘を刺した。


「ええ~」


 面倒事を嫌うアインらしい反応。


「サポートはしますから」


「むしろ積極性を貰いたい」


「こっちの台詞です」


 不和が生じるのもしょうがなかった。


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