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第37話:その者、禁忌の代行師03


 決闘が明日に迫ったあくる日。


 アインたちは学食に向かっていた。


「相手のことは分かったか?」


 アインが問うと、


「うん」


 アンネが答える。


「相手は風の属性だね。研究室所属で成績も良好。多分風属性の魔術でならアインより上かもよ?」


「さいか」


「名前は――」


「覚える気が無いから言わんで良い」


 青年で十分だ。


 そうアインは言う。


「勝機は見えてるかな?」


 シャウトの言。


「どうやって穏便に負けたものか……」


「駄目だよぅ」


 アンネが焦る。


「しかしお前を引きはがすには負けるしか……」


「お姉さんが居なくなって良いの?」


「構わんぞ」


 まったくの遠慮も無く断ずるアイン。


 アンネの心を慮るほどの容量が存在していないのだ。


 目下アインの問題は別にある。


 ソレについては今日中に話を付けるつもりではあるが。


「アインは冷たいな」


 シャウトが半眼になる。


「お前も消えろ」


 アインは殊更に拒絶する。


 アンネの好意はまだしも分かるが男色については全く配慮の余地が無い。


 そういう人間が居ることは否定しないが、


「俺を巻き込むな」


 がアインの主張だ。


 処女を散らす趣味は無い。


「ウィンウィンの関係になれるんだがなぁ……」


 知らんがな。


 アインは心中嘆息した。


 鬼一がケラケラと笑う。


「少しは乗ってみてはどうじゃ?」


「師匠が実践してくれ」


「小生は世捨て人じゃからのう」


「性欲は面倒だ」


「リリィとアンネが居るじゃろう?」


「抱く気はねえよ」


「童貞」


「さもあろう」


 疲れたように眉間に指を当てる。


「師匠は女子に興味は?」


「ないの」


 さっぱりとした答えだった。


 いっそ感心さえする。


「月と花、酒と唄があればこの世は万事上手く回るものじゃ」


「仙人だな」


「実際その通りじゃしの」


 アインの皮肉にへこたれない鬼一は逸れ者と言えた。


「はぁ」


 再度嘆息してアインは学食に入る。


 リリィたちも後に続く。


 学食の店員がアインを見ると瞳孔を開いた。


「?」


 アインには不明の光だが、特に気にはしない。


「オムライス」


 アインは流暢に注文する。


「オムライス」


「ハンバーグ定食」


「サイコロステーキ」


 リリィとアンネとシャウトも淀みなく注文。


 料理を受け取って席に座る。


 ザワリと学食がさざめいた。


 注目されて必然のメンツであるからアインは思案することを諦めた。


「ま、なるようになるさ」


 ほとんど諦観の境地だ。


 そして、


「いただきます」


 犠牲に感謝する。


 もむもむとアインはオムライスを食べる


 二口。


 三口。


 あぐあぐとオムライスを食べる。


 不意に、


「……っ?」


 レジデントコーピングが発動する。


 常駐対処。


 そこから逆算して因果を探る。


 答えは簡単だった。


 オムライスに毒が盛られていたのだ。


 もっともアインのレジデントコーピングの前には無意味な代物だが。


 アインは周囲に気を配る。


 不審げな目を向けた相手を見つける。


「まぁそうなるよな」


 思念で嘆息。


 鬼一に対してではなく自分自身へのツッコミだ。


 モリモリと毒入りオムライスを食べる。


「正気かコイツ……」


 他人の一人がそんな目で見ている。


 毒入りオムライスを食べて平然と腹をくちくしているアインに驚愕している様子だ。


 無論アインの知ったこっちゃないが。


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