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第206話:物騒な巷13


「結局なんなんだろな」


 教会の椅子に座ってアインは神を皮肉る。


「主の与えたもうた試練では?」


「苦労するのは俺なんだが……」


「ですから」


「神が解決すれば話は早くね?」


「御自重ください猊下」


 ライトの思念はうわずっていた。


 仮にも枢機卿が、


「神を試す」


 という暴挙に出る。


 信仰心へのアンチテーゼだ。


 神の議論についてまではアインも言わないのだが。


 基本的に準拠世界であるため、


『神』


 と呼ばれる存在はいるが、


「有り難いか?」


 とのアイン。


 枢機卿にあるまじき。


 かといって無碍にも出来ない戦力だ。


 ノース神国の発言力の下地でもある。


「たまには礼拝しませんか?」


 何も知らないリリィが声をかけてきた。


「趣味じゃない」


 そう言う問題でも無かろうが。


「ソフ様は?」


「並ぶ!」


 こっちはこっちで何を考えているのか。


「運命が良くなるといいね!」


「験担ぎかよ」


 大凡人の持つ知性の所産ではある。


「アンデッドの方はどうだ?」


 思念会話。


「活発化はしておりませんが、ポツリポツリと」


 死体が余りに分かりやすい。


 頭部を抉られていたら十中八九アンデッドの仕業だ。


「とりあえずソフに対処を頼んでいるから、何かしら掴めたらこっちに連絡してくれ」


「通信料とか請求すべきじゃろか?」


 とは鬼一。


 念話。


 テレパシー。


 ほとんどやっていることはユビキタスネットワークだ。


 思考と思考を遠距離でも繋ぐ。


 通信料の請求は確かに妥当かもしれない。


 もっとも金銭を渡されても和刀である鬼一は有効活用も出来ないのだが。


 閑話休題。


「ソフ様はどうにか出来るので?」


「人を治すという点に於いては一家言持ちだ」


「それは聞いていますが……」


「アンデッドを治して一般人に出来るのはソフだけだ」


「無力化は?」


「教会に任せる」


「猊下は動いてくださらないので?」


「動きはするが」


 こめかみを掻く。


「こういうのは人海戦術の領域だからな」


 アインは特級の戦力。


 だが一人の人間でもある。


 教会と警察の目と手の方が聡明で長い。


 それもまた動かしがたい真実。


「辻斬りの方がむしろどうにかだが」


「一応照明弾を配備する予定の様ですが……」


「それな」


 哀れではある。


 命と給料を天秤に乗せる時点で、


「そこまでのことか?」


 がアインの感想。


「そのためにソフ様がいらっしゃいますし」


「それもどうだかね」


 ソフが便利なのは認めるが、


「それありき」


 で考えるのはアインには少し不愉快だ。


 言って詮無いため言わないが。


「言ってしまえばサーチアンドデストロイなんだろうが」


「猊下なら大丈夫です!」


「その間に何人死ぬかがなぁ」


 相手もこちらの都合に合わせる理由が無い。


「エントロピーの問題だな」


「えんとろぴーですか?」


「何でもにゃ」


 椅子の背もたれに体重を預ける。


「お師匠様はどうにか出来ないので?」


「可不可なら可じゃが……つまらんの」


「…………」


 何かしら思うところがあるらしい。


 思念で沈黙するライト。


「師匠はこれで平常運転だから」


 フォローのつもりだろうがしきれていない。


「イベントまでには何とかしたいのですけど……」


「…………」


 特に意義有ることでもない。


 アインはそもそも把握してすらいない。


「ま、微力を尽くしてくれ」


「嫌味ですか?」


「よく分かったな」


「…………」


 祈りを捧げる信者に祝福の言葉を掛けながらアインをジロリと睨むライト。


 無論アインの知ったこっちゃない。


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