表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
203/242

第203話:物騒な巷10


「アイン様……湯加減の方は?」


「大丈夫」


 フイと浸かる。


「ケイロン何を考えてるんだか」


 これはソフ。


 もう何か当たり前のようにアインと混浴している。


 アインとしても知らない仲ではないため、


「まぁいいか」


 程度には思っている。


 そこに、


「失礼します」


 とリリィまで。


「お兄ちゃんはどう思う?」


「相手方の意見か?」


「うん」


「一般人に戻りたくないんだろ」


「あんまり得もしないんだけど」


「お前に言われちゃ世話無いな」


「にゃ」


 苦笑するソフ。


 事実故に反論も難しい。


「何のお話でしょう?」


 リリィはついていけていない。


「食人鬼」


「注意報が公布されたアレですか」


「そ」


「アイン様とソフ様は探されているので?」


「どうなんだろうな」


 殊更に積極的とも言えない。


「教会の仕事では?」


「後警察な」


「それに辻斬りも発生していますし」


「そっちも問題か」





















「何処の魔窟だ」












 アインとソフの共有する言葉だった。


「最近は危ないので夜間のランニングは自重してくださると……」


「後れを取る……と?」


「そこまでは申しませんが……」


「お兄ちゃんに傷一つ付けられる人間がいるならそっちの方が驚きだけどね」


「そうなのですか?」


「…………」


 アインはソフのほっぺたを伸ばした。


「誇張表現だ」


 まさかレジデントコーピングについて話すのはうまくない。


 禁術の根幹は秘匿されるべき。


 そんな暗黙のルールがある。


「かか!」


 大笑する鬼一。


 思念だが、風呂の会話自体は聞き取っているらしい。


「さて何処から手をつけた物か」


 コレはアインの思念。


 リリィとは何気ない会話をしているがソレとは別に思念チャットで思いをめぐらせる。


 少し意識が遠のいているところに、


「にゃ」


 ソフがアインに抱きついた。


 特に気にするアインでもない。


「出会った奴らを片端から鏖殺!」


「お前に任せる」


 少なくともアインには無理だ。


「面倒くさいよ」


「なら提案するな」


 心中嘆息。


「アンデッドの方はどうしてもソフが必要なんだよな」


 肉体改造の点で言えばソフ以上はちょっと見ない。


「ケイオス派は?」


「一応警察と教会が何とかするだろ」


 社会問題ではあるが人類は上手く付き合っている。


 要するに魔族を相手取るように対処すれば良いだけ。


 魔術を放っては来るが、それはこちら側にも言えることだ。


 魔術の普及していない地域では脅威だが、生憎この場所は魔術学院。


 ケイオス派でなくとも魔術の練達は数えるほどにはいる。


 リリィも此処に加えていい。


 アインとソフは別口なので何とも言い難いが。


「辻斬りはお兄ちゃんの分野だね」


「それな」


 切り口の見事さはいっそ褒められるべきものだった。


 魔術の斬撃かもしれないが、どちらにせよ脅威としてはかなり上。


 仮にあの手法が剣による物なら、それこそアインですら警戒するだろう。


「師匠はどう思う?」


「見事な手際じゃな」


「俺と比較しては?」


「小生が見るに珍しく剣を交える意義が見出せそうじゃの」


「剣ね……」


 やはりアインとしても得がたい人材には相違ないようだ。


 鬼一の剣は、


「この世界には無い物」


 と捉えている。


 実際に仕事の関係で幾らか手練れと争ったこともあるが、修練と戦い方を弁えている人間はいたが、剣と身の理を解している人間をアインは一人も見たことが無い。


 鬼一の知識の有り様が異質ではあるが、


「それにしても」


 もまた真理。


 傭兵商売も見ては来たが、身ではなく肉で剣を操っていた。


 無論、単純な剣で言えばトップカテゴリーは人外だが、虎の巻はその上を行く。


「師匠が言うなら心逸るな」


 などとも。


「ま、会ってみねばわからんがの」


 それもまた事実。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ