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第36話:その者、禁忌の代行師02


 決闘の噂は学院中に広まった。


 当然アインの注目度も五割増しだ。


 決闘は貴族の娯楽でもある。


 他人事で流血を見られるのならそれはそれは愉快に気分にもなる。


「問題は……」


 アインは思念で鬼一と会話していた。


「攻撃を受けた場合だな」


 禁術。


 レジデントコーピング。


 攻撃を受けると自動的に発動する術だ。


 禁術であるため衆人環視には見せられない。


 その上で相手の魔術をどう制したものか?


 それが課題だ。


 アインが覚えている魔術は二つ。


 一つはエアエッジ。


 風の斬撃を発生させる魔術。


 一つはエアバリア。


 気圧を調整して斥力の防御壁を作る魔術。


 後者を使えば攻撃を防げはするが、魔術を長時間維持するためにはそれだけの魔力を必要とする。


 そしてアインは魔力を召喚できない。


 これはもう先天的なものだ。


 都合のつけようがない。


「理想は……」


 と鬼一。


「エアバリアで攻撃を防いで突進。小生で斬りつけて終了と言ったところか」


「他にねぇな」


 アインの思惑もそんなところだった。


「問題は嬢ちゃんの魔力補填じゃが」


「大丈夫だ。さすがに精霊石のキャパはハンパじゃない」


 元々魔力を保存し意志に連動して放出……結果として貴族で無くとも魔術を使えるようになるのが精霊石の特徴だ。


 であるから学ランの下のネックレスには十全な魔力が収めてあった。


 魔力に縁が無くとも、


「頼もしい」


 と思わせる程度にはリリィの魔力は純度が高く精霊石の質も高い。


 そのせいでクイン家の領地の税が二割増しになったというのだから涙無しでは語れなかった。


 暗鬱とした表情でコース料理を食べる。


 決闘を受けて(というより受けさせられて)数日後。


 アインはアンネとシャウトの誘いでリリィを伴いレストランで食事をしている。


「話題はアイン一色だな」


 シャウトが面白いとばかりに言う。


「私のためにも勝ってねん?」


 アンネが媚びるように言う。


「アイン様。ご無理はなさらないでくださいね?」


 リリィは心配げだ。


「それについては無用の心配だがな」


 思念で答えるアイン。


 鬼一が人の悪い笑い方をする。


「ところでアイン」


 これはシャウトだ。


「何だ?」


 どうせろくでもないことだろう。


 そう決めてかかるアインだった。


「君は唯一神教信者かい?」


「まぁな」


 正確には違う。


 が、修正の必要を認めない。


「ノース神国の貴族だ。信仰者で無くて何だよ?」


 教皇の嫌味な態度を想起させながらアインは答える。


 実際に唯一神教の聖地であるノース神国……その貴族は深い信仰心を必要とする。


 アインは例外だが。


「君が審問官って本当かい?」


「はぁ?」


 呆けた表情をするアインだった。


 審問官。


 唯一神教の神威布教を目的に設立された教会協会。


 そに所属する異端廃絶と異教殲滅をレゾンデートルとする教会の持つ懐刀の一つ。


 それが審問官である。


 唯一神教の教えを掲げ大陸において不信心者を処罰する狂信者の集団である。


「俺がそんな殊勝な人間に見えるか?」


 アインは皮肉った。


「いや、風の噂程度だよ」


 シャウトは軽く言う。


「最近はアインに対して学院も注目してるからね。そんな噂が立つのさ」


「まぁノース神国の貴族として信仰の手伝いはするが……」


 フォアグラをアグリ。


「それでもそれ以上ではないな」


 呼吸するように嘘を吐くのはアインの十八番だった。


 もっとも先の言は嘘ではないのだが。


 この世界の人間とアインとは神の定義が違う。


 そこが出発点。


 冷静に考えれば誰でも分かりそうなものだが、今のところアイン以外は蒙が啓けていない。


 特に責めるアインでも無いが。


「だいたい審問官が学院に通ってどうするんだよ?」


「アホじゃな」


「やっかましい」


 アインは思念で答えて椅子に立てかけていた鬼一を蹴る。


「暴力反対」


「余計なことは言わんで良い」


「聞こえておらんから大丈夫じゃ」


「俺への侮辱も止めろ」


「アホには違いあるまい?」


「黙秘権を行使する」


 アインも現状を憂いてはいるのだ。


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