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第224話:幕裏からの狂奔の魔笛01


 予選が終わり、武闘会は本戦に入る。


 死傷者続出であったが、顔を出した命の魔術師ことソフの処置で何事も無く敗者も勝者も元気。


 そも混戦であったから、


「相討ち」


 もあったらしい。


 その場合は勝者が居なかったので、色々と都合はあったようだ。


 とりあえず六十四人が揃ってトーナメント形式となる。


 アイスは六十四番目。


 一応優勝候補だ。


 当然賭博も行なわれており、幾つかの企業や商人ギルドが公に参加者を募っている。


「人の生き死にで金を稼ぐかぁ」


 とアイスの言い様だが、


「その殺し合いに参加しているのは?」


 と反論されれば返事に窮するのもまた事実。


 宮仕え根性は持ち合わせていないため、考えることもあるのだろう。


 天気は快晴。


 心地よい陽気……というには残暑が厳しいが。


 秋も近づいてはいるが、


「まだまだなぁ」


 とは熱気を嫌うアイスの言葉だった。


 白を基調とした宗教礼服。


 その腰にはベルト。


 差してあるのは和刀と木刀。


 流水を思わせる白い髪は神性という意味では十分だ。


 一目見て恋に落とす魔性とも言える。


 実際にプロポーズを受けたこともあるが、


「謹んでごめんなさい」


 以外の返答をしたことがない。


 そもアイスは美少女だがペルソナだ。


 本体の方はさすがにそんな性癖を持っていない。


 南無。


 ともあれ本戦の一回戦。


 相手は魔術師だった。


 今回の武闘会は突発的な事情で始まっている。


 戦士。


 傭兵。


 冒険者。


 魔術師。


 まぁ色々と混雑はしている。


 アインにしてみれば、


「厄介事兼暇潰し」


 と云った様子だが、ともあれ、


「兵士と魔術師とでは事情が違う」


 も必然。


 要するに初期の間合いが有利不利を決める。


 魔術はコンセントレーションを必要とする。


 剣術は間合いに入らなければ意味が無い。


 他にも要素はあるが、


「最初の間合いの是非で勝敗に影響が出る」


 は深刻な問題だった。


 そこで扱われたのがサイコロだ。


 一から六の目の出で試合開始の間合いを決める。


 近距離から遠距離まで六段階の距離の取り方があると言うことだ。


 近距離ならマジックトリガーを引くより剣で襲う方が早いであろうし遠距離ならば逆で然り。


 アイスにしてみれば、


「どうでもいい」


 と云った感想だ。


 そもそもの能力が桁違い。


 なお三足のわらじ。


 もはや間合いがどうこうというレベルには無かった。


 とはいえ相手側は魔術師であるため、剣聖枢機卿と相対するに距離は必要だ。


 サイコロが振られ六の目が出る。


「南無三」


 と鬼一。


 アイスはチョンチョンとその柄頭を叩いた。


 コロシアムの円形……その端と端で立ち合う。


 間合いは最長で、魔術師にとってのセオリー。


「御苦労様」


 とアインは呟いた。


 選手の目に映る爛々とした熱量に参った結果だ。


「ま、お手並み拝見じゃな」


「師匠は他人事で良いよね」


「かか!」


 大笑する鬼一。


「アイスが負ける」


 という予測を欠片も持っていない。


「小生の自慢の弟子じゃ」


 とのこと。


「恐悦至極」


 溜め息と同時に謙遜。


 スラリと和刀……鬼一法眼を抜く。


 アドレナリンの調整。


 固有時間の制御。


 筋肉を撓ませる。


 膂力の確保。


 やることは山積していたが、


「書類仕事とは違うから」


 と一息で全ての作業を終わらせる。


 最終的に結界をコロシアムに張り、相手の呼吸さえ読み取る。


 こういうところは鬼一の弟子たる所以だろう。


 一種の、


「怪物」


 などと評価も受けるが、


「さほどでもないんだがな」


 アイスはそう言う。


 鬼一もあまり否定はしなかった。


「ま、いいか」


 そんな感じで試合開始の合図が鳴る。


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