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第233話:幕裏からの狂奔の魔笛10


「――撃ち貫け――」


 呪文。


 魔術師の、だ。


 呪文から一瞬。


 ゴーレムの集団が命令を執行する。


 撃ち貫く。


 即ち射撃を行なったのだ。


「わお」


 とはアイスの感嘆。


 四方八方を巨大なゴーレムに囲まれ、なおソレらが全方位射撃で襲ってくれば、脅威と言って妥当だ。


「なるほど」


 納得。


「これで勝ち上がってきたわけだ」


 簡にして要を得る。


 アイスの反応も早かった。


 周囲を囲まれた状況で、円形の間合いの一部へ偏る。


 それだけで中央にいるより対処すべき弾丸は減る。


 ゴーレムは自身の身を削って散弾のように岩の弾丸を放ったが、


「~~~~」


 クラシックを唄いながら悉くを叩き落とすアイス。


「……っ」


 魔術師の驚愕も必然だ。


 何処の世界にショットガンを剣一本で無効化する人間が居るというのか。


 この場合はアイスと鬼一の合作による現象ではあったが、まずもって散弾を完璧に把握して剣で切り捨てる技術が、


「人外の御業」


 と評せる非常識の最中。


「さすがは剣聖枢機卿」


 衆人環視が沸き立ちながらそんな声援を送るが、


「こっちの気も知らないで」


 がアイスの本心だった。


 心配はしていない。


 脅威も覚えていない。


 絶望とはあまりに隔たりがある。


 脅威とは言えないが、


「観衆とは何時も無責任だよなぁ」


 全体的にそんな印象。


「――撃ち貫け――」


 さらに魔術が行使される。


 散弾がアイスを襲うが、


「遅いな」


 神域の剣が打ち払う。


 ゴーレム自体は無尽蔵だが、対処の後れは見えざるを能わず。


「さてどうしましょう?」


 完全に余裕ぶっこいた発言だが、敵選手……魔術師の力量は見切っていた。


 これは別に魔術師の不徳では無い。


 アイスが非常識なだけだ。


 包囲殲滅。


 端的に言って魔術師の戦い方はソレだ。


 周囲の地面からゴーレムを作って包囲。


 そして全方向からのショットガンによる殲滅。


 こうも統率されたゴーレムマーチは中々に類を見ない。


 その一点だけでも非凡と評せる。


 単純に速度の面で、


「アイスが銃弾より速い」


 というイレギュラーさえなければ、魔術師は勝利を手にしていただろう。


 ここで語っても詮方なき……ではあるが。


「――ご奉公せよ――」


 今度は別のマジックトリガーが引かれる。


「っ?」


 困惑するアイス。


 効果は一瞬。


 威力は最大。


 自爆したのだ。


 ゴーレムが。


「おう……」


 光子が飛ぶ。


 熱。


 衝撃。


 轟音。


 それらが球状に広がろうとして、


「ふっ」


 アイスの和刀の前に虚しく収束した。


「神風か」


 鬼一の認識は正しい。


 ゴーレムによる自爆。


 道連れとする魔術。


 アイスの周囲を封じていたゴーレムの自爆だったが、


「力量は凄いが何だかな」


 アイスは気疲れしながら鬼一を振るってキャンセルする。


 爆発が空間で膨れあがろうとする途中で消え失せる。


 結果、


「努力賞」


 アイスの論評だ。


 ゆっくり歩みながら魔術師に近づく。


 ゴーレムが再生産されるが、その都度キャンセルされる。


 距離を詰められれば魔術師に出来ることはなかった。


「っ!」


 キッと睨まれる。


「自爆する気じゃあるまいな」


 そんな懸念もあったが杞憂に終わる。


 チョンと喉元に和刀の切っ先を向けると、


「…………」


 両手を挙げる魔術師だった。


「化け物……っ!」


「結構な褒め言葉だね」


 反論に苦慮するのは致し方ない。


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