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第22話:忍び寄る影01


 とある日。


 学院が休みになった。


 週に一度の日曜日だ。


 この世界は『とある世界に準拠している』ため、一日は二十四時間で太陽が東から昇って西に沈む。


 唯一神教において唯一神が世界を六日で創り上げ、七日目を休日としたことに由来して、週に一日の日曜日が学院や仕事の休日となる。


 こと商人にこの常識は通用しないが。


 とまぁそんなわけで再度になるが休日である。


 アインはリリィの淹れた茶を飲んで朝食をとると、


「今日デートしようぜ」


 リリィをそんな風に誘った。


「ふえぁ!」


 一瞬で茹だるリリィ。


 こういうところがすれてなくて乙女全開なのだが、当人の計算には含まれない。


 それ故に愛らしい。


「えと……」


 とリリィ。


 赤面しながら問う。


「何故私とでしょう……?」


「可愛いから」


 サクッとアイン。


 まったく気後れしていない。


「畏れ多いです」


「交合の時もソレ言うの?」


「いえ……それは……」


 アインの絶妙な切り返しに困惑するリリィだった。


 くっくとアインが笑う。


「冗談だよ」


「お人が悪いです……」


「失敬。でもリリィが可愛いのは本音だし、畏れ多いって言うなら身分を盾として命じよう。俺とデートしろ」


「アイン様なら他にも魅力的な女性を選べるでしょう……」


「そうかね?」


「アイン様。失礼を承知で進言しますが、この際謙遜は皮肉と相成ります」


「格好良いの俺?」


「神懸かりの美貌です」


「黒色って重たくない?」


「アイン様であればそれが魅力に転じるほどです」


「ふぅん?」


「そうでもなければ男を選ぶ立場にあるアンネ様やシャウト様がアイン様に付き纏うわけもありません」


「言われてみりゃその通り」


 食後の紅茶を飲む。


「だが外見に対しての謙遜が嫌味になるのはリリィも同じだ」


「そうでしょうか?」


 アインは椅子に立て開けている和刀の柄頭をチョンチョンと叩く。


「師匠はどう思う?」


「まぁ嫌みになるのは否定せんよ。小生から見てもリリィは神懸かった美貌の持ち主じゃからのう」


「そゆこと」


 皮肉気にアインはリリィを見た。


 リリィはと云うと、


「あう……」


 頭からプシューと湯気を出して真っ赤になっている。


「あはは」


 と軽くアインが笑う。


「まっこと愛らしいの」


 鬼一がからかう。


「私でいいんですか……?」


「誘ったのはこっちの方だ」


「アンネ様やシャウト様は……」


「嫌だよ趣味悪い」


 特にシャウトに関しては鮫肌ものである。


 アインにそっちのケは無い。


 提案すれば一も二も無く頷くだろうが、


「こっちが御免だ」


 がアインの心情。


「アンネ様は?」


「まぁ垢抜けて可愛くはあるが……」


 それもまたアインの本音ではあるが、


「リリィほどじゃない」


 そんな結論。


「あう……」


 とリリィ。


「…………」


 しばし沈黙が部屋を支配した。


 沈思黙考。


 背中を押したのはアインの方。


「嫌なら断ってくれ。だからってお前を嫌ったり憎んだりはしないから」


「いえ、その、光栄……です」


 リリィは紅潮したままたどたどしく言う。


 可愛い可愛いとアインと鬼一に言われて精神的に参っている様子だった。


「だって可愛いし」


 アインが言って、


「然りじゃ」


 鬼一がからかう。


 そんなわけで、


「ではよろしくお願いします」


 そういうことになった。


 アインはいつも通りの学ラン姿。


 黒がアインの象徴だ。


 対するリリィは桃色のワンピースに桜色のジャケットを着た。


 全体的にアインとは別ベクトルで色が浮いているが、美貌が美貌なため服は引き立て役になる。


 女性に似合う服は無限にある。


 その証明と言えただろう。


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