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第236話:幕裏からの狂奔の魔笛13


「――――」


 瞳から血の涙が零れる。


「――――」


 吠えたのは敵選手。


 剣の間合い。


「……虚無の使い手よ」


 ボソリと選手はアイスに呼びかけた。


「っ!」


 バレた。


 というより知られていた、が正しかろう。


「ケイオス派か」


 これは鬼一。


「然りだ」


 燗と瞳に呪詛が乗る。


「となると……」


 状況の最悪を考えるなら、


「まぁピンチかな?」


 あまり深刻になれないのは仕方ない。


「我が主の仇を討つ。宜しいか?」


「良いんですけどね」


 嘆息。


「――フレア――」


 爆発。


 次の瞬間には収縮した。


「アンチマテリアル」


「ご明察」


 時既に遅しだが。


「さてどうしたものか」


 アイスは思案する。


「戦え」


 ケイオス派はそう述べた。


「あまり生産性は有りませんね」


 そういう問題でもなかろうが。


「――アイスレイン――」


 上空に氷の矢。


 それが雨霰と降り注いでくる。


「この器用さは魔族ですねぇ」


 地面に降り注ぐ氷の雨をアイスは切り払いながら後退する。


 さらに魔術。


「――フレイムリバー――」


 炎の川が洪水となってアイスを襲う。


「基本そっちは通じませんよ」


 アイスはアンチマテリアルで切り払う。


 一個として完結した面制圧より、複数にて構成された面制圧の方が、鬼一の魔術とは相性が良い。


 ここで講義することでもないとしても。


「――アイスレイン――」


「まぁそう来ますよね」


 その辺の機転は魔族にもある。


 狂気の乗った血涙の瞳がアイスを睨みやる。


「仇って何でしょう?」


 思念でアイスは鬼一に聞いた。


「まぁ魔族を殺して回っている御仁じゃしの」


 恨みの一つも買う物だ。


「魔族がねぇ……」


 想像しようとして失敗した。


 空想にも限度はある。


「それにしても」


「何じゃ?」


「どう考えても、此度のケイオス派は策動的と存じますが?」


「じゃの」


「ブルーブルでしょうか?」


「わからぬよ」


 慎重論。


 あるいは思索の放棄か。


 あまり深刻にも成れそうにない。


 底抜け師弟の悪い癖だ。


「少なくともアインに恨みがあるのは間違いなさそうですが」


「その上でアイスと同一視出来るとなれば……」


「ブルーブルは有り得ませんね」


 大企業ではあるが、アインとアイスをイコールでは結べないだろう。


 その辺の機密事項は並みじゃない。


 これはアイスではなくレイヴの問題。


 あちらが許可を出さない限りでは、いくらブルーブルでもアインと禁術に辿り着くのは不可能だ。


 何よりアインに威力を差し向けるためにケイオス派を利用するならまだ分かるが、アイスに同じ事をする意味がないというのも先述の論理から想定出来る。


「じゃあ……?」


「ふむ」


 しばし勘案。


 氷の雨を弾きながら。


「アイスの背景を知り、禁術の存在を知る」


 レイヴとライト。


 あとほんの少し。


 その上で敵対する関係ともなれば、


「アイツか……」


「じゃろの……」


 師弟揃って同じ結論。


「駄目とは言わんが自重しないのはなぁ」


「魔族にもスケジュールはあるんじゃろ」


 キキィンと和刀が氷の雨を弾く。


「師匠?」


「あいあい?」


「目くらまし」


「へぇへ」


 次の瞬間、濃霧がコロシアムを包んだ。


「さて」


 アイスは完全にケイオス派を捉えている。


 封印刑の執行は容易かった。


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