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第229話:幕裏からの狂奔の魔笛06


 武闘会本戦。


 三回戦。


 勝ち残った十六人による八試合が組まれた。


 アイスもまた試合に臨む。


「コロシアムって言うのもある種の品性を疑う価値観だよなぁ」


 人間同士を争わせてソレを見物客にエンターテインメントにとして提供しようというのだ。


 ある意味で人間の獣性の証左だろう。


 アイスはあまり人のことを言えないが。


 対戦相手は武闘家だった。


 武闘会に尤も適した選手と言えるだろう。


 間合いが前傾しており、武威が溌剌と吠える。


 試合開始の間合いは遠かったが、その有利性をアイスは行使する気もなかった。


「一番厄介な敵じゃの」


 鬼一が呵々大笑する。


 事実だ。


 それは別に負ける可能性がある……という話ではなく、


「秘匿されるべき禁術の発露」


 その禁じ手に抵触する可能性があるとの意味合いで。


「なんとか乗り切るしか無いな」


 アイスもまた疲れ切った言葉で返した。


 腰には和刀と木刀を差している。


 握る気は無いらしい。


「…………」


 少し責めるような相手の視線。


 特別軽んじているわけではないが、


「武器を必要としない」


 は相手方にとって不本意だろう。


 試合開始の鐘が鳴る。


 アイスは散歩でもするように歩き出した。


 どちらにせよ勢圏はアイスを捉えている。


 であれば離れた距離を走って詰めようが歩いて詰めようが違いはあまりない。


「さてどう出る?」


 少し興味深げに相手方を見やるアイスに、


「――フィジカルブースト――」


 呪文の詠唱が襲った。


 マジックトリガー。


「はっは」


 愉快そうな鬼一。


「魔術師かよ」


 アイスもまた意表を突かれていた。


 名を以て体と為す。


 運動能力の底上げ。


 要するに肉体練度を向上させるバフの魔術だ。


「っ」


 加速。


 二歩でトップスピード。


 踏み出しの音が遅れて聞こえた。


 爆発音にも似たけたたましいソレ。


 間合いが潰れる。


 繰り出されたのは崩拳。


 アイスの肉体を完全に捉えていた。


「いやー」


 アイスは苦笑する。


「よく練られた拳ですね」


 崩拳を掌底で受け止めた。


 衝撃。


 減速。


 拮抗。


 順にスケジュールが埋められていく。


 更に勁が練られる。


 二段撃ち。


 そんな技術。


 アイスの手の平に押さえられていた崩拳が、当人の肉体の躍動によってゼロ距離で更に加速する。


 結果、防がれた崩拳がまた息を吹き返してアイスを襲った。


「なるほど」


 無理に受け止めること無く脱力し、


「ふむ」


 バックステップで力を受け止める。


 間合いが離れる、


「っ」


 かと思いきや踏みつぶされた。


 崩拳で伸びきった腕。


 その肩の付け根に逆の手が設置されると、


「ほう」


「ほほう」


 底抜け師弟の感嘆とともに、裏拳がアイスを襲う。


 崩拳のレールに沿って撃ち出される逆手の打ち込み。


 ある意味でフィジカルなレールガンと言えるだろう。


「すごいですね」


 過不足無く賞賛してのけ、しかし片手で受け止める。


 何も勁を練っているのは相手方だけでは無い。


 アイスもまた然りだ。


「疾!」


 が、敵選手の猛攻はまだ終わらない。


 受け止めたアイスの手……その手首を親指と人差し指の間で挟む。


 加速。


 アイスは宙を舞った。


 投げ技だ。


 形としては一本背負いに近いが、二本の指の間だけで敵を捕らえ投げ飛ばすとなると、その御業に対して、


「素晴らしいですね」


 とアイスの賞賛も出ようという物。


 投げ飛ばすか。


 地面に叩きつけるか。


 一本背負いならどちらかを選択できるが、相手は投げ飛ばす方を選んだ。


「凄まじいな」


 アイスの立ち回り戦慄を覚える武闘家さんだった。


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