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第25話:忍び寄る影04


 日常が戻ってくる。


 アインは早起きして剣の鍛錬。


 いつも通りだ。


 既にして剣の技術だけなら特筆すべき能力を獲得しているのだが、ここ魔術学院ではあまり評価されない項目でもある。


 無論そのことに拗ねるアインでも無いが。


 日が昇って寮部屋に戻ると案の定客が居た。


 アンネとシャウトだ。


 アインは玄関を指差すと、


「帰れ」


 茶を飲んでいる二人に言った。


 表情はいっそ爽やかな笑みだった。


 眼が笑ってないが。


「まぁまぁそう云わず」


「もっと素直になりたまえ」


 二人揃って、


「何を勘違いしてやがる?」


 とアインが疑念を覚えるほどの不遜な態度だったが、とりあえず出て行く気配も無い。


「リリィ。茶」


 しょうがないので見ないフリ。


「どうぞアイン様」


 リリィは丁寧にカップを置く。


 紅茶だ。


「今日の朝食は?」


「米を炊きました。よろしかったでしょうか?」


「ん。良きかな良きかな」


 アインは茶を振る舞ったリリィの頭を撫でる。


「はぅ」


 と紅潮するリリィ。


「では朝食をご用意いたします」


 半ば逃げるようにキッチンに去って行くリリィ。


 アインは仕方なくアンネとシャウトに向いた。


「お前らもしつこいな」


 心底からの言葉だ。


「でもでも印象づけないと何も始まらないし」


「その通りだとも」


 此処ではない異世界では単純接触効果と呼ばれる現象だ。


 当の二人は知り得ないだろうが。


「はぁ」


 いつも通り嘆息するアインだった。


 そこに、


「どうぞアイン様」


 とリリィが朝食を出す。


 米と冷奴と味噌汁。


 サウス王国の朝食だが、であるからこそアインの好物でもある。


 それからリリィは自分の朝食も用意し、


「いただきます」


 と二人揃って朝食を開始した。


「リリィはいい子だね」


 クスクスとアンネが笑うと、


「自慢の種だ」


 飄々とアインが返す。


「あう……」


 とリリィが、


「畏れ多い」


 と表情で語るが当人以外はリリィの有用性を理解していた。


「とりあえずアンネ」


「なに?」


「俺にはリリィがいる」


「知ってるよ」


「だから諦めろ」


「いーや」


 ポップに却下するアンネだった。


「お姉さんと良いことしましょ?」


 蠱惑的な瞳でアンネが語るが、


「知らん」


 アインはけんもほろろ。


 そもそもシャウトの魅了をはね除けたアインだ。


 今更、


「顔が良い」


 程度で転んだりはしない。


「シャウトもだ」


 こっちには嫌悪の視線を向ける。


「チャームの魔術は別の奴に使え」


「使っているとも」


 悪びれないシャウト。


「ならそいつらと関われよ」


「アインとの絆の方が大事だ」


「知ったことか」


 断じるアイン。


「そうそう」


 と全く堪えた様子の無いシャウトが言を紡ぐ。


「俺の研究室に顔を出しなさい」


「断る」


 一考の余地も無い。


 が、やはりシャウトは堪えなかった。


「教授が君に興味を示してね」


「知らん」


「入学してすぐ研究室から興味を持たれるというのは光栄なことだよ?」


「既に幾つか話は来ているしな」


「俺の研究室に来たまえ」


「一番有り得ない選択だ」


「ツンデレだね」


「デレてねぇぞ?」


 それっぱかりは譲れない。


「君もいつかは気づくさ」


「何に?」


「男色という貴族にのみ許された至高の文化に」


「…………」


 脱力の他に反応しようが無かった。


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