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第209話:物騒な巷16


「――――」


 声にならない速度。


 女性……人斬りが踏み込んでくる。


 速度はかなりのモノで……女性が人斬りとしてどれだけの練度なのかを逆算してしまうほどだ。


 剣は刺突。


 アインは切り払う。


 そのまま剣を薙ぐ。


 が纏わり付くように人斬りの剣が動く。


「ほう!」


 と鬼一。


 剣の術理に聡い御仁だ。


 剣術の合気は準拠世界では珍しい。


 当然そっちの理解はアインにもあるが。


 合気と合気。


 手に持つ剣の主導権を争う。


 結果弾かれた。


 間合いが空く。


 踏みつぶしたのはアイン。


 低い姿勢からの斬撃が伸びる。


 袈裟切りで応対する人斬り。


 金属音。


 ソレも一瞬のこと。


 手応えなくアインの剣が人斬りを襲う。


 間合いを取る人斬り。


 付き添うアイン。


 剣が流れる。


 一閃。


 二閃。


 三閃。


「っ」


 全て弾かれる。


 神速の域だ。


 そこに対応する人斬りこそ、


「何者なるや?」


 と云った様子。


 逆袈裟の斬撃はアインのもの。


 片手剣で受け止められる。


 巻き技。


「――――」


 アインは剣を弾いて距離を取る。


「やりますね」


 人斬りの惜しみない賞賛。


「ま、これくらいはな」


 むしろ、


「お前がその域に達してるのが凄いんだが」


 そんな感想。


 ヒュンと鬼一を振る。


 夜風が切り裂かれる。


「何を目指します?」


「安寧なる平穏」


「正気ですか」


「この上なくな」


 実際にその通りではある。


 人斬りとやり合っているからこそ浮き彫りになる感想。


「では何故某に関わります?」


「政治的事情だ」


 他に無い。


 鬼一が呵々大笑する。


 実際に皮肉れる身分ではあった。


「さて、続きと行くか」


「ええ」


 間合いの踏み潰し。


 一瞬の一瞬。


 雷撃の瞬きにも似た速度の領域。


 刀と剣が弾きあう。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


 アインによる変幻自在の剣に人斬りは律儀に付き合った。


 その全てを弾く。


 次の瞬間、


「――――」


 アインが視界から消える。


 伏せただけだが、


「――っ?」


 困惑。


 駒のような回転。


 人斬りの足下を刀が薙ぐ。


 剣が届くか否かの瞬間。


 人斬りは離脱した。


 後方ではなく上方に。


 剣が薙がれる。


 受け止めるアインの刀。


 鍔迫り合い。


 力と力の相互作用。


 互角だった。


「本当に女か?」


 アインがそう思うのも致し方ない。


 刀が軌道を変える。


 人斬りの首元に吸い込まれる斬撃。


 剣が受け止めた。


「殺す気ですか!」


「そんなつもりはないが」


 事実だ。


 人斬りが地に足を付けたのは、アインが刀を振るうのと同時。


「――――」


 どちらもが剣を振るう。


 鍔迫り合い、殺し合う。


 その点に於いて二人は拮抗していた。


 鬼一にしても興味深いらしい。


「…………」


 沈黙して人斬りの剣を認識している。


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