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第207話:物騒な巷14


「とりあえず」


 夜中。


 いつものランニングの予定だ。


 運動着。


 その前に茶を飲む。


「あのう」


 リリィは不安げ。


 まぁ食人鬼が噂されればどうにもこうにも。


「俺が後れを取ると思うか?」


「反論を封じる言い方を為されます……」


「すまんすまん」


 カラカラと笑う。


「横柄に構えてろ」


 結局其処に尽きる。


「ソフ様も大丈夫でしょうか?」


「アイツが殺されるファクターがあるなら、学院は終わりだな」


 アインの皮肉は、


「?」


 リリィには通じなかった。


 アイン自身も理解を求めて言ったわけでもない。


「どうにかこうにかやってのけるさ」


「あぅ…………」


「警察も巡回してるし教会も手を広げている」


「それは……そうですけど」


「それだけで牽制になるだろ?」


「…………」


 クシャッと金髪を撫でる。


「すまんな」


「えと……?」


「心配を掛ける」


「アイン様……」


 蕩けるような雌の顔。


「可愛いな」


「えへへ」


 はにかまれる。


「お茶のお代わりは?」


「貰おう」


 ランニングの前に水分補給。


「鬼一様は有用ですか?」


「アイン次第じゃな」


 とは言うものの、


「基本的にトラブル体質じゃからの」


 それも事実だ。


 誰の因果か?


 アインには分からなかった。


 あるいは十年前に鬼一と出会わなければ……。


 無意味な仮定だ。


 罪深くすらある。


「どうぞ」


 茶のお代わりを差し出される。


「どうも」


 感謝し、飲む。


「この際アインに任せた方が上手く行く気はするがの」


「…………」


 爽やかな茶を飲んで渋い顔。


 なお反論できないことがアインの渋みを深くする。


 その通りではある。


 アインが犯人と邂逅すれば、たしかに終わるだろう。


 アンデッドにしろ辻斬りにしろ。


「レイヴの意見も聞いてみたいところだな」


 アインは思念で鬼一に話しかける。


「爆笑されるだけだと思うが」


「だぁなぁ」


 その光景がありありと浮かぶ。


 スタートゲイザー。


 その能力の限りに於いて、


「ノース神国の繁栄」


 を約束する破格の異能。


 そこに取り込まれたのが運の尽き。


「要するに使いっ走りだよな」


「じゃの」


 その辺は相互認識だ。


「で、結局俺が出ると」


「他におらんしの」


 南無。


 そんなわけで、


「先に風呂入って寝てて良いぞ?」


 運動靴を履きながらアインはリリィにそう言った。


「お待ちしております」


 リリィの生真面目さは相変わらずだ。


 一人ビッチ。


「さいか」


 別に損にもならないため、アインはそれだけ。


 鬼一はテーブルに立て掛けてある。


 アインが呼べば飛んでくるため、


「ランニングにおいては邪魔」


 ではある。


 無論、


「万が一」


 に備えて帯刀用のベルトはしているが。


「是非ご無事に」


「善処しよう」


 そんなわけでアインは冷えた夜気に身を晒す。


 温度は高い方だが、夜は少し秋模様。


「戸締まりはしっかりな」


「ええ」


 素直なリリィ。


 ある意味でアインの心の浄化だ。


 周りには捻くれた人間が多いため、純粋というか……リリィの真っ直ぐさは貴重でもある。


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